何気ない家事や作業中に手首が痛む…。誰でも一度はそんな経験があるかもしれません。手首の痛みが強くて、時間が経っても治らない場合は病気や怪我が潜んでいる可能性があります。今回は手首が痛くなる原因として考えられるものを紹介していきますので、参考にしてみてください。

目次

なぜ手首が痛くなるの?

手関節の構造-図解

私たちが手首と呼んでいる部分は、正確には「手関節(しゅかんせつ)」といいます。手関節は舟状骨や月状骨といった手の平にある8つの石みたいな小さな骨と、肘から手首まである橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)の2つの骨とでできた関節です。8つの骨(手根骨)の名前はそれぞれ以下の通りです。

  • 大菱形骨(だいりょうけいこつ)
  • 小菱形骨(しょうりょうけいこつ)
  • 舟状骨(しゅうじょうこつ)
  • 有頭骨(ゆうとうこつ)
  • 有鉤骨(ゆうこうこつ)
  • 月状骨(げつじょうこつ)
  • 三角骨(さんかくこつ)
  • 豆状骨(とうじょうこつ)

手関節には骨と骨をつなぐ靭帯(じんたい)や関節を動かす筋肉や腱(けん)など様々な組織があります。それらの組織に何か異常がある場合に手首の痛みが生じます。

いつ痛みが出ましたか?

手首が痛くなるのは、何かの強い衝撃や繰り返し加わった負担など様々なきっかけがあります。そのためどのようなきっかけで痛みが出たか、思い出してみることが大切です。

例えばスポーツをやっている途中に痛めたり、転ぶなどして痛みが出たりした場合は、骨折や靭帯の損傷(捻挫など)が考えられます。また、家事など日ごろの手作業で手首を使い過ぎて徐々に痛みが出た場合は、腱鞘炎(けんしょうえん)などの炎症が生じている可能性があります。

このように、どのようなきっかけで痛みが出たかが分かるだけでも原因を知るきっかけになり、その後の治療の参考にもなります。

手首が痛くなる原因9選

大工

手首が痛くなる場合に考えられる病気や怪我を紹介します。自分の症状や状態に当てはまるかどうか、ぜひチェックしてみてください。

1.捻挫

手首の関節部分に強い力が加わったり、伸ばし過ぎてしまったりしたときに起こります。手首に痛みを覚えたり、腫れを伴ったりします。実際に傷ついているのは靱帯や腱、軟骨といった骨以外の部分です。靱帯が損傷した程度によって痛みは変わってきます。

2.狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)

繰り返し手を使用することで、指を動かす筋肉につながる腱に負担が加わり、炎症を起こしてしまった状態です。とりわけ親指を多く使うことで生じ、親指の付け根から手首にかけて痛みや腫れがみられる疾患をドケルバン病と言います。

3.関節リウマチ

関節にある滑膜(かつまく)という細胞が異常に増えてしまい、炎症を起こす病気です。症状が徐々に進み、関節の変形なども生じます。

関節リウマチは指や手首、肘など様々な部分で起こります。手首で生じると動かしにくくなったり、動かした時に痛みやこわばり、腫れがみられたりします。

4.橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折

転んで手を着いた時によく起こる骨折です。転んだ直後から、手首に痛みが生じ、腫れがみられます。骨折によって手首の変形がみられる場合もあります。

女性の方は閉経後に骨がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)になっていると、受傷時に骨折しやすくなっている場合もあります。

5.舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折

スポーツや交通事故で手首を強く打った時に生じる骨折です。親指側の手首にある小さな舟状骨と呼ばれる骨が折れてしまった状態です。単なる捻挫と勘違いしやすく放置されやすいですが、なかなか痛みが取れない時は骨折している場合もあるため、整形外科でよく診てもらってください。

舟状骨は血流が悪いため、骨折した部分がくっつかず関節のように動いてしまう偽関節という状態になる可能性があります。痛みが残ったり手首を動かしづらかったりします。

6.ガングリオン

手にこぶができます。手首の近くで手の甲側にできることが多く、女性によく見られます。ガングリオンができても痛みが出ない場合が多いですが、こぶが神経を圧迫すると痛むことがあります。

7.キーンベック病

月状骨が潰れてしまう病気で、繰り返す小さい外傷が発生原因の一つとされていますが、はっきりとした原因はわかっていません。手を酷使する仕事を行う男性に多くみられます。手首を動かした時に痛みを生じたり、動きにくかったりします。また腫れもみられ、握力が低下してくることもあります。

8.変形性手関節症

手を繰り返し酷使していたり、骨折などの怪我やキーンベック病が生じたりした後に手関節が変形してしまうことがあります。手首の痛みや動きにくさを感じることがあります

9.三角繊維軟骨複合体(TFCC)損傷

手首を動かしたとき、手首の小指側が痛んだり引っかかった感覚になったりします。手首を使い過ぎたり、スポーツや転んで手首をひねったりしたときに起こることがあります。

手首の痛みの治療法

手首の痛みの治療は、大きく分けると保存的療法と手術療法の二つがあります。

保存的療法

患部を安静にしたり、薬で炎症を抑えたり、リハビリテーションに取り組んだりするなどして手首の動きを改善させます。手首の痛みの多くはこの保存的療法が選択されます。

種類は次のようなものがあります。

  • 固定療法…サポーターやテーピング・ギブスなどで手首を固定し安静を保ちます
  • 薬物療法…炎症や痛みを抑える薬を服用したり、注射したりすることで症状を改善させます
  • リハビリテーション…訓練などを通し筋力を鍛えたりして手首の動きを改善させます

手術療法

保存的療法でも症状が改善しない時や、橈骨遠位端骨折・舟状骨骨折など骨が折れてしまっている場合は、骨を固定させるために手術が行われることもあります。

また、ドケルバン病などで再発を繰り返す時も、炎症の元となっている狭窄部位を手術する場合があります。

まとめ

手首の痛みが生じている場合には、腱鞘炎や関節リウマチなどのように放っておくと症状が悪化したり、骨折などの早急な治療が必要な怪我が潜んでいたりする可能性があります。痛みが引かない場合は、すぐに整形外科を受診しましょう。