乳幼児が何かの前兆・既往歴(それまでにかかった病気)がないまま死に至ってしまう原因不明の状態のことを乳幼児突然死症候群(SIDSと定義します。その前兆はまだはっきりしていませんが、リスクがわかっており、これを踏まえた予防法があります。ここでは、乳幼児突然死症候群に関しての最近の状況と、予防方法を紹介します。

目次

乳幼児突然死症候群(SIDS)の定義とその傾向

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは、これまで健康であった乳幼児が眠っている間に死亡してしまう状態です。それまでの健康状態・既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査と解剖によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群をさします。

主として睡眠中に起きて、日本での発症頻度は6,000人に1人程度であります(乳幼児突然死症候群(SIDS)診断ガイドライン(第2版)より)。最近の統計によると、平成28年(2016年)には109名の報告がありました(厚生労働省より)。

乳幼児突然死症候群は、0歳児の死亡原因では第3位(5.7%)です。第1位は先天奇形・変形および染色体異常(35%)、第2位は周産期に特異的な呼吸障害等(14%)であり、その割合が高いことからも、そのリスクの解明が予防方法の啓発に重要であります。

乳幼児突然死症候群と窒息との違いとは

乳幼児突然死症候群の原因はまだ判明していませんが、乳幼児では呼吸の中枢(延髄の機能)が未熟と考えられています。

健康な人であっても、深い眠りであるノンレム睡眠では無呼吸となることがありますが、脳からの指令により呼吸を再開しています。この呼吸の再開が困難となり、無呼吸のまま死亡してしまう状態が乳幼児突然死症候群と考えられています。

これに対して、窒息は布団・枕・ぬいぐるみなどの小物・衣服などにより鼻や口元をふさいでしまう原因があり、赤ちゃんが苦しがるという前兆がみられることが多いです。

乳幼児突然死症候群のリスクとなる事項と予防策

母親と赤ちゃん

近年の研究では、乳幼児突然死症候群のリスクとしては、未熟児(低出生体重児・早産児)・人工栄養児の他にも、やわらかい寝具の使用・うつぶせ寝・家族の喫煙の関連が示唆されています。こうしたリスクから、予防策を考える必要があります

1.やわらかい寝具を使用しない(寝具の配慮)

寝具はやわらかいと寝返りを打てない、口や鼻をふさぎやすいという傾向があります。寝具の使用としては、固いマットを使用し、枕は使用しなくても大丈夫でしょう。また、かけ布団・タオル・ヒモが顔にかからないような対応が必要です。

2.うつぶせ寝をやめる

乳幼児突然死症候群はうつぶせ・あおむけのどちらでの発症もありますが、うつぶせ寝の方がリスクは高い傾向があります。寝返りができるようになってからは、睡眠時にはあおむけの姿勢であることを確認することが重要です。

3.タバコをやめる

家族の喫煙による影響は、乳幼児突然死症候群で大きな危険因子となります。両親がタバコを吸っていると、喫煙しない場合とくらべてリスクが高まります。妊娠中からの禁煙、また、外出先では禁煙席に座るなどの対応がリスク防止のために重要です。

4.母乳育児をこころがける

人工乳栄養での赤ちゃんよりも、母乳育児の赤ちゃんの方が乳幼児突然死症候群の発症率は低い傾向であることが判明しております。母乳での免疫力の上昇、直接の授乳により舌・顎が発達しやすいという傾向があります。

人工乳育児が乳幼児突然死症候群への直接原因にはなりませんが、母乳も飲むように対応してください。

赤ちゃんの突然死を防ぐためにできること

乳幼児突然死症候群以外で突然死を予防するためには、まず赤ちゃんを一人にしないようにしてください。なるべく赤ちゃんと同じ部屋で寝て、また赤ちゃんが寝たのを確認してから、両親もお休みください。

また、寝かしつける場合・添い寝をしながらの授乳には十分注意してください。こうした配慮は、乳幼児突然死症候群のみならず窒息・誤飲による事故を未然に防ぐには重要であります。

まとめ

乳幼児突然死症候群は、日本では年間約100名の報告があります。このリスク要因を解析して予防するためには柔らかい寝具を使用しない、喫煙をしない、あおむけ寝にする、可能な範囲で母乳育児を取り入れるという方法があります。また、赤ちゃんを一人にしないで、同じ部屋で寝る、眠っている間もその様子を見るなどの配慮も重要です。