突然、「手術をしましょう」と言われたら、不安にならない人はいません。手術という言葉はよく耳にするものの、実際には未知の世界です。なにを準備すればいいのか、当日はどのような流れで手術が始まるのか心配です。麻酔や痛みに関する不安も大きいでしょう。今回は、知っておくと安心できる手術までの流れと麻酔について説明していきます。

目次

手術までにすることは?

手術が決まると、術前検査をします。手術の前に全身状態を調べ、手術や麻酔に耐えることができるかを判断するために行います。検査の内容は、手術をする部位や麻酔の種類によって変わりますが、一般的には次のような内容です。

  • 血液検査
  • 呼吸機能検査
  • 心電図
  • 尿検査
  • レントゲン

入院するときに必要な持ち物や準備しておくことについては、パンフレットやしおりに詳しく書いています。手術が決まり、医師の説明のあとに看護師から手渡されることが多いです。わからないことがあれば、遠慮しないで聞きましょう。

入院から手術までの流れは?

医者とカルテ

入院

入院は手術の前日か当日がほとんどですが、手術前に特殊な検査や点滴などが必要な場合には数日前に入院となります。医師からは、あらためて病気や手術内容について詳しく説明があります(入院前の外来で説明する場合もあります)。そのうえで、手術に必要な同意書にサインをします(これをインフォームドコンセントといいます)。

説明で分からないところがある場合や治療法に納得がいかない場合、遠慮せずに質問してください。十分に納得した上でサインをすることが大切です。

入院後、看護師からは次のようなことを聞かれます。

  • 今ある症状
  • 持病や今までにかかったことのある病気
  • 家族構成(病気の有無も含めて)
  • いま飲んでいる薬について
  • アレルギーの有無(薬剤、食物など)
  • 嗜好品について(アルコール、たばこなど)
  • 一日の排便・排尿の回数

手術までの食事や飲水、薬の服用については指示があるので、それを守りましょう。慣れない環境で眠れないこともあると思います。その場合は、看護師に相談してみてください。

手術室に入るまでに準備しておくこと

手術前の説明のなかで、手術室に入るまでに準備しておくことが話されます。安全にスムーズに麻酔、手術を進めるための重要な項目となっています。しっかり目を通し、準備しておきましょう。

指輪、ネックレス、ピアスなどアクセサリー(金属類)は外す

手術では、電気を使う特殊な器械を使用します。金属類が体に付いていると、感電ややけどの恐れがあるので危険です。指輪はなかなか外れないこともあるかと思いますが、最悪の場合は指輪を切断することがあります。外れない場合、事前に看護師に相談しましょう。

マニキュアは落とす、つけ爪は除去する

手術中、爪の色を観察したり、血液中の酸素濃度を測定するモニターを指先につけたりします。マニキュアやつけ爪があると正しく判断できません。

入れ歯は外す

特に全身麻酔の場合、呼吸のための管を口の中からいれます。誤って入れ歯が外れたりすると大変危険です。また、全身麻酔以外であっても、手術中に急に全身麻酔に切り替える必要が起こることもありますので、外しておく必要があります。

総入れ歯などで、外すと会話がしづらいなど問題があるときは、事前に看護師に相談しましょう。

化粧は落としましょう

手術中は顔色の観察をします。また、口や鼻から入れた管を固定するためのテープが張り付きにくくなり、危険です。必ず守りましょう。

メガネ、コンタクトレンズは外す

メガネには金属部分が含まれていることもあり、手術中は外す必要があります。ただし、メガネがなくては移動が困難などの問題がある場合は看護師に事前に相談しましょう。

コンタクトレンズは麻酔の操作中に外れてしまったり、紛失したりするおそれもありますので事前に必ず外しておきましょう。

かつら、ウィッグ、エクステンションは外す

かつらやウィッグには金属類が含まれているものがあります。アクセサリーと同じく、感電ややけどの危険性があるので外す必要があります。

その他

タトゥーや刺青などがある人は、看護師に相談しましょう。

手術当日

手術当日は手術開始時間に備えて、着々と準備が進んでいきます。服は病院で用意される手術衣に着替えます。下着についても指示があります。手術室に向かう前にもう一度、アクセサリーやコンタクトレンズ、入れ歯のはずし忘れがないか確認しましょう。

病院によって違いますが、病棟もしくは手術室で点滴をします。

時間になると病棟の看護師とともに、歩いてもしくは車いすやベッドで手術室にむかいます。

手術室

手術室看護師から、氏名、生年月日、手術部位(左右も含めて)などについて間違いがないか確認されます。

手術台に横になり、血圧計、心電図、血中酸素濃度モニターなどを体につけます。その後、問題がなければ麻酔がはじまります。緊張がピークになりますが、手術室の看護師がずっとそばにいます。不安なことや分からないことがあれば、遠慮しないで聞きましょう。

麻酔って怖くない?

手術の途中で麻酔が切れてしまったらどうしよう。麻酔中に何かあったらどうしよう。手術の内容よりも、麻酔が心配だと思う人は多いのではないでしょうか?もちろん麻酔には危険が伴いますが、実際に合併症(偶発症)の起こる可能性は極めて低く、安全性が高くなっています。手術中に予期せずに起きた病気での死亡率は、1万例あたり6.78例で、そのうち麻酔が原因での死亡率は0.10例、つまり10万例に1例程度の確率です(水戸医療センターより)。

麻酔ってどんな種類があるの?

薬のビン

全身麻酔

眠くなる薬を点滴から入れたり、麻酔のガスを吸入したりすることで意識がなくなります。麻酔中は、気管に管(チューブ)を入れて人工呼吸を行います。深く眠っているあいだに手術を終わらせる麻酔方法です。

脊髄くも膜下麻酔

背中から細い針を刺して行う、限られた範囲の痛みをとる麻酔方法です。通常、意識はありますが、眠くなる薬を点滴から使うこともあります。

硬膜外麻酔

背中に細いチューブを入れ、チューブはそのままにしておきます。そうすることで持続的に薬を入れることができ、それによって痛みをコントロールする麻酔です。手術中はもちろん手術後の痛みにも対応することができます。

全身麻酔とあわせて使うことが多いです。

局所麻酔

手術する部位に注射し、その部分だけ痛みを麻痺させる麻酔です。歯医者の麻酔と同じです。

手術のあとはかなり痛む?

手術後の痛みは「ゼロ」ではありません。しかし、麻酔方法や薬剤の進歩で、以前より痛みがコントロールできるようになっています。しかし、ひとたび痛みがピークに達すると、なかなかコントロールすることが難しくなりますので、痛みがでてきたら遠慮せずに医師や看護婦に伝えましょう。また、痛みが急に強くなった場合は、体の中で問題が起こっている可能性もありますので、ナースコールを押すなどしてすぐに伝えましょう。

まとめ

手術は、人生で何度も経験する人もいれば、まったく経験しない人もいます。事故などで、予期せずに手術となることもあり、その時は計り知れない不安を感じることでしょう。また、自分ではなく家族が手術になった場合も同じです。手術までの流れを知り、麻酔や痛みについて理解することで漠然とした不安は軽減されるのではないでしょうか。