羊水が通常より少ない状態を羊水過少といいます。
羊水過少では、羊水が少ない状態が長期間続くことで、肺の低形成や四肢の変形など、赤ちゃんの状態に問題が出てくる可能性があります。ここでは、羊水過少の説明と、原因、妊娠中や出産時のリスクなどについてお話ししたいと思います。
羊水過少とは
羊水過少は、妊娠週数に関係なく、羊水量が100mlを下回る場合をいいます。
羊水量を直接測ることはできないため、経腹超音波(お腹からのエコー)で計測した推定量になります。エコーの所見でいうと、最大羊水深度(MVP)が2cm以下、羊水インデックス(AFI)が5cm以下の状態をいいます。
妊娠週数に比べてお腹が小さく、経腹超音波での該当所見があった場合、羊水過少と呼びます。
羊水過少の原因
羊水過少の原因として、下記の状態が挙げられます。
- 前期破水
- 腎無形成、腎形成不全、多嚢胞腎、尿路閉鎖症などの腎臓・泌尿器疾患
- 双胎間輸血症候群の供血児(一卵性の双子で、一方に血液が上手く行き渡っていない状態)
- 胎児発育不全(FGR)、胎児機能不全
- 過期妊娠
- 妊娠高血圧症候群
- その他(原因不明)
羊水過少の原因の約半数は、前期破水によるものです。
陣痛が始まる前に破水してしまうことで、羊水が流れ出てしまうため量が少なくなってしまいます。
妊娠中のリスク
赤ちゃんはお腹の中で、羊水を飲み込んで尿として排出するため、妊娠中期以降は、羊水の成分のほとんどが赤ちゃんの尿(胎児尿)です。
羊水量が過度に減った状態が続くことにより、臍帯や子宮壁の圧迫、羊膜との密着などが起こり、下記のようなリスクが出てきます。
血行障害による胎児機能不全
臍帯の圧迫により、赤ちゃんへの酸素や栄養の供給が妨げられる場合があります。妊娠中、特に陣痛が認められた時(分娩中)に、症状が顕著になる場合があります。
肺低形成
長期間の羊水過少が続くと、肺の発達が阻害され肺の形成が不十分となります。
肺の低形成が深刻な場合、出生後に赤ちゃんは呼吸ができず、亡くなるケースもあります。妊娠26週以降の破水による羊水過少では、肺低形成は発症しないとされています(日産婦誌59巻9号 1)羊水補充療法より)。
四肢の変形、関節の拘縮
羊水が十分にあれば子宮壁からの圧力を受けることはありませんが、羊水過少の場合、圧力を受ける状態が持続的になるため、赤ちゃんの体に変形を生じることがあります。また、赤ちゃんが十分動けるだけの空間がなく、関節の拘縮がみられる場合もあります。
羊膜癒着(羊膜索症候群)
妊娠の早い時期から羊水過少が発生すると、羊膜と赤ちゃんが密着する期間が長くなり、癒着を起こしてしまいます。癒着によって赤ちゃんに外表奇形が起きる場合があります。
羊水過少に対する治療法の選択肢として、人工羊水を注入する羊水補充療法がありますが、羊水過少の原因により、適応の有無、有効性などが異なります。
まとめ
羊水過少と判定された場合(前期破水によるものを除く)も、赤ちゃんになんらかの先天異常を伴うことがあるため、その原因を検索し、先天異常が診断された場合には、分娩方法を赤ちゃんに負担が少ないものにしたり、出生後の治療方針を相談したりなどして、赤ちゃんにとってよりよい治療が受けられるように準備をしていく必要があります。
また、羊水過少の原因の約半数を占める前期破水は、突然なんの前触れもなく起こるため、尿漏れと勘違いされやすく、特に妊娠週数が浅い段階では破水と結びつきにくいかと思います。
実際の症例として、妊娠4-5か月での破水もあり得ますので、前期破水とそれに伴う羊水過少についても知っておきましょう。