季節の変わり目や、風邪をこじらせると思いのほか長引く咳。わざわざ病院に行くまでもないと思っていたら1ヶ月以上続いていた経験がある人も多いでしょう。たかが咳と思っていたら、意外な病気が隠されている可能性があります。特に症状が長引いている人は、正しく理解し、近くの医療機関を早期に受診することをおすすめします。

目次

<【図解】「咳が続いている時の検査、診断、治療の流れ・早わかり」はこちら>

咳(医療用語では咳嗽(がいそう))の原因と役割

咳は、ウィルス、ほこり、煙、食べ物などの異物から、肺、気管、気管支を守るために行われる防御反応です。咳には、気道にたまった痰 (たん) を出す役割も担っています。気道の粘膜は、線毛と呼ばれる細かい毛と、表面を覆う粘液があり、粘膜を守っています。

気道には、外から侵入してきた異物を排除するために複数のクリーニング機能があります。まずは、鼻においては、鼻毛、鼻腔内の粘液、線毛、くしゃみの反射機能があります。次に喉においては、Waldeyer (ワルダイエル) 咽頭輪と呼ばれる咽頭の入り口を取り囲むように位置して機能しているものがあります。そして、気管支における咳、最後に肺胞内における肺胞マクロファージという免疫細胞が身を守ってくれています。

考えられる病気

咳は、原因となる病気によって、症状が続く期間が異なります。また、痰を伴う咳かどうかによって原因が違ってきます。

項目 期間
咳の続く期間 ~3週間 3~8週間 8週間以上
病態 急性咳嗽 遷延性咳嗽 慢性咳嗽
原因 原因の多くは呼吸器感染症 原因の多くは非感染性疾患
考えられる病気
呼吸器 風邪
急性肺炎
気管支喘息
気道異物
細気管支炎
胸膜炎
咳喘息
後鼻漏症候群
副鼻腔気管支症候群
肺がん
肺結核
アトピー咳嗽
COPD
間質性肺炎
薬剤性咳嗽
心臓 うっ血性心不全
その他 副鼻腔炎
アレルギー性鼻炎
胃食道逆流症(GERD)
出典:「病気が見える」をもとにメディウィル編集部作成

 

項目 湿性咳嗽 乾性咳嗽 からせき
痰が出る 痰が出ない
考えられる病気    
急性 細菌性肺炎
気管支炎
副鼻腔炎
胸膜炎
気胸
過敏性肺炎
慢性 肺結核症
COPD
肺水腫
肺がん
気管支拡張症
咳喘息
間質性肺炎
胃食道逆流症
薬剤性咳嗽
出典:「病気が見える」をもとにメディウィル編集部作成

 

検査、診断、治療の流れ

咳1-写真
咳の多くは、風邪ですが、3週間以上続き、特にからせきが8週間以上続く場合には、特別な病気である可能性があるので、適切な検査、診断を受け、適切な治療をすることをおすすめします。

3週間以内の場合

咳が続いている期間が3週間の場合で、感冒様症状(くしゃみ発熱鼻づまりなど風邪の症状)、咳の症状が軽くなっている、周囲に同様の症状の人がいる、性状の変化する膿性痰(膿がからむ痰)のいずれかの症状が当てはまれば、感染性の咳の病気が疑われます。

その際に咳の強度がピークを過ぎている場合は、咳を鎮める薬などの対症療法によって経過観察されます。咳の強度がピークを過ぎていない場合は、肺炎結核などの感染症その他の肺の病気を鑑別するために胸部X線検査や血液検査などを行います。感染の原因の菌がわかれば、その菌に有効な抗生物質などで治療します。

3週間以上からせき(乾性咳嗽)を起こす場合

3週間以上からせきを起こす場合は、胸のX線画像CTで検査します。からせきが肺の空気の流れの異常と関連していないかどうか、肺機能検査などをおこなうことがあります。血液検査などで、アレルギー体質や感染症が関係していないかどうかを調べることもあります。

治療方法としては、感染症では、それぞれ原因となった病原体に効果が期待できる抗菌薬を使用します。また、咳喘息(せきぜんそく)を含めた喘息(ぜんそく)では吸入ステロイド薬を主とし、気管支拡張薬を追加することもあります。COPD (慢性閉塞性肺疾患)では禁煙が大切で、気管支拡張薬を主に治療します。アトピーせきアレルギー性鼻炎では抗アレルギー薬、吸入ステロイド薬、点鼻薬、胃食道逆流症では胃酸を抑える薬を使用します。高血圧の治療薬(降圧薬)が原因の場合は、降圧薬の種類を変更します。

3週以上、痰を伴う咳(湿性咳嗽)を起こす場合

3週間以上痰を伴う咳が続く方で、長期にわたって喫煙をされている方は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である可能性があります。タバコの煙によって、肺が傷つきやすい体質の人に出る病気で、病気が進行すると日頃から痰、咳、息切れといった症状が慢性的に出ます。COPDは、呼吸器学会の調査によると500万人以上の患者がいると推計されていますが、治療を受けている人は一部にとどまっています。

痰を伴う咳の場合は、その他に喘息、気管支拡張症、副鼻腔気管支症候群、慢性の鼻炎に伴う場合があります。ごく稀に結核、肺がんなど重度の病気が関わっていることもあるため、8週間以上続く場合は早期に呼吸器内科を受診することをおすすめします。

検査においては、痰の検査が重要になります。また、肺機能検査によってCOPDや喘息が関係していないかを調べます。その他、肺や副鼻腔に異常がないかをX線やCTで調べ、異常が見つかった場合、気管支内視鏡検査をする場合があります。

治療法としては、痰を楽に出す去痰薬が処方されます。COPDの治療では、禁煙が重要で、気管支拡張薬を主に治療し、吸入ステロイドが追加されることがあります。一方、喘息では、吸入ステロイド薬を主にし、気管支拡張薬を追加することがあります。

咳が続いている時の検査・診断・治療の流れを図にしました。

クリックまたはタップで拡大してご覧ください。

咳が続いているときの検査-診断-治療の流れ-図解

市販薬(OTC医薬品)を試してみる

咳が続いている期間が3週間以内で、安静にしていてもなかなか症状が改善されない場合、市販の咳止め薬を使ってみるのも一つの方法です。

咳止めにも様々な種類がありますので、ご自身の症状にあったものを選ぶと良いでしょう。

咳止め薬の選び方については「長引く咳に、咳止め薬がほしい!選び方のポイントとは」をご覧ください。また、薬を使っても症状が改善しない場合は、近くのかかりつけ医あるいは呼吸器専門医を受診するようにしてください。

まとめ

はじめは単なる風邪だろうと放っておきやすい咳。咳が続く期間が、3週間以上、特に8週間となった場合には、何らかの病気が隠されている場合があるので、近くの呼吸器内科を受診して適切な検査、診断を受けることをおすすめします。