体調が悪くて病院に行ったとき、気になる症状があってドラッグストアなどで市販薬を買ったとき…薬にお世話になる機会はたくさんあります。

では、薬はどのように体内に取り込まれ、どのように体に吸収されていくのでしょうか。本記事で解説していきます。

目次

薬の8つの投与経路

体の中に薬を送り込むことを投与といいます。

飲み薬や注射によって薬を投与された経験がある方は少なくないと思いますが、こうした投与方法は、それぞれの薬の性質や治療目的を考慮して決定します。

その投与の方法について、ここでは主だったものを説明します。

経口投与

錠剤やカプセルなどを利用した、最も一般的な方法です。

経口投与された薬は多くの場合、小腸の腸壁から吸収されて血流に乗ります。

静脈内投与

針を静脈に入れて投与します。血管内に直接注入するため、早めに効果が現れる傾向があります。また、薬の量を調整しやすいことも特徴です。

たくさんの薬を投与しなければならない場合・薬の効果を長時間持続させたい場合などに行われる点滴(点滴静脈注射)も、静脈内投与にあたります。

皮下投与

針を皮膚と筋肉の間にある皮下組織に刺し、薬を投与します。投与された薬はゆっくりと組織の中を広がり、毛細血管から血流に乗って全身へ運ばれていきます。

皮下投与される薬の例として、ワクチンインスリンヘパリンなどがあります。

筋肉内投与

筋肉内に注射する方法です。

皮下投与よりも多くの量を投与することが出来る方法です。また、薬の効果が現れるのも皮下投与より早いです。

経皮投与

消炎鎮痛薬の湿布など薬を貼った場所にだけ作用する貼付剤と、経口投与した時と同じように全身作用を示す貼付剤(経皮吸収型製剤)があります。

経皮吸収型製剤を皮膚に貼り付けると、薬は皮膚を通して吸収され、全身に運ばれます。血中濃度を一定に保てるため、薬を持続的に投与したい場合に利用されます。しかし、貼付の刺激が原因となって、発赤やかぶれ、かゆみなどの皮膚症状を起こしてしまう場合があるため注意が必要です。

経皮吸収型製剤の例として、狭心症治療薬のニトログリセリン、禁煙補助薬のニコチンなどがあります。

経直腸投与

坐薬として直接直腸に投与します。

坐薬は、吐き気のある場合、経口投与すると嘔吐を誘発してしまう場合食事制限がある場合に処方されます。

経直腸投与では胃などの消化管を経由しないため、薬の分解を予防することができます。さらに、直腸周辺の血液は肝臓をほとんど通過しないため、代謝を受けにくい利点があります。

吸入投与

吸入した薬は、気管を通って肺に達します。その後、肺の内部で血流に乗ります。

吸入投与された薬は、肺に対して限定的に作用します。そのため、呼吸器の症状・病気に対して用いられます。

舌下投与

舌の下に薬を置くと、薬は口腔内の毛細血管から吸収されます。

舌下投与は投与が簡単な上、消化管を通らないため吸収も迅速です。

この方法は狭心症治療薬のニトログリセリンに利用されています。ほとんどの薬の場合は吸収されづらいため、この方法は使えないことが多いです。

投与されてから排泄までの4ステップ

カラフルな薬

ここからは、投与された薬がどのように体の中を巡っていくか解説します。

体の中での薬の動きは「薬物動態」といいます。

1.吸収

吸収とは、薬が投与された位置から血液中に移動することです。

薬が吸収される速さや量は、薬物の性質、投与経路や吸収される部分の状態などの影響を受けます。

静脈内投与などで血管内に直接投与された薬は、ほぼ100%が体内に吸収されます。一方、飲み薬は胃や腸の粘膜を通って血液中に移動されるので、吸収率は100%ではありません。どれだけ強い薬であっても、吸収されなければ作用することはありません。そのため、薬物動態を考える上ではこの吸収という過程がとても重要です。

2.分布

吸収された薬が血流に乗って全身をめぐり、筋肉や脂肪など様々な組織の中に移動することを指します。

薬は、体の中で作用するところに正しく到達しなければなりません。たとえば、心臓病の薬なら心臓で効かなければ意味がありませんし、腎臓病の薬は腎臓で作用する必要があります。

薬が効き目を正しく発揮するには、血中濃度が一定範囲内であることが大切です。濃度が低くては必要な効き目が得られず、反対に高すぎては副作用が生じやすくなります。薬が効きやすい血中濃度を保つために、定められた時間や量を守ることは重要なことなのです

3.代謝

取り入れた物質が化学変化などによって別の物質に変化することを「代謝」といいます。病気を治療する目的で使用している薬ですが、体にとっては異物の一つです。そのためほとんどの薬が、主に肝臓で、酵素のはたらきによって化学変化を起こします。すると薬は、体外への排泄にむけて活性(効果)を弱められたり、構造を変えられたりします。

一方、活性(効果)のない状態で投与される薬もあります。こうした薬はプロドラッグと呼ばれ、体内で代謝されることで初めて治療効果を発揮するようになるのです。

4.排泄

薬(そのまま、あるいは代謝された状態)はすべて、最終的には体外へと排泄されることになります。

尿や胆汁、糞便中などに排泄されますが、中には、わずかな量ではありますが母乳中に排泄される薬もあります。乳児に影響を与えるものもゼロではないので、授乳中に服用する薬については、医師や薬剤師に相談するようにしてください。

まとめ

薬の投与方法は薬の性質を考慮した上で決められています。また、薬の吸収方法も薬の特性によって様々です。

それぞれの薬の性質を最大限に活かし、効果を得るためにも、薬は指示された通りの用法・用量を守ることが大切です。