関節リウマチの診療において最も重要なことは、関節リウマチかどうかの適切な鑑別が行われ、できるだけ早期に診断を受け、適切な治療が開始されることです。

関節リウマチには”Window of Opportunity(治療機会の窓)”があり、早期の関節リウマチでは治療感受性が高い、つまり治療反応性が極めて良好な時期が存在することが分かっています。このため、発症後はできるだけ早期に適切な診断を受け、適切な治療が行われることが、その方の今後を変えてしまうほど重要です。

目次

リウマチの診断基準

関節リウマチの新分類基準-図解
関節リウマチを早期に診断できるように、現在では米国リウマチ学会(ACR)と欧州リウマチ学会(EULAR)が共同で作成した新基準が用いられています。

レントゲン検査で骨びらん(骨が一部欠けていること)が存在する・あるいは以下の4項目を10点満点で判定し6点以上で、関節リウマチと診断します。

  • 腫脹または圧痛のある関節数
  • 自己抗体の反応(リウマトイド因子(RF)・抗CCP抗体があるか調べる)
  • 関節炎の持続期間
  • 急性炎症タンパクの反応(CRP(C-リアクティブ・プロテイン)・赤沈(ESR))

ここで大切なことは、関節リウマチ以外の病気を充分に鑑別し、除外を行うことです(下図参照)。

鑑別が難しい疾患として、自己免疫疾患膠原病(全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、混合性結合織病、多発筋炎・皮膚筋炎、強皮症)やウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス風疹ウイルスなど)が挙げられます。そのため、関節リウマチをご自身が疑ったとき、どこの科にかかったら良いかについては、適切に膠原病やウイルス感染症を鑑別できるリウマチ科であると思います。

鑑別難易度
1.ウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス、風疹ウイルスなど)
2.全身性結合組織病
(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症)
3.リウマチ性多発筋痛症
4.乾癬性関節炎
1.変形性関節症
2.関節周囲の疾患
(腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など)
3.結晶誘発性関節炎
(痛風、偽痛風など)
4.血清反応陰性脊椎関連関節炎
(反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患関連関節炎)
5.全身性結合組織病
(ベーチェット病、血管炎症候群、成人スチル病、結節性紅斑)
6.その他のリウマチ性疾患
(回帰リウマチ、サルコイドーシス、RS3PEなど)
7.その他の疾患(更年期障害、線維筋痛症)
1.感染に伴う関節炎
(細菌性関節炎、結核性関節炎など)
2.全身性結合組織病
(リウマチ熱、再発性多発軟骨炎など)
3.悪性腫瘍
(腫瘍随伴症候群)
4.その他の疾患
(アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群)

自己抗体検査

診断に重要な自己抗体検査として、リウマトイド因子(RF)と抗CCP抗体があります。

RFは、関節リウマチ以外の膠原病(全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群)や肝硬変・結核など膠原病以外の病気でも陽性となります。また、RFは発症早期の関節リウマチでは50%程度しか陽性とならず、陰性だからといって関節リウマチを否定することはできません。

一方の抗CCP抗体は、関節リウマチが発症していない早期や関節の腫れが少ない時期から陽性となり、診断に極めて有用となっています。ただし、この抗CCP抗体が陰性となる関節リウマチ患者さんも5人に1人の割合でいるため、自己抗体の有無だけでは関節リウマチの診断はできません。
聴診器-写真

CRP赤沈(ESR)

関節リウマチの病気の本体は、あらゆる関節の滑膜(関節を包む膜)の炎症です。その炎症反応(病気の活動性)を調べるために、CRP・赤沈(ESR)が用いられます。

CRPは、体内で炎症、感染、組織障害が起こると肝臓で作られるC反応性たんぱくという物質のことです。通常は陰性ですが、関節リウマチ以外の炎症(肺炎、風邪、抜歯など)でも上がるため、炎症の部位を同定することが大切です。

赤沈(ESR)では、赤血球沈降速度(赤血球がガラス管内で1時間に何mm沈むか)を測定します。正常値は男性;1~9mm、女性;3~15mmです。これより10mm以上高いと体内で炎症が起こっている可能性があり、炎症の程度として判断しています。ただし、ESRは、貧血・感染症・がん・腎不全・妊娠で高くなるため注意が必要です。

さいごに

関節リウマチの診断には、充分な問診、充分な身体所見、必要な血液検査、レントゲン検査が必要であり、決して血液検査の結果のみで行われることはあり得ません。きちんと関節を触診され、胸部聴診を行われ、ご家族にリウマチ・膠原病の方がいらっしゃらないか質問され、眼や口の渇きがないか聞かれることなく、関節リウマチの適切な早期診断は行えません。どうか、関節リウマチについて、適切な判断を仰いでください。

最近の研究では、関節破壊はリウマチの発症後、早期から進行することが明らかになりました。しかし、早期に発見して、早期から適切な治療を行えば、症状をコントロールし、関節破壊が進行するのを防ぐことができるのです。