目次

はじめに

胃カメラのイメージは「つらい」「苦しい」「おえっとする」といったものが多いでしょう。カメラ自体も細くなったり、鼻から検査ができるようになったりしていますが、確かに楽とはいいがたい検査です。検査やコツを知ると多少楽になったりもします。検査のコツ、胃カメラの意義や受診の方法、医師の選び方についてご紹介します。

何故胃カメラをするのか

大きな目的は「がんをみつけるため」です。できるだけ早期にみつけて取り切りたい。もちろん、その他の病気もみつけたり、治療したりしますが、最大の目的はがんをみつけることです。

みつけるがんは主に「食道がん」「胃がん」です。最近では口の中のがんが発見されることもあります。胃カメラと言いますが、口の中、食道、胃、十二指腸をみるための内視鏡です。

胃の賞味期限は1年

食べ物ではないので賞味期限というのはおかしいのですが、胃カメラは1年に1度は行うと良いと考えられています。1年に1度行っておけば、「早期胃癌を見逃していたとしても手術で取りきれるうちにみつける可能性があるから」と考えられています。

よく経験した事例

会社に勤めていた時は1年に1度必ず検査を受けていたが、定年退職して2年は受けていなかった。3年目くらいにふらついたりなんとなくみぞおちの辺りが重かったりするようになった。言われてみれば黒い便が出る。胃カメラを受けたら胃がん末期だった。

治療法が開発されてきていますので、治療法がないことはありませんが、やはりできるだけ早くみつかるほうが根治は得られやすいといえます。

どんな症状で受ければいいの?

悩む男性-写真
早期がんで痛みが出ることはまずありません。早期がんでは吐血したりすることも稀です。

無症状でも年に1回は受けましょう。年齢に決まりはありませんが、40歳以上を目安としたり、50歳以上を目安としたりすることが多いです。

胃カメラを受けるときの流れ

実際に胃カメラを受ける場合は以下のような流れになります。

  1. 医療機関を受診し、症状を伝え、胃カメラの予約を取る
  2. 胃カメラを受ける なんらかの病気の疑いがある部分は一部つまんで取られて(痛みは無いです)の検査(生検)が行われる
  3. 結果を聞きに行く

個人のクリニックで検査を受け、生検が行われなかった場合には、その場ですぐ結果を伝えてもらえることもあります。大きな病院で、外来の医師と検査をする医師が異なる場合には大体の場合において3の過程も経ることが多いでしょう。胃カメラの画像を見返すことがあったり、検査後に意識がボーっとしていると説明が伝わらなかったりといったことがその理由として挙げられます。

胃カメラを受診したその日に行うことは何か

「今日食事をしてこなかったのですぐ胃カメラやってください」と言われることがあります。行うか否かは症状などによって判断されます。大きな病院や専門に行っている医院ほどその日に行える確率は低いでしょう。予約がいっぱいになっていることが多い為で、特に症状はないけど不安でという場合にはまず行われません。

胃カメラがその日に行われるのは以下のような場合です。こういう時には朝の食事はしないで受診するとよいでしょう。

  • 血を吐いた
  • 黒い便が出ている
  • 貧血が明らかにある
  • 胃がんの可能性が非常に高い
  • 異物を誤飲した
  • 寄生虫のアニサキス感染が疑われる

などです。胃が痛い、といった場合でも緊急性が無いと判断されれば胃薬が処方されて予約を取って帰ることが多いでしょう。

いずれにしてもきちんと症状を伝え、医師の判断に従うのが賢明です。

どのように受ければ苦痛が少ないか

胃カメラの受診の流れ-図解

リラックスする

胃カメラをする医師はいろいろと話しかけてくることが多いはずです。それは「リラックス」させようとしています。「患者さんに話しかけながら検査をするとよい」と教わることもあります。

胃カメラの検査自体を知ることも良い方法です。一般的に行う検査ではそんなに大した検査ではないですし、胃カメラが体に入っている時間は状況によっても増減しますが概ね10分くらいです。

のどの麻酔をしっかり頑張る

表面麻酔の液体をのどの奥の方にためます。麻酔の液体は苦いですし、ためているのはそれなりに大変です。

この話は研究では否定された様ですが、消化器内視鏡を行う医師の友人たちの話では「そんなことはない、正しくしっかりやった方が苦しくない」という意見が多かったです。自分で受けたときものどの奥にためる感じで麻酔を頑張りました。

姿勢

「打ち首スタイル」とか「類人猿スタイル」と呼ばれる姿勢になるとのどの通りが良いと言われています。英語ではSniffing positionと言われています。

唾液

むせるので決して飲まないようにしましょう。イメージとしてはよだれを垂らしている感じにすると良いです。

げっぷ

指示に従って、できるだけこらえましょう。胃カメラでは胃を膨らませるために空気を送りこみます。げっぷが出ると再度空気を送り込むのでその間辛さが出てしまいます。

医師が勧める胃カメラとは?

何も症状が無く、初めて検査を受ける時

毎年受けて頂きたいと思っています。このため、特に初回は苦痛の少ない方法で行うのがよいでしょう。

最近は鼻からの胃カメラの画質もとてもよくなってきています。

ただし、口からの検査で大丈夫な方は通常の胃カメラの方がそれでもよりよくみることができるので、個人的にはこちらをお勧めしてはいます。

精密検査を受けるとき

専門とする上手な医師に診てもらいましょう。この時は口からの検査が望ましいです。

名医とそうではない医師との違い

「胃カメラは奥が深い」消化器内視鏡を専門とする医師の間でよく言われます。これは診断が実は難しいということを言っています。

苦痛が少ないようにと鼻からの胃カメラの性能が上がっていく一方で、より高精細な胃カメラ、特定の波長の光を出すことによって病気をみつけやすくしている胃カメラが開発されています。高性能な胃カメラほど太いカメラになっています。

どうしても不安が強い方に

完全に眠った状態で検査を受けられる施設もあるようです。鎮静する薬によるリスク(呼吸抑制など)もあるので必ずしも推奨するわけではありませんが、どうしても不安が強い方はそうした施設を選ぶのもよいでしょう。病院などでは軽い鎮静をした状態で検査を受けさせてくれるところも多いので、医師や看護師に伝えてみてください。

胃カメラを行う医師の本音としても、げーげーされたりするくらいならしっかりと寝てしまってくれた方が、患者さんにとっても楽だし、検査する方としても楽、というところがあります。実際胃カメラを口に持って行っただけでのけぞったり、体を動かしたり、カメラを引き抜こうとされたりすることがあります。こうなると病気をみつけるどころではなく、けがをするなど大きな事故につながり非常に危険です。

どこで受けるのが良いのか

病院-写真
胃カメラは比較的多くの施設で行うことができます。大病院では少し慣れてきた研修医でも胃カメラを行ったりします。消化器内視鏡を専門としていない先生でも胃カメラを行っている施設もあります。

まず、クリニックで受けるのか大病院で受けるのかについてですが、

クリニックの良いところ

  • 担当の医師がよく分かる
  • 検査を受けるまでの時間が比較的短い

 

クリニックの悪いところ

  • 検査する医師は大体固定されている、画像を何人もの医師で見直すところは少ない
  • 入院は難しい

 

大病院の良いところ

  • 何人もの医師で見直しているところが多い
  • 有能な医師がみることもある

 

大病院の悪いところ

  • 検査を受けるまでに時間がかかる
  • 研修医が出てくることもある(指導医が見ていることが多いですが)

 

良い医師の探し方

胃カメラは苦しくないように挿入することも重要ですが、何よりも医師が重視するのは「病気を発見すること」です。

最も信頼できるのは医師同士の口コミであると思います。患者さんの口コミ情報は「苦しくない検査」を受けるにはとても良い情報の一つだと思いますが、診断技術となるとまた異なります。

ただ、なかなか医師の口コミを得ることは難しいと思いますので、

  • かかりつけの医師に信頼できる医師を紹介してもらう
  • 消化器内視鏡専門医 特に胃カメラを専門に行っている医師
  • 治療内視鏡(内視鏡で行う腫瘍の切除手術など)も行っている医師

といった情報が良いかもしれません。

ただし、治療内視鏡については限られていますので調べて受診してもお願いできるとは限りません。というのも検査は時間が決まっていますし、治療内視鏡をできる医師は治療内視鏡を行うために特に症状のない方の検査は担当していない可能性があります。

更に、早期胃癌研究会という勉強会が定期的に行われており、この勉強会に参加している医師は特に熱心に診断技術を磨いている医師であるともいえます。

さいごに

食道癌、胃がんは未だ日本人にとって多くの方がかかり、命を落とす疾患です。現在の医学では症状のない内に見つけることが根治の為には最も重要と考えています。胃カメラを受けたことのない方も是非一度検討してみてください。