2006年、ニコチン依存症は病気であるという考えのもと、健康保険を使用して病院の外来で禁煙治療を行う禁煙外来が開始されました。医師の指導のもと治療が行えるため、自分ひとりで禁煙を行うより成功しやすいといわれています。では、禁煙外来ではどのような治療が行われるのでしょうか?

目次

禁煙治療は健康保険を利用できる?

気を付けなくてはいけないこととして、誰でも保険適用で禁煙外来を受けられるというわけではありません。健康保険を使うには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上
  • 35歳以上の場合は、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上
  • 直ちに禁煙することを希望している
  • 禁煙治療を受けることを文書により同意している(病院で問診票などに氏名を書きます)

ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)は、以下の通りです。
10個の設問で当てはまるものが5つ以上あれば要件を満たしたことになります。

 1 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。
 2 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。
 3 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか。
 4 禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
 5 上の症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。
 6 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。
 7 タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。
 8 タバコのために自分に精神的問題※が起きていると分かっていても、吸うことがありましたか。
 9 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。
 10 タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。

このほか、以前保険適応で治療を受けたことのある方は前回の治療の初回診療日から1年経過していることが条件とされています。

禁煙治療の内容とスケジュール

禁煙治療は12週間かけて行われ、この期間中に5回病院に行きます。
通院の際には、おおむね以下のような治療を受けます。

通院回数 初診 2回目 3回目 4回目 5回目
初診から

2週間後 4週間後 8週間後 12週間後
内容 ・ニコチン依存度をチェック

・一酸化炭素濃度の測定

・禁煙開始日を決定

・禁煙経験・健康状態の確認

・薬選び

・診察

・一酸化炭素量の測定

・禁煙を継続するためのアドバイス

・薬の効果の確認、副作用があれば対応

初診で行われることの詳細は以下の通りです。

1.ニコチン依存度をチェック

問診等を行い、ニコチンへの依存度を調べます。
施設によっては尿検査が行われることもあります。

2.呼気一酸化炭素濃度の測定

一酸化炭素とは、タバコに含まれる有害物質のことです。
息にどのくらい一酸化炭素がふくまれているかの計測をします。

3.禁煙開始日を決定

禁煙をいつから開始するか明確に決め、禁煙宣言書にサインします。

4.禁煙経験健康状態の確認

これまでの禁煙・喫煙歴を確認するほか、ニコチンが切れた際の対処法など禁煙を成功させるためのアドバイスを受けます。

5.薬選び

薬それぞれの説明を受け、自分に合った貼り薬や飲み薬を選びます。

禁煙外来を受診した時の成功率は?

病院に行くか迷っている方は、特に成功率が気になるかと思います。

厚生労働省が平成 21 年に発表した調査報告によると、5回の治療を終了した方の禁煙成功率(治療終了後の9ヶ月間禁煙成功率)は49.1%と、約2人に1人が禁煙に成功している計算になります。

ここでポイントとなるのが、5回通院した場合という点です。

初診だけで、その後病院に通わなくなってしまう方や、自己判断で薬の使用を辞めてしまう方もいらっしゃいますが、治療を中止する時期が早いほど、禁煙に失敗するケースが増えます。通院を1回で中止してしまった方の成功率は6.5%、2回目で中止は15.9%、3回目で24.7%、4回目で29.1%と、通院回数に比例して成功率も下がってしまうのです。

薬を使用すると自分だけで禁煙に成功するような気がしてしまうかもしれませんが、その後も医師に定期的にチェックしてもらうことが重要なのです。
また、2回目以降の通院で実施される診察は、禁煙が継続できているかの確認や、体調のチェックをします。禁煙により体調が改善されていく結果を実感できるため、禁煙のモチベーションにつながります

禁煙補助薬の種類

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禁煙外来を使用する人が、特に期待することに禁煙補助薬があげられるのではないでしょうか。禁煙補助薬を使用することで、禁煙中の離脱症状が軽減され、禁煙が成功しやすくなります。禁煙補助薬には、病院で処方されるものと市販で購入できるものがあります。市販で購入できる禁煙補助薬はニコチン含有量が少ないため、喫煙本数が多くニコチン依存度が高い人は病院で処方された薬のほうが比較的楽に成功できるようです。

主に健康保険適応の禁煙補助薬には、以下の2種類があります。

  1. ニコチンパッチ(身体にシールを貼り、皮膚からニコチンを吸収する)
  2. バレニクリン(脳の中のニコチン受容体に作用する、ニコチンを含まない禁煙補助薬)

禁煙補助薬を使用した場合、自分で禁煙するより3~4倍禁煙しやすくなるといわれています。薬を上手に使用することで禁煙を成功することができるでしょう。

まとめ

たばこの消費が激しい人ほど、自分ひとりで禁煙するのは難しいかと思います。
禁煙外来では医師のサポートのもと、計画をたてて禁煙に取り組めるので、禁煙を成功させたい方は一度禁煙外来に相談してみても良いかもしれません。
保険適応で禁煙治療を受けることのできる病院さがしはこちらからできます。

受診を決心された方は、必ず通院を継続し、自己判断で薬を辞めたりしないことが大切です。