蚊に刺されても、かゆいだけだと思っていませんか?日本脳炎はある特別な種類の蚊に刺され、ある日突然40℃近い熱が出て、吐き気や嘔吐といった症状が現れます。ついには、手足に麻痺が起きたり、意識消失をしたりする恐れもあります。しかし、日本では発症する人が少ないためか、日本脳炎について詳しく知る機会が少ないのが現実です。そこで、この記事では日本脳炎の疫学や症状について詳しく説明します。
日本脳炎とは
日本脳炎は主に“コガタアカイエカ”という蚊によって媒介されます。コガタアカイエカは日本脳炎ウイルスをもっており、そのウイルスが人に感染すると重篤な急性脳炎を引き起こします。日本脳炎ウイルスは約80年前に日本で初めて分離されたため、このような名前が付きました。
日本脳炎の疫学
1.日本脳炎患者数
日本脳炎は全世界で、年間約3~4万人の患者の報告があります(国立感染症研究所HPより)。日本と韓国ではワクチンの定期接種の普及からその感染は制御されています。そのため、1966年の2017人をピークに減少し、1992年以降は毎年10人以下の発症となっています(国立感染症研究所HPより)。日本国内には日本脳炎ウイルスをもった蚊が現在も発生していますが、ワクチンの効果のため日本脳炎は流行しません。
2.日本脳炎の発生地域
日本脳炎は日本だけでなく、様々な地域で発症が確認されています。主に、極東から東南アジア・南アジアにかけて広く分布しています。しかし、1990年代にはオーストラリアなど、アジア以外の地域へも感染が広がっています。
日本脳炎の症状
日本脳炎の潜伏期間はおよそ6~16日間とされています。つまり、日本脳炎ウイルスを持った蚊に刺されてから、約1~2週間で日本脳炎の症状が出現します。
日本脳炎の一般的な症状は、
- 数日間続く高熱(38℃以上)と頭痛
- 吐き気・嘔吐
- めまい
以上3つです。さらに、子供が日本脳炎にかかると、腹痛や下痢を伴うこともしばしばあります。
この3つの症状(小児の場合は腹痛や下痢を含む)は初期症状です。日本脳炎では、初期症状に引き続き急激に、項部硬直(頭を持ち上げると抵抗があること)や麻痺、意識消失など、急性脳炎の症状が現れてきます。
また、日本脳炎の死亡率は20~40%で、特に子供や老人では死亡のリスクが高いとされています。さらに、精神障害や発達遅滞などの精神神経学的後遺症は生存者の45~70%に残り、特に子供では重度の障害が残るとされています(国立感染症研究所HPより)。
日本脳炎は、発症時には脳に障害を及ぼしているため、今後ウイルスに効く薬剤が開発されたとしても後遺症が残る可能性が高いといえます。ですから、ならないように予防することが何よりも大切です。日本脳炎は予防接種の効果が示されており、ワクチン接種が推奨されています。
まとめ
ワクチンの開発と普及のため、日本で日本脳炎を見る機会は少なくなりました。しかし、日本脳炎の国内発症は0ではないため、忘れてはいけない病の一つです。特に、子供や老人は死亡率が高く、子供は重度の後遺症が残る可能性があります。そこで、日本脳炎の予防が重要となります。例えば、蚊に刺されないように夏でも長袖を着たり、防虫スプレーを欠かさずに使用したりといった予防が重要となります。また、ワクチンの接種も予防に有効です。