子どもに急な下痢の症状が出ると、「何が原因?」「すぐに良くなる?」と不安になりますよね。もし、冬場に水のような下痢や重い脱水症状が現れたら、「ロタウイルス感染症」を疑ってみる必要があります。ロタウイルス感染症がどのような病気なのかについては、「冬に流行る胃腸炎・ロタウイルス感染症ってどんな病気?」で解説していますので、こちらをご覧になってください。ここでは、ロタウイルス感染症の予防と治療について見てみましょう。

目次

ロタウイルス感染症かどうかを確かめるには?

ロタウイルス感染症には、水のような下痢、嘔吐、発熱、腹痛などの症状がありますが、確定診断のためには医療機関で検査を受ける必要があります。ロタウイルスは便の中に大量に含まれるという特徴があるので、「イムノクロマト法」と呼ばれる迅速診断検査を行って便の中のウイルスを検出するのが一般的です。

検査結果が出るまでは15~20分程度を要します。検査の精度は100%ではありませんが、結果が早く出るため、すぐに治療を開始するのに適した検査といえます。

ロタウイルス感染症の予防法

ロタウイルス感染者の下痢便1グラムには1,000億から1兆個のロタウイルスが含まれています。その内、わずか10~100くらいのロタウイルスが口から入っただけで感染が起きます。

そのため、ロタウイルス感染症で最も重要なのは、便が衣類や食器、手などを介して口の中に入ってしまわないようにすることです。すべてのロタウイルスを除去することは困難ですが、手洗いが予防の基本となります。

また、感染を広げてしまわないためにオムツの処理も重要です。オムツを交換するときは、できるだけ使い捨てのゴム手袋を使い、使い終わったらポリ袋などに入れて処分します。ウイルスが付着していると思われる衣類を洗濯するときは家庭用塩素系漂白剤でつけおき消毒した後、他の衣類と分けて洗濯するようにします。手洗いの際は指輪や時計をはずし、30秒以上もみ洗いするようにします。

2種類のワクチン

ロタウイルスのワクチンに関して、日本では「単価ロタウイルスワクチン」「5価ロタウイルスワクチン」の2種類のワクチンの接種が認められています。

ロタウイルス感染症の原因になるウイルスには5つの血清型がありますが、単価ロタウイルスワクチンはロタウイルスの中で最も一般的な血清型をもとに作られています。一方、5価ロタウイルスワクチンは5つの血清型すべてに対応したもので、後から承認されました。それぞれ接種回数と接種期間が異なるので注意しましょう。

単価ロタウイルスワクチン

  • 任意接種
  • 2回接種
  • 接種期間:生後6~24週の間
  • ヒト由来の株を使用

5価ロタウイルスワクチン

  • 任意接種
  • 3回接種
  • 接種期間:生後6~32週の間
  • ウシ由来の株を使用

ロタウイルスワクチン接種は乳幼児のみが対象となります。また、いずれのワクチンの場合も1回目の接種は、副反応と考えられている腸重積のリスク予防目的で14週6日までが推奨されています。ワクチンを接種できる機会は限られているので、希望する場合は出産直後から計画を立てておくとよいでしょう。

ワクチン

基本的に下痢止め薬は使わない

ロタウイルス感染症に対する抗ウイルス剤等はありません。治療は、栄養素を補うこと、脱水症状を防ぐこと、が中心となります。自然治癒力に期待して回復するのを待つことになります。

下痢にはウイルスを体の外に排出するという働きがあるため、下痢止め薬によって早期に止めてしまうと、かえって回復を遅らせることもあるので注意してください。

まとめ

ロタウイルス感染症を防ぐには、家庭における便やオムツの処理、そして、手洗いが重要になります。とはいえ、ロタウイルス感染症はほぼすべての子どもが5歳までに経験する病気です。重度な脱水・脳炎・腎不全など重症化することがなければ、基本的にはそこまで神経質になる必要はありません。冬の下痢はロタウイルス感染症を疑い、症状が重いようなら適切に医療機関を受診するようにしましょう。