がんだと言われたら、どのように治療を進めたらよいか戸惑ってしまいますよね。ここでは、がん治療の基本的な流れを、医師・後藤 宏顕先生による解説記事で見ておきましょう。腫瘍やがんの特徴については、「腫瘍とがんは違うもの?がんの種類を徹底解説」にまとめておりますので、こちらをご参照ください。

目次

セカンドオピニオンとは?

がん治療にもガイドラインというものが存在し、そこには、がんがどの程度進行しているかに応じた適切な治療方法が記されています。

現在、がん治療の進め方はガイドラインに沿って行われることが多く、医療機関ごとの差異は小さくなってきているといえるでしょう(ただしガイドラインはあくまで「推奨されている治療法」なので、個々の医療には参考にならないことも少なくありません)。また、全国どこにいても質の高いがん治療が受けられるように、がん診療連携拠点病院(401箇所)、特定領域がん診療連携拠点病院(1箇所)、地域がん診療病院 (20箇所)が指定されています(厚生労働省より:施設数は2014年4月1日時点の件数)。

一方、がんの診断や治療においては、医師によって考え方が異なることもあります。一人の医師の決定が必ずその人に合っているとは限りません。現在では、主治医だけでなく他の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」が患者の権利と考えられるようになっています。別の医師の意見を聞き、それを参考に担当医と治療法についてもう一度話し合うことが大切なのです。

セカンドオピニンを希望する場合、主治医の紹介状が必要となります。また、セカンドオピニオンを受けた結果、治療を受ける病院を変更するケースも出てくるでしょう。その場合は現在の主治医に伝える必要があり、改めて治療依頼の紹介状を作成してもらう必要があります。

近年、「セカンドオピニオン外来」を設置している病院も増えています。そのようなシステムを積極的に利用し、自分の病気に対する理解を深めるのに役立ててください。

がんの三大治療とは?

手術

治療方針が決定し、医師から十分な説明を受けた後、実際に治療が行われます。手術療法、放射線療法、化学療法はがんの三大療法と呼ばれています。それぞれの特徴を見ておきましょう。

手術療法

がんを切除する治療です。多くのがんでは第一選択となっていますが、進行の程度やがんの位置によっては切除を行えないこともあります。場合によっては、がんを放射線や化学療法で縮小させてから手術になることもあります。

外科手術の利点は、がんを完全に切除し、なおかつ転移が認められない場合に治癒を期待できる点です。また、がんがある程度進行しており、他臓器への転移が予想される場合には、がんだけでなく、その周囲にあるリンパ節を取り除くことで転移のリスクを軽減します。腹部や胸部を比較的大きく切開する従来の手術以外にも、腹腔鏡や胸腔鏡を用いて、小さな傷口で手術を行えるケースも増えています

放射線療法

がん細胞に放射線を当てることで、がんを消滅させたり、小さくしたりすることができます。基本的には、毎日少しずつ放射線を照射し、これを1~2か月の間継続します。手術療法では、手術で切除する臓器の一部が重要な機能を担っていた場合、その機能は手術によって失われてしまいます。しかし、放射線療法にはそのようなデメリットがありません。

一方で、放射線療法はがん細胞以外の正常組織にもダメージを与えます(より正確に狙い撃ちができる高性能な放射線治療を行っている施設もあります)。治療後は放射線が当たった部位に炎症反応が起き、吐き気や免疫力の低下といった副作用が生じます。

化学療法

抗がん剤や分子標的薬といった薬を用いてがんを治療する方法が化学療法です。薬剤は、血液を通じて全身に広がります。

化学療法の特徴は全身に作用する点です。目には見えない小さながん細胞が残っている場合でも、化学療法で対応することができます。

その反面、化学療法は特定の腫瘍に大きなダメージを与えるのは苦手です。大きな効果を得ようとすれば、がん細胞以外の部位の負担も大きくなってしまいます。吐き気や全身のだるさ、髪が抜けるといった副作用を伴いうことはよく知られています。

化学療法の効き目には個人差があり、どれくらいの強さにするかの加減が重要になります。現在は抗がん剤の専門医(がん薬物療法専門医)がおり、より適切な治療の組み立てとしっかりとした副作用管理を行っている施設もあります。
くま

まとめ

がん治療の目的は、がんを制御することで今後の人生の見通しをよくすることです。しかし、手術療法、放射線療法、化学療法は、いずれもがんを攻撃するだけでなく、患者自身の体に負担をかけます。また、治療の内容によっては治療を通じて体の機能が失われる場合もあります。

現在では、根治を目指すことを基本としつつ、いかにして治療の負担を緩和できるかが課題となっています。体の負担を抑えれば、それだけ回復に必要な期間も短くなり、QOL(生活の質)を維持しやすくなるからです。また、がんに伴う痛みや心の辛さについても、診断されたときから緩和することが重要な治療の一つと考えられています

重要になるのは、がんの早期発見・早期治療と、医師による適切な診断です。定期的に検診を受けること、そして、信頼できる医療機関を見つけておくことが大切になるでしょう。