いつものようにカバンを持ち上げた時、または立ち上がった瞬間、腰に激痛が走って動けなくなったことはないですか?突然やってくる腰痛は、数秒間ほど判断ができなくなるほどのショックを受けますよね。とにかくこのままではいけないから、何とかしたいと思います。でも、どうしたらいいのでしょう。本記事では「腰痛診療ガイドライン2012」をもとに、その急な腰痛に役立つ対処法や、痛みを和らげるための応急処置を紹介します。

目次

急な腰痛は、どうして起きるのでしょう

腰は、体を支える中心の大事な部分です。

体を支えている腰にはいつも、体重や荷物の重みがかかっています。傷つきやすい部分でもあるので、突然痛くなることがあるのです。

腰痛はその85%が、「非特異的腰痛」といわれる原因の分からないものです。残りの15%は脊椎に原因があるもので、椎間板の断裂、ヘルニア、椎間関節症、圧迫骨折、腫瘍、感染、外傷(椎体骨折)などが考えられます。

なお、下記症状を伴う腰痛は、重篤な病気の症状である可能性があります。これらの症状がみられた場合、すぐに整形外科を受診してください。

  • 発症年齢が20歳より下または55歳より上
  • 時間や活動性に関係ない痛み(何もせず安静にしていても痛みがある)
  • 胸部の痛み
  • がん、ステロイド治療、HIV感染の既往
  • 栄養不良
  • 体重減少
  • 広範囲におよぶ神経症状
  • 構築性脊柱変形(側弯症や後弯症)
  • 発熱

できるだけ、日常生活を維持しよう

急に腰が痛くなったとき、安静にしようと横になる人も多いでしょう。しかし、ベッドの上で休むのは痛みがひどい時期だけにとどめ、できる限り日常生活を維持した方が良いとの報告がされています。長期的に安静を保ってしまうとこれまでできていた動きがしにくくなる可能性もあるので、注意が必要です。

ただし、重いものを持ち上げたり、中腰で作業をしたりといった腰に負担のかかる動作はできるだけ避けると良いでしょう。

痛みをやわらげるのに有効な方法は?

痛みを感じた場合の応急処置としては、まずは和らげる方法を取ります。

急な腰の痛みを緩和する方法として、痛みを感じる箇所を温める方法があります。またロキソプロフェン(ロキソニン)やジクロフェナク(ボルタレン)といった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDsなどで痛みを鎮めることも効果的です。ただし、NSAIDsの飲み過ぎは胃痛や胃潰瘍を引き起こす原因となりかねないので、適切な用法・用量を守って使いましょう。

その他、一般によく知られている治療法には下記のようなものがあります。しかし、全てに効果が認められているわけではありません。

  • コルセット:痛みをやわらげる効果はありません。しかし、機能改善(日常生活でできる範囲を広げる)の効果は認められています。
  • 運動療法急性腰痛症には、運動療法は効果がありません。
    ※なお、3ヶ月以上にわたって腰痛が続く場合(慢性腰痛症)には運動療法が有効とされています。運動の種類による効果の差はないため、できる範囲での運動を行うと良いでしょう。
  • 代替療法(カイロプラクティック、マッサージなど):ガイドラインでは、有効性は不明とされています。

なかなか痛みが治まらない場合は病院へ

病院の入り口

一般的な腰痛は、1~2週間程度で快方に向かいます。しかし、下記のような場合は整形外科を受診することをおすすめします。

  • 痛みが長引き、なかなか良くならない
  • 起き上がれないほどの激しい痛みがある
  • 腰の痛みに加え、脚の痛みやしびれがみられる

また、発症して4週間以上が経過した腰痛には運動療法が効果的です。無理のない範囲で、身体を動かすようにしましょう。

腰痛を予防するためにはどうすればいい?

腰痛は、一度起こると再発することも少なくありません。予防のためには運動が有効です。無理の生じない範囲の運動を生活に取り入れ、活動性を維持するように努めてください。

また、腰痛によって起こる心理的・社会的な問題に対しては、認知行動療法が有効です。治療を通じて「痛み」に対する認識を修正することで、長期に渡る病欠などを防ぐことができます。

まとめ

急な腰痛が起きた場合、まずは痛みを和らげる方法を取りましょう。痛みがおさまったらできるだけ普段通りの生活を送ります。痛みが長引いたり、腰痛以外の症状も出てきたりするようであれば、整形外科を受診して適切な処置を受けてください。

痛みが引いたら、腰痛の再発を予防するためにも意識的に運動を行うようにすると良いでしょう。