日本脳炎は、名前の通り脳に障害をおこし、重症な後遺症を残す可能性があるウイルス感染です。
感染すると死亡率や後遺症の危険が高く、非常に恐ろしい病気ではありますが、近年ではワクチン接種によって感染リスクを大幅に抑えることが可能になっています。
今回は日本脳炎の概要と、日本脳炎ワクチンの効果や副反応、接種時期や回数について詳しく解説していきます。
日本脳炎とは
日本脳炎ウイルスの感染によって生じる脳炎です。ヒトからヒトへうつることはありません。
感染は蚊(コガタアカイエカ)によって媒介されます。日本脳炎ウイルスに感染した動物(ブタなど)を刺した蚊が、ヒトを刺すことで、ウイルスが体内に注入されてヒトへの感染が成立します。
症状
感染すると必ずしも脳炎を起こすわけではありません。ほとんどの場合は無症状で、発症するのは100~1,000人の感染者のうち1人程度に留まります。ただし、発症すると20~40%が死亡する非常に恐ろしいウイルスです(厚生労働省より)。
症状としては、6~16日間の潜伏期を経て、高熱や頭痛、嘔吐などが現れます。その後、光に対して過敏になったり、意識がなくなったり、けいれんを起こすなど、脳の障害を生じます。ここで死亡を免れても、発症した人のうち45~70%には神経系の後遺症が残ります。
頻度
現在はそれほど流行していません。昭和50年代から平成3年までは、年間の感染者が50人を超える年もありましたが、ワクチンの普及により、平成4年以降は年間10人以下に留まっています。
日本脳炎ワクチンの効果
日本脳炎は、ワクチン接種によって、感染のリスクを75~95%抑えることができるという報告があります(厚生労働省より)。
日本脳炎ワクチンは定期接種に定められている不活化ワクチンです。不活化ワクチンとは、ウイルスをもとに作るワクチンですが、作成の過程で病原性をなくすため、接種によって日本脳炎に感染することはありません。
日本脳炎ワクチンの接種時期・回数
日本脳炎ワクチンは13歳の誕生日の前日までに計4回接種します。接種は2期に分かれており、1期に3回、2期に1回の計4回となります。対象となるのは、1期は生後6ヶ月から7歳6ヶ月、2期は9歳から13歳未満の子どもです。以下に標準的なスケジュールを示します。
- 1期接種:初回接種は3~4歳の間に2回、6~28日の間隔をあけて行います。その後、2回目の接種から約1年(少なくとも6ヶ月)をあけて1回(3回目)接種します。
- 2期接種:9~10歳の間に1回(4回目)接種します。
日本脳炎ワクチンの副反応
副反応としては、発熱(37.5℃以上)、頭痛、筋肉痛、接種部位の赤みや腫れなどが報告されています。
これらの多くは接種3日後までにみられています。特に発熱は、初回接種の当日、翌日に多く報告されます。
したがって、接種後に発熱するのは、ワクチンが正常に作用できている証拠といえます。
ただし、発熱が長引く場合や、不安感が強い場合には、接種した医療機関に再度受診してください。
この他、頻度は下がりますが、生じうる重大な副反応として、ショック(急激な血圧低下による意識障害)、アナフィラキシー様症状、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、けいれん、血小板減少性紫斑病などがみられることもあります。
急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
ワクチン接種や麻疹(はしか)、インフルエンザなどの感染症に続いて生じうる脳神経系の病気です。
ワクチン接種の場合、接種2週間後に発熱、頭痛、けいれん、運動障害などの症状を示します。
ほとんどの例で薬物治療により回復しますが、稀に神経系の後遺症を残すことがあります。
血小板減少性紫斑病
血小板に対する自己抗体が作られることにより、血小板が減少する病気。自己抗体とは、免疫機能の異常であり、本来は異物に対して働くはずの免疫機能が、自分自身の細胞(ここでは血小板)に働いてしまい、必要な細胞を壊してしまう病気です。血小板は止血の際に重要な成分であり、血小板が減少することで、出血しやすく、また出血すると止まりにくくなります。症状として、皮膚の点状の出血や歯ぐきからの出血、鼻血、便や尿に血が混ざるなどがみられます。
まとめ
日本脳炎は、発症すると20~40%が死亡し、生存しても半数近くに後遺症が残ってしまう恐ろしい病気です。
以前は流行もありましたが、現在ではワクチンの普及により、感染の機会は激減しています。
ワクチン接種にはいくつかの副反応がありますが、死亡や後遺症のリスクと比較すれば、ワクチン接種によるメリットの方が優れていることは明確です。子どもの命を守るためにも、スケジュールを守ってしっかりワクチンを受けさせてあげましょう。