お母さんのお腹から出てきた赤ちゃんは、目の白目の部分や肌の色が黄色い状態になっていることがあります。この状態は黄疸(おうだん)と言われますが、赤ちゃんの黄疸は基本的に心配する必要はありません。ただ中には先天的に臓器や血液に疾患・異常があるために黄疸が現れる場合があり、そのときは治療を必要とします。今回は赤ちゃんに黄疸が見られる理由と、考えられる原因について紹介します。

目次

黄疸とはどういう状態?

黄疸(おうだん)とは、眼球の白目部分や皮膚の色が黄色くなった状態をいいます。基本的には白目が黄色だと認められれば、黄疸と判断されます。

なお、みかんやかぼちゃを食べ過ぎると皮膚の色は黄色くなりますが、これは「黄疸」とは言いません。これは「柑皮症(かんぴしょう)」と言われるもので、特に治療などは必要ありません。

黄疸が出る原因は?

黄色い絵の具

新生児では生後数日でみられる生理的な黄疸があります。その他、消化管などの先天的な疾患・異常から黄疸が現れる場合もあります。

新生児黄疸

赤ちゃんは子宮内にいるとき、お母さんの子宮動脈から酸素を供給してもらっています。ただ肺で呼吸するよりも効率が悪いので、赤血球の数を増やして酸素不足に対応しています。そして産まれると、赤ちゃんは肺呼吸に移行するので、赤血球の形も胎児のものから成人のものへと変わります。このため、胎児特有の余分な赤血球は急速に壊れていきます。

この壊れた赤血球を代謝(古い物から新しい細胞へ変わる)する過程で、消化液のビリルビンがたくさん作られます。普通は血液中にあるアルブミンという物質と結合し排出されますが、結合ができるアルブミンの量には限りがあるため、残りのビリルビンは血液を流れて皮膚などに溢れ出てしまいます。

ビリルビンはオレンジ色をしているため、黄疸で皮膚や白目の部分が黄色く見えるのはそのためです。新生児の大半に生理的な黄疸がみられ、1週間程度で自然に消失していきます。

長引く場合

血液中のビリルビンが高い状態がなかなか治まらない場合は、光線療法交換輸血を行う必要があります。

  • 光線療法:青色光を皮膚に当てます。ビリルビンを分解して水溶性に変化させ、尿と一緒に排泄させます。眼に光が当たらないよう保護し、効率的に浴びられるようオムツを小さくしたり、外したりします。
  • 交換輸血:光線療法で改善がない場合、高度な黄疸の場合には、新生児の血液を抜いた分だけ輸血することにより血液を入れ替える方法をとります。

また、母乳で育てている赤ちゃんはビリルビンの代謝が遅れ、黄疸が長引く場合があります。生後1ヶ月を過ぎても黄疸が残る場合がありますが(母乳黄疸)、脳に後遺症を残すことはほとんどありません。

先天性胆道閉鎖症

先天性胆道閉鎖症は、生まれつき胆道が狭いか、胆道が無い状態を指します。肝臓で作られた胆汁が、きちんと消化管(腸)に流れて行かなくなります。ビリルビンが排出されていることで便の色は茶色になるため、排出に問題があると便の色が白くなり、黄疸も出てきます。

先天性胆道閉鎖症と診断された場合は基本的に、生後60日以内に手術を行うことが望ましいとされています。早期発見につながるよう、一部の自治体や医療機関によっては母子手帳の中に「便色カード」が入っており、一般の方でもある程度判断できるようになっています。

頭血腫(ずけっしゅ)

分娩の際、赤ちゃんの頭に外から力が加わったことでできた弾力性のある血腫です。

分娩直後に見つかることは少なく、1~2日後に発見されて徐々に吸収されて消えていきます。この時に赤血球が壊れ、ビリルビンが作られることで黄疸が生じる場合があります。黄疸は頭血腫が無くなれば消えます。一般的に治療の必要性はなく、清潔に保つことで自然に良くなります。

血液の感染症・血液型不適合妊娠

敗血症・髄膜炎といった重症な感染症を起こしていたり、母体の血液型と胎児の血液型が異なる血液型不適合が起きていたりする場合、ビリルビンの値が高くなることがあります。

ビリルビンの値が高くなる理由は、それぞれ以下の通りです。治療には光線療法・交換輸血の他に、薬(フェノバルビタール)の投与などが行われます。

  • 血液の感染症:敗血症などにかかることで肝臓の機能が低下するため
  • 血液型不適合:妊娠中に胎盤を通過して胎児の血球が母体内に入ってくると、異物と判断して母体に抗体が作られます。その抗体が胎盤を通して胎児に入り、赤血球が壊されて強い貧血を招き、あわせて黄疸もきたします(新生児溶血性疾患)

多くのビリルビンが作られて重症の黄疸がみられた場合、核黄疸(かくおうだん)と呼ばれる脳障害を合併する恐れがあるので注意が必要です。

まとめ

赤ちゃんの黄疸のほとんどは、特別な治療を行わずに経過します。ただ、素人では「生理的な黄疸」なのか「病的な黄疸」なのか判断することは難しいです。黄疸が重症であった場合は核黄疸になることもあり得るので、気になった場合は早めに医療機関を受診しましょう