関節リウマチの治療は、基礎療法(生活指導など)、薬物療法、手術療法、リハビリテーションの4本柱で成り立っています。そのなかで、もっとも重要なのは薬物療法です。

しかし一旦骨や軟骨が傷んだり、変形した関節は残念ながら薬で元の状態に戻すことはできないので、痛みを取り除いたり、機能の回復、変形の矯正を目的に手術が行われます

また、薬は効いているのに、少数の関節だけの炎症が収まらない場合も、手術を行うことで、痛みが減り、薬の効きが一層よくなる場合があります

目次

関節リウマチの手術方法にはどんな種類がある?

手術法としては、主に

  1. 人工関節置換術(傷んだ関節面を取り除き、金属やプラスチックに置き換える手術)
  2. 滑膜切除術(関節内の炎症組織を取り除く手術)
  3. 関節形成術(自分の関節を残しつつ、骨を切ったり、靭帯や腱のバランスをとる手術)
  4. 関節固定術(関節を骨で固める手術)

がありますが、部位によって、種々の手術が使い分けられています。

薬物治療の進歩と手術療法の変遷

関節リウマチの薬物療法は生物学的製剤の出現によって、治療の成績が劇的によくなり、治せる疾患になりつつあります。さらに治療ガイドラインも整えられ、新たな薬も研究されています。このような薬の進歩により、関節の破壊や変形が抑えられ、問題なく日常生活を送られる患者さんがおおよそ80%と考えられています。

残りの20%の患者さんも、完全にコントロールはできないものの、ほとんどの方が最初よりはよくなっています。ただし、治療により痛みなく暮らせている患者さんの中にも、レントゲンで関節の破壊などが徐々に進んでいる方があるというのも事実です。

このように多くの患者さんが日常生活で困るような関節の障害を起こさなくなりつつあるため、リウマチで手術を受けられる方は減っています

以前は、股関節や膝関節の破壊のために歩行が難しくなった患者さんに対して、整形外科で多くの人工関節手術が行われていましたが、激減しています。最近は、リウマチによる関節破壊はそれほどでなくとも、リウマチ患者さんの寿命が延びたことから、加齢による関節の変化が加わり、痛みが出てきたために手術を受けられるケースも増えてきています。

その一方、以前はリウマチによる炎症、変形の再発のリスクが高いことから、手術が困難で、仕方ないと諦められていた手や足の変形に対する手術が増えています

関節リウマチ

出典:整形外科からみたリウマチの現状

これは、大きな関節の炎症は薬で抑えられても、たくさんの関節で複雑な動きをする手や足の指などの変形まで完全に薬で抑えるのは難しいこと、薬物で炎症をコントロールできるようになり、手術の適応が広がってきたこと、そしてなによりも、患者さんの生活への希望が高くなってきたことによると考えられています。

今回は、そのような関節リウマチの手術のうち、上肢(肩から手の指まで)の手術について解説します。

肩の手術

肩は人体のなかで、もっとも動きの大きな関節です。したがって、骨での結合よりも、周囲の腱や靭帯などで関節が支えられています。そして、多くの腱や筋肉の力で、腕を持ち上げています。

通常、五十肩といわれるような年齢に伴う肩の障害では腱が炎症を起こしたり、切れたりしていますが、骨や軟骨の異常は少ないのです。

しかし、リウマチの場合は、腱や靭帯以外に骨や軟骨も破壊されます

滑膜切除

骨の破壊がすくないのに痛みが強い場合、まずは関節に薬の注射を行います。

効果がなければ、滑膜切除を行い、同時に傷んだ腱などを修復する場合もあります。関節鏡という関節用の内視鏡による手術も行われています。この場合は、傷は小さくて済みます。

人工関節置換術

骨や軟骨の破壊が大きい場合は、人工関節置換術を行います。

いずれの場合も術後にリハビリを行いますが、どうしても筋肉や腱の損傷があるため、日常生活はできるようになりますが、完全に元通りにするというのは難しいようです。

肘の手術

肘はものを取るときに手を伸ばす、あるいは洗顔、洗髪や入浴、食事の際に曲げられることで体に手をとどかせるという機能があります。ですから、肘の動きが制限されると非常に不自由が大きくなります。

肘の手術は、主に滑膜切除術人工関節置換術に分けられます。

いずれも、まずは関節の状態を診察やレントゲンで確認します。関節の軟骨がどの程度減っているのか、骨の破壊はどの程度か、靭帯などが傷んで関節がグラグラしていないか、神経の麻痺はないか、などを評価します。

滑膜切除

肘関節だけが腫れて痛いという場合、まずは関節に注射をすることが多いと思います。

それでも痛みが残る場合、肘の軟骨が残っていれば、滑膜切除術を行います。MRIなどで骨が傷んでいなければ、関節鏡という関節用の内視鏡による手術も可能な場合があります。しかし、骨にもリウマチが及んでいることが多く、その際は関節を開いて骨に入っている滑膜も切除しないと、関節の痛みが残ってしまいます。

手術後は、関節の腫れ方をみながら、できるだけ早く動かす練習をします。

人工関節置換術

一方、人工肘関節の手術をしたほうがよいのは、痛みだけでなく、レントゲン検査で軟骨が失われ、ある程度以上の骨破壊もあり、関節の動きが悪い、あるいは肘がグラグラと不安定になっていて、生活に支障が出ているような場合です。

関節リウマチ

このようなときは、肘の内側を通る尺骨神経が障害され、小指がしびれたり、手の筋力が落ちたりしていることがあるのですが、リウマチ患者さんの場合、手も障害されている方が多く、その評価は難しい場合もあります。

関節破壊が進行し、あまりに骨が破壊されますと人工関節の設置が難しくなることがあるので、主治医の先生と相談のうえ、手術も考えてよいと思います。

手術の後、痛みや動きは改善しますが、あまり重いものを持ったりすると人工関節が早く傷むので、大きな力がかかるようなことは極力避けるようにします。

手関節の手術

手関節は手の運動では『扇の要』となるところですが、リウマチで高頻度に関節破壊が起こります。

ただ、手には多くの骨があるため、手関節(橈骨、尺骨、手根骨)を固定しても、指がきちんと動けば、生活上の不便は意外と少ないと考えられています。

リウマチの手関節手術としては、おもに腱の断裂に対する手術痛みをとる手術があります(滑膜切除は、ほとんどの場合併用されます)。

腱の断裂に対する手術

腱の断裂は手指を伸ばす腱(伸筋腱)によく起こるので、切れた腱を縫い合わせたり、移植したりします。その際に、関節形成、関節固定を組み合わせることが多いようです。

関節リウマチ

痛みをとる手術

痛みをとる手術としては、部分的な関節固定や関節形成、人工関節置換術が行われますが、患者さんの状態によって使い分けられていますので、詳しいことは主治医の先生や、手術を執刀される先生とご相談ください。

関節リウマチ

腱が切れている場合や、関節形成、関節固定を行った場合、術後しばらくギプス固定を行う場合もあります。

ギプス中も可能な範囲で、指を動かす練習を始めます。手の手術では、術後のリハビリが非常に重要となります。

手術がうまくいっても、リハビリが進まず、動かない固い手になってしまっては困るので、主治医やリハビリの先生の指示をよく聞いてしっかりリハビリをしてください。

手指の手術

多くのリウマチ患者さんでは、手指の関節に障害がおきます。

手指で大事なことは、握る、つまむという動作ができることですから、その獲得が大きな目的となります。

さらに薬物療法の進歩で、痛みや機能障害が格段に改善していることから、

痛みなく、日常生活の困らない程度に使うことはできるけれども、人目につきやすい手指の変形を矯正したいという整容目的の手術を希望される患者さんもおられます

手指では、おもにPIP関節(第二関節)とMCP関節(指の付け根の関節)が破壊され、DIP関節(第一関節)が破壊されることは少ないですが、腱のバランスが崩れることにより、DIP関節にも変形は及ぶことがあります。

代表的な変形は、MCP関節での尺側偏位(指が小指のほうに傾く)、スワンネック変形、ボタン穴(ボタンホール)変形、母指のZ変形などです。

関節リウマチ

MCP関節での尺側偏位には、おもに人工関節置換術が行われます。人工関節の素材は、金属製のものやシリコン製のものもあります。

その際には、再度変形しないように、腱のバランスも整えます。

また、関節破壊が軽度の場合は、腱などのバランスを整え、ずれた骨を戻す関節形成術を行うこともあります。

スワンネック変形、ボタンホール変形はいずれもリウマチの炎症による腱、靭帯、関節包の障害であり、多くの場合、自分の組織を用いて関節形成術を行います。

母指のZ変形では関節固定術が行われることが多いようです。

手指についても、手術よりも術後のリハビリのほうが大切といえるくらいです。主治医やリハビリの先生の指示をよく聞いてしっかりリハビリをしてしましょう。

最後に

今回は、リウマチの上肢の手術について解説しました。リウマチではいろいろな変形がいろいろな程度で起こるので、手術方法も多岐にわたります。

今回の文章はあくまできっかけですので、疑問を持たれた点は主治医の先生とよくご相談ください

次回以降に、下肢(股関節から足の趾まで)や脊椎(せぼね)の手術についても解説したいと思います。

なお、繰り返しになりますが、薬物療法によりリウマチの進行が止められていることが手術治療の前提になります。

薬の効果が出ていない状態では、手術をおこなっても変形が再発したり、人工関節がはやく傷んだりしますので、そのことは十分にご理解ください。