それまでとても機嫌良く遊んでいたにも関わらず、食事をきっかけにお腹を痛がるお子さん。そんな突然の腹痛を訴えるお子さんに困惑されるママは多いのではないでしょうか。お子さんが腹痛を来す原因には大人と共通するものもある一方、小児科特有の疾患が存在することも知られています。本記事では、食事に関連した腹痛に焦点を当て、その原因及び対処方法について説明をしたいと思います。

目次

子供によく見られる腹痛の特徴

子供は心身ともに発展途上にあるため、大人と異なることが引き金となって腹痛を来すことがとても頻繁に認められます。また、特に小さいお子さんでは自分の症状を言葉でうまく表現することができず、本当はお腹が痛くないにも関わらず、「お腹が痛い」と言うことで自分の不調を訴えることも多々経験されます。

実際、腹痛を訴える約20%のお子さんは、実はお腹の病気ではなく喉風邪や中耳炎であることも知られています(Pediatrics, Scholer SJ, et al. Pediatrics 1996; 98 (4): 680-685)。そのため、重篤な病気なのか、そもそも本当に腹痛なのかを周囲の大人が適切に判断する必要があります。

食事に関連した腹痛の原因

ソファー上で横になる少年-写真

小児の腹痛には無数の原因が挙げられますが、特に食事に関連して来しやすいものについて、頻度の高いものを重点的に述べますので、お子さんの症状が当てはまるかどうかチェックしてみて下さい。

1.便秘

食事に関連したものの中で圧倒的に頻度の高い小児の腹痛は、実は便秘です。とてもお腹を痛がることから夜間救急外来を受診されるお子さんも多いのですが、いざ浣腸をして便が出ると、それまでの痛がり方が嘘のようにケロッとして何事もなかったかのようになります。

また親御さんから見て、一日一回しっかり排便があると思っている場合も、十分量の排便がなく、水分が足りずに便が固くなって栓をするためお子さんが腹痛を訴えることもよく経験されます。

2.機能性腹痛

食事などをきっかけとして慢性的に腹痛を訴え、生活に支障を来す疾患のことを指します(メルクマニュアル医学百科家庭版/反復性腹痛)。

心理的なストレスが原因となっており、学童期のお子さんでよく観察されます。食事以外にも、学校に行きがけに腹痛を訴えることもあります。

3.乳糖不耐症

先天的にミルクに含まれる成分に対して過敏反応を起こし、ミルク摂取の度に下痢や腹痛を来す「先天性乳糖不耐症」という病気があります(小児慢性特定疾病情報センター/乳糖不耐症)。先天性乳糖不耐症はまれな疾患ですが、急性胃腸炎(いわゆるお腹の風邪)を発症した後、同様に乳成分を摂取する度に下痢や腹痛を来すことも知られています(=二次性乳糖不耐症)。

二次性乳糖不耐症については臨床現場で非常によく経験されることであり、それまでの胃腸炎罹患歴や食事との関連を含めた問診情報が診断に重要になります。

4.急性胃腸炎

胃腸炎は突然の嘔吐や下痢で発症し、食事などをきっかけに症状が出現することも多いです。特に夏場や冬などに発症例が多く、幼稚園などでの流行状況が診断上有効な情報になります。

腹痛を訴えるときの対処方法

上に述べたいずれが原因であったにせよ、まずはガスを出したり排便が行われたりすることで症状の改善が期待できます。

そのため、食後にお子さんがお腹を痛がる場合には、まず第一に排便/排ガスを促すこと、またもし手持ちに浣腸をお持ちであれば、浣腸を使用して腹痛の経過を見ることが非常に有効な手段となります。

こんな場合にはすぐに病院受診を!!

しかし、腹痛の中には緊急性を伴う病気のサインであることもあるため、以下に挙げた症状を認める場合には病院への受診を考慮して下さい(UpToDate/Patient education)。

  • 血便を認める
  • 38℃以上の発熱を認める
  • 1時間以上経過する重度の腹痛
  • 活気が乏しい
  • おしっこをする時に伴う腹痛
  • 顔色が悪い
  • 泣き止まない

まとめ

食事に伴う小児の腹痛にはいくつかの原因が知られています。その多くは緊急性を要するものではなく、家庭でのケアで充分に対応できるものです。しかし、中には緊急に治療介入を要する病気の前兆であることもあるため、お子さんの症状に充分注意して経過を見ることが大切です。