血液型不適合妊娠のうち、Rh(D)不適合妊娠は赤ちゃんへの影響が大きく、特に注意が必要とされています。
ここでは、Rh(D)不適合妊娠の検査や治療についてお話ししていきます。
Rh(D)不適合妊娠の検査
まずはお母さんとお父さんの血液の相性を調べ、Rh(D)不適合妊娠の危険性があるかどうかを確かめていきます。
Rh(D)不適合妊娠は、お母さんがRh(D)陰性で、お父さんが陽性の場合に発症するリスクが高くなります。
そのため、まずはお母さんの血液検査をし、その結果がRh(D)陰性だった際には、お父さんの血液検査もしていくことになります。
Rh(D)不適合妊娠でも、お母さんにRh(D)に対する抗体(抗D抗体)を持っていなければ、特に問題なく妊娠が進んでいきます。
そこで、次はすでにRh(D)に対する抗体(抗D抗体)がつくられているかどうかを調べるための間接クームス試験という検査を行います。
間接クームス試験も血液検査の一つの項目で、基本的には毎月おこなわれます。
抗D抗体は、妊娠、出産、切迫早産、流産、人口妊娠中絶、輸血など様々なタイミングでつくられる可能性があり、妊娠初期に抗体がなくても、妊娠中につくられてしまうケースがあるため何回か行う必要があるのです。
以下では抗体ができていたケースとできていなかったケースにわけて、Rh(D)不適合妊娠の対応について書いていきます。
Rh(D)に対する抗体ができていない場合
Rh(D)に対する抗体ができていなければ、抗Dヒト免疫グロブリンという、抗体が作られるのを阻止する製剤を投与することで赤ちゃんへの影響を予防することができます。
投与のタイミングは妊娠28週前後と出産後72時間以内、そのほか妊娠7週以降まで児生存が確認できた自然流産後、妊娠7週以降の人工流産・子宮外妊娠後や、腹部打撲後、妊娠中の検査・処置後(羊水穿刺、胎位外回転術等)などです。
妊娠28週前後と出産後に抗Dヒト免疫グロブリン投与を行うことによって、抗体が作られる確率は0.1%程度になると言われています(日本血液製剤機構より)。
Rh(D)に対する抗体ができていた場合
お母さんが抗体をすでに持っている場合、定期的に抗体価(抗体の量)や赤ちゃんの状態をチェックしていく必要があります。
赤ちゃんに溶血性貧血の既往がなく、かつ抗体価が高くなければ、抗Rh(D)抗体価を毎月測定していきます。
抗Rh(D)抗体価が高い場合には妊娠後半期に1~2週ごとに超音波検査をし、赤ちゃんに胎児貧血や胎児水腫(全身がむくんだ状態)などが見られないかチェックします。
赤ちゃんになんらかの異常がみられた場合、下記のような治療を行っていきます。
胎児輸血
お腹の中にいる赤ちゃんや臍帯に輸血を行う治療法です。
お母さんのお腹に局所麻酔を行った後、臍帯に向けて穿刺針を刺す方法が一般的ですが、腰椎麻酔や硬膜外麻酔を併用して穿刺するケースもあります。
妊娠35週を超えてから重症の胎児貧血が起こった場合には、早急な出産と出生後に新生児治療を行う方法が選択されることもあります。
母体血漿交換
大変稀ですが、妊娠初期から抗体の値が高い場合には、お母さんの血漿中の抗体を除去する血漿交換という治療を行い、抗体の値を減少させる方法が取られる場合があります。
まとめ
血液型不適合妊娠が判明した場合、抗体がつくられているかいないかで対処方法が異なってきます。抗体がない状態でしたら、抗D免疫グロブリンを適切なタイミングで投与することで、現在の妊娠だけでなく、次回の妊娠の際にも、赤ちゃんへの影響を最小限に抑えることができます。