腸は外部からの刺激に反応しやすく、特に子供は消化器官が弱いので嘔吐のような消化器症状を起こしやすいと言われています。生理的なものから緊急処置が必要なものまで、様々な時に現れる症状の一つである嘔吐。今回は嘔吐について詳しく解説します。

目次

嘔吐を起こすメカニズムは?

嘔吐は、胃の中のものが食道や口を通って身体の外に排出される運動のことを指しています。身体に悪影響を与える異物を身体の外へ出したり、器官や臓器のつまりを解消するための防御反応です。脳には、刺激を受けると嘔吐を起こす場所があり、嘔吐中枢と呼ばれています。何らかの原因が嘔吐中枢を刺激して脳から身体へ指令がいくことで嘔吐するのです。

嘔吐を起こす原因

嘔吐してしまう原因となる刺激は、以下の4つに分けることができます。

  • 中枢性嘔吐(嫌いなにおいなどののど、鼻からの刺激)
  • 反射性嘔吐(めまい乗り物酔いなど三半規管からの刺激)
  • 精神性嘔吐(視覚による心理的、精神的な刺激)
  • 消化器が炎症を起こしている、ウイルスや細菌などによって病気になっていることによる刺激

このような刺激を受け、嘔吐中枢は脳から身体へ指令を出すのです。

胃腸が関係している嘔吐

胃腸による嘔吐の中ではウイルス性胃腸炎が大半で、主にノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどが原因となって発症します。これらのウイルスが腸管壁に感染して炎症を起こし、胃腸のむくみやぜん動の働きを弱めます。ウイルスが排除しようとする身体の防御反応が働くことで、嘔吐するのです。

食物アレルギーが関係している嘔吐

特定の食品を食べることによってアレルギーを発症し、嘔吐することがあります。身体を守るためにアレルゲンとなる物質を排除しようとする働きによって嘔吐するのです。これは乳幼児によく見られ、大抵は食後5分から2時間以内に症状が現れます。特定の食品を食べるたびに嘔吐を繰り返すようであれば、食物アレルギーの可能性があるので、医師に相談しましょう。

熱中症が関係している嘔吐

熱中症は、Ⅰ度(熱失神、熱けいれん)、Ⅱ度(熱疲労)、Ⅲ度(熱射病)に分類され、Ⅱ度以上の症状となったときに嘔吐が起こることがあります。体温が高くなると身体は汗をたくさんかいて体温を下げようとし、熱を放出しようとして皮膚の血管を拡げ皮膚の血液量を増やします。すると消化器などの内臓の血液量は減り、心臓や脳の血液量を保とうと血管が収縮するので、血流が低下し嘔吐を起こすのです。

特に子供は、成人と比べて身体の水分量が少なく、発汗機能が不十分なので、大人より熱中症になりやすいために注意が必要です。熱中症のために嘔吐をしたときは病院に行きましょう。

頭を打った後に起こる嘔吐

子供は大人よりもどしやすいので、頭を少し打っただけでも嘔吐することがあります。脳が圧迫されることで嘔吐中枢への刺激が加わり嘔吐が引き起こされるからです。嘔吐した後は元気になることもあります。脳への刺激による嘔吐は、吐き気・悪心が少ないことが特徴です。嘔吐の症状は頭を打ってすぐに現れるのではなく、1~2時間過ぎてから現れることもあります。

頭を打ったときは、その後24時間は気を付けてみていましょう。嘔吐はありふれた症状ですが、脳挫傷、頭蓋内血腫による嘔吐は見逃してはいけません。以下のような症状が見られたらすぐに病院に行きましょう。

  • 意識がはっきりしていない
  • 泣かない、ぐったりとしている
  • けいれん
  • 嘔吐を繰り返す
  • ミルクをあまり飲まない、食欲がない
  • 苦しそうにしている、不機嫌
  • 大きな傷がある、出血している
  • 鼻や耳から出血、あるいは液体が出ている
  • 顔色が明らかに悪い

乗り物酔いによる嘔吐

車のおもちゃ-写真

平衡機能が未熟な0歳~3歳頃までは乗り物に酔うことは殆どなく、平衡感覚が発達し始める5歳以降に乗り物に酔い始めます。乗り物の不規則な揺れが内耳の三半規管や前庭を刺激することで平衡感覚や自律神経系が乱れ、吐き気、嘔吐、冷や汗などを引き起こします。ストレスなどによる精神的なものや視覚や嗅覚への刺激が嘔吐中枢をさらに刺激して、横隔膜と腹筋が収縮し腹圧が高くなって嘔吐を起こします。

ストレスによる嘔吐

外部からのストレスや不安などによる身体の防御反応として嘔吐が起こることもあります。繊細な性格、人間関係のトラブルや引っ越しなどの環境の変化など様々な要因が嘔吐中枢を刺激して嘔吐を起こすのです。子供は嘔吐中枢が未熟なために、少しのストレスによって吐き気や嘔吐を起こします。

吐き気を訴えてきた時の対処法

1.吐かせる

前かがみの体勢で吐きたいだけ吐かせてあげます。
このとき優しく背中をさすってあげることで、お子さんに安心感を与えましょう。

2.口をゆすぐ

嘔吐が終わり、落ち着いた頃にうがいをします。できればブクブクうがいをさせます。
乳幼児など、うがいが困難な場合にはお母さんが口の中を見て吐しゃ物をぬぐってあげたり、口の周りを拭いてさっぱりさせてあげてください。

3.着替える

洋服ににおいがついていると吐き気を誘発するので、汚れている場合は着替えましょう。

4.安静にする

寝かせて安静にします。このときの姿勢は再度吐いてしまった場合の誤嚥をふせぐため、横向きの姿勢、もしくは背中から後頭部にかけてクッションなどをはさむことで上半身を少し起こした状態にしましょう。

小児科を受診するときの目安

頭を打った際の受診の目安は先ほど書きましたが、それ以外は以下のようなことを目安に受診すると良いでしょう。

  • 嘔吐が続く
  • 食べ物を食べていないのに嘔吐する
  • 嘔吐と下痢が同時に起こり、尿の回数が減ってきたり目の周りがくぼんできたりしている
  • 吐物が黄色、赤色、焦げ茶色をしている
  • 激しい頭痛がある
  • 激しい腹痛がある

救急車を呼ぶ目安

  • 呼びかけに反応しない
  • ぐったりして動かない
  • けいれんを起こしている
  • 顔が青ざめている
  • 冷や汗が出ている

など

まとめ

子供は消化器官弱いので大人よりも嘔吐しやすく、その原因は胃腸、食物アレルギー、熱中症、頭部打撲、乗り物酔い、ストレス等多岐に渡ります。吐きたいだけ吐いたら口をゆすぎ、安静にさせましょう。お子さんを安心させるために、背中をさするなどして様子を注意深く見守るようにしましょう。