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感染性胃腸炎、その原因と特徴とは!?

子供が成長する過程で、一度は経験するであろう胃腸風邪。正式には「感染性胃腸炎」と呼ばれますが、嘔吐する子供を見るのは辛く、家族中に感染が流行することも稀ではなく、二度と経験をしたくないと思う親御さんも多いのではないでしょうか。今回はそんな胃腸風邪に焦点を当て、症状や原因、家庭でできるケアなどについて2回に渡って概説します。

感染性胃腸炎の症状は時間経過と共に変わる!

感染性胃腸炎の原因に後述の通りさまざまなものがありますが、病原体を口にすることで感染は成立し(経口感染)、一定の潜伏期間を経て「嘔吐」→「下痢」の順に症状が数時間の経過で変化します。

1.嘔吐の時期(発症後6~12時間以内)

感染性胃腸炎は、それまで元気にしていたにお子さんが何の前触れもなく突然嘔吐をすることから気づかれることが多いです。発症初期の嘔吐により胃の中のものをすべて出すと、嘔気はいったん治まったように見え水分を欲するようになります。しかし、嘔吐開始後2~3時間は胃腸の動きは悪く、経口摂取を試みてもすぐに嘔吐してしまいます。

この時期には、いかに上手に水分を与えるか、が脱水を避けるための一つの重要なポイントになり、吐き気止めも使うことができる場合があります

2.下痢の時期(発症後半日から数日)

症状が出現してから6~12時間後には胃腸が徐々に動き出し、経口摂取をしても嘔吐をしなくなります。その反面、下痢を認めるようになりますが、これは下痢便として体外に病原体を排泄している時期と理解することができます。数日から1週間までの間に下痢も治まり完治へと向かいます。

このころになると嘔気も治まるため水分を取ることの苦労は少なくなり、吐き気止めの比重も低くなります。この時期になると、どういった食事を与えるか、が看病の上でのポイントになります。

 

以上が一般的な感染性胃腸炎の症状になります。次に、感染性胃腸炎を引き起こす原因について見ていこうと思います。

小児における感染性胃腸炎の病原体

ウイルスや細菌などが感染性胃腸炎を引き起こしますが、小児特有の特徴もあります。下のグラフの通り、ノロウイルスは年齢層に関わらず頻度が高いのですが、特に5歳未満のお子さんでは、①ロタウイルスの頻度が高い、②細菌の頻度が低い、ことも知られています。
小児における感染性胃腸炎の病原体-図解

次に、病原体に応じた特徴を述べてみようと思います。

ロタウイルス

強力な感染力

乳幼児を中心にロタウイルスは非常にありふれた病原体であり、毎年1月から流行が開始し3月をピークに発症例が報告されます。そのため「乳幼児冬季下痢症」の別名もあります。

感染力は非常に強く、手洗い後にも関わらずウイルスが少しでも爪の間等に残存しているだけでも感染は拡大します。幼稚園や保育園等集団の中で感染が始まると、その感染制御は困難です。こうした特徴から、ほぼすべてのお子さんが5歳になるまでに一度はロタウイルスに罹患します。

重症化しやすく、重篤な合併症も

白色の下痢便が特徴的であり、下痢の罹患期間も1週間から2週間までと長く、重症の脱水症を認めます。また脱水に伴う腎不全、腸重積(下血)や脳炎・脳症(けいれん、意識障害)などの合併症を引き起こすことも知られています。特に乳児において重症化しやすい傾向にあり、日本において年間約6万人の乳幼児が入院治療を受けているとも報告されています。

予防接種の重要性

小児において感染力の強さや頻度、重症度において右に出るものがないのがロタウイルスです。このことから、日本国内のみならず国際的な保健機関であるWHOにおいても、ロタウイルスの予防接種が強く推奨されています。事実、予防接種の効果は絶大であり、約8割の胃腸炎が、また重症例の約95%以上が予防接種により防ぐことができると言われています。

ノロウイルス

年代を問わずもっとも頻度が高い

ロタウイルスと比較して発症ピークはやや早く、晩秋に始まることが多いです。また感染性胃腸炎の原因としては年齢を問わず最も頻度が高いものです。

強い嘔気が特徴

小児においては成人と比較して下痢はさほどひどくないのですが、嘔気/嘔吐が強いことが特徴です。全般的にロタウイルスと比較して罹患期間も2日までと短いことから、嘔吐が始まった初期数時間の間に脱水に陥らないように注意をすることが大切です。家庭でのケアという観点からは、「瞬発力」が求められるウイルスと言えます。

アデノウイルス

グラフにはありませんが、アデノウイルスも小児における感染性胃腸炎の約2%で認める病原体であり、ロタウイルス及びノロウイルスに引き続き第3位の位置を占めます。通年性でありますが夏場に流行を見ることもあります。潜伏期間は1週間程度と長く、下痢も7日間と長引きやすいです。先のロタウイルス/ノロウイルスと比較して軽症にすむことが多いのですが、「ダラダラとすっきりしない」特徴があります。

 

ウイルス性胃腸炎については、下の表も参考にしてください。

病原体名 ロタウイルス ノロウイルス アデノウイルス
流行時期 冬から春
(1月から5月)
秋から冬
(9月から2月)
通年性
特に夏
感染経路 経口感染 経口感染 経口感染
潜伏期間 約2日 半日〜2日 5~10日
感染力 非常に強い 強い 強い
症状の特徴 激しい下痢

白色便

腸重積や脳炎なども

強い嘔気 長引く下痢

時に白色

罹患期間 5〜7日 1〜2日 7日
重症度 最重症 重症 中等症
予防接種 あり なし なし

細菌性胃腸炎

細菌性胃腸炎は、先に挙げたウイルス性と比較して頻度は低いものの、いくつかの相違点も挙げることができます。

1.食中毒を引き起こす

細菌性胃腸炎では、生卵(サルモネラ)、生の牛肉(腸管出血性大腸菌)、生魚(腸炎ビブリオ)、おにぎりや仕出し弁当(黄色ブドウ球菌)などを摂取することと関連しています。

2.脱水症以外の合併症を引き起こす

カンピロバクターではギランバレー症候群(神経麻痺)が、腸管出血性大腸菌(いわゆるO-157など)では溶血性尿毒素症症候群(腎不全や脳症)などが生じることがあります。下痢嘔吐が治まった後も、これらの合併症には注意が必要です。

3.抗生物質が適応になりうる

細菌性胃腸炎では抗生物質が適応になることもあります。しかしむしろ胃腸炎や合併症を悪化させるという考えもあり、医師の指示に従うことが重要です。

まとめ

以上、感染性胃腸炎の症状及び原因について概説してきました。お子さんの胃腸炎は非常にありふれたものでありいずれも嘔吐・下痢を呈する反面、原因に応じて重症度や経過も様々です。敵を知ることはとても大切であり、対処法の記事も参考にしつつ家庭でのケアに役立ててください。