ピアスの穴ではなく、生まれつき耳の周りに小さな穴が開いているのが、「耳瘻孔(じろうこう)」という病気です。実は頻度の高い疾患といわれている耳瘻孔について、今回はご説明します。

目次

耳瘻孔とは?

耳瘻孔の構造

正式には「先天性耳瘻孔」と呼ばれ、生まれつき耳の周りに小さな穴が開いていることがあります。穴は耳のあちらこちらにできますが、耳のつけねに近い、こめかみ側に多くみられます。穴の入口が気づかれない程小さかったり、穴の周りがへこんでいたり、穴の中が袋状になっていたりと様々な形状をしています。

耳瘻孔の多くは、1~1.5㎝程度の浅い穴ですが、たまに耳の穴までつながっていることもあり、穴は自然にふさがることはありません。

耳瘻孔ができる原因

胎生期に耳を形成するときに異常が生じたものと考えられています。耳は複数のパーツが合わさり、複雑な過程を経て作られているので、先天的に異常が現れやすい場所の一つです。

形成の過程で、各パーツの合体が不十分だったときに隙間ができ、皮膚が奥に入り込んで袋状になってしまうために、穴があいてしまうと考えられています。家族内で発生することが多く、遺伝性が指摘されています。発生頻度は日本人では5~10%といわれ、欧米人の1~2%よりも比較的高いという報告もあります(松戸市医師会より)。

病院に行くべき?

耳瘻孔

耳瘻孔は無症状のことも多いですが、穴からチーズのような、臭いのある分泌物が出ることがあります。これは穴の中にたまった汗や垢、角質などですので、たいてい問題はありません

ただし穴に細菌が入ってしまい、化膿することで腫れや痛みを伴うこともあります。膿を出してしまえば落ち着きますが、再発する可能性が高いので、形成外科耳鼻科を受診して手術してもらう方が良いでしょう。

治療方法は?

耳瘻孔は耳鼻科形成外科で扱う疾患です。一度も感染を起こしたことがなければ、そのまま様子をみても差し支えはないといわれています。炎症をおこしたときは抗生物質や消炎鎮痛剤などによる治療がされます。

再発を繰り返したりトンネルの途中に感染の袋ができたりするようなら、摘出手術を勧められます。摘出は軟骨に至るまできちんと行います。

成人の場合は、局所麻酔での摘出手術ができますが、複雑な手術の場合は全身麻酔を併用します。子どもの場合は、手術中の鎮痛と鎮静が必要となるため全身麻酔を行い、3日ほどの入院が必要になる場合が多いです。

手術では穴と周囲の組織ごとくりぬきますが、皮膚の欠損を最小限におさえるよう配慮され、傷跡は目立たないように丁寧に縫合されます。

まとめ

耳瘻孔は、症状がなければ基本的に心配のいらないものです。ただし腫れや痛みが出たときは、耳鼻科や形成外科を受診しましょう。化膿を頻繁に繰り返すようですと、穴と周りの組織を摘出する手術が行われることもあります。