かゆみのある湿疹が全身の至るところにできるアトピー性皮膚炎。実は、皮膚だけではなく目にも悪影響を及ぼします。本記事では、アトピー性皮膚炎の目への合併症やその症状について見ていきます。
アトピー性皮膚炎とは
かゆみのある湿疹が特徴のアトピー性皮膚炎は、小児に多い病気です。小児のうち、約10%がかかっているともいわれています。
アトピー性皮膚炎は、年齢の経過によって症状が軽くなる場合や、適切な治療によって症状がコントロールされた状態が長く維持されると成人の頃にはほぼ完治することもあります。しかし、思春期以降に悪化したり、治ったと思っていても成人してから再発したりする人も多くいます。
原因としては、乾燥肌(ドライスキン)による皮膚のバリア機能の低下や、食べ物やダニなどのアレルギー体質が考えられます。このようなアレルギー体質は、アトピー素因とも呼ばれています。
アトピー性皮膚炎で起こる目の合併症
アトピー性皮膚炎が目に起こす合併症は、まぶた、角膜、結膜、目の奥…と、目のほとんどの部位に発生する可能性があります。
顔に湿疹が多くできてしまった場合、顔のかゆみがひどくなります。花粉症などで目のかゆみがあると、ついゴシゴシとこすりたくなってしまいますよね。それと同じように、アトピー性皮膚炎が顔、特に目の周りにできてしまうと、目の周囲をこすったり叩いたりしてかゆみを和らげようとしてしまいます。しかし、この「こする」「叩く」といった行為は、柔らかく繊細な眼球や眼瞼に悪影響を及ぼします。その結果、様々な目の合併症を引き起こしてしまうのです。
アトピー性皮膚炎の目の合併症には次のようなものがあります。
眼瞼炎
眼瞼炎(がんけんえん)は、目の周りの皮膚にかゆみや湿疹・赤み・ただれ・かさつきなどが起こる病気です。かゆみで目をこすることで、まつ毛が抜けてしまうこともあります。
症状がひどくなるとまぶたの皮膚が厚く固くなったり、皮膚だけではなく角膜や結膜・眼球などにも影響を及ぼしたりします。
角結膜炎・春季カタル
アトピー性角結膜炎では角結膜(黒目と白目)にアレルギー性の炎症がおこり、充血やかゆみ・異物感・痛み・流涙などの症状が起こります。表層角膜炎や角膜びらんなどの角膜上皮障害がおこる場合もあり、放置しておくと重症化して角膜潰瘍などを引き起こし、視力にも影響を及ぼしてしまうこともあります。
春季カタルは重症のアレルギー性結膜炎のことでかゆみや痛みなどの症状が強く、春季カタルの人の約70%以上にアトピー性皮膚炎がみられるといわれています(日本眼科医会より)。
白内障
アトピー性皮膚炎が目にもたらす合併症の代表ともいえるものが、アトピー性白内障です。目のレンズ部分にあたる水晶体が白く濁り、かすみやぼやけなどの視力低下やまぶしさなどの症状があらわれます。白内障が進行するにつれ症状も強くなっていきます。
眼瞼炎と同じように、アトピー性皮膚炎で目の周りがかゆくなることから、こすったり叩いたりすることによる目への衝撃が原因ではないかといわれています。
網膜剥離
網膜が剥がれ、視野欠損や急激な視力低下を引き起こす網膜剥離ですが、アトピー性皮膚炎は若年層の網膜剥離の原因としてよく知られています。アトピー性の網膜剥離と診断された人の約70%は15~25才で、そのうちの40%は両目におこります(日本眼科医会より)。
目の周りのアトピー性皮膚炎が重篤な人に多く見られることから、アトピー性白内障と同様に目をこすったり叩いたりすることによる外傷が原因ではないかといわれています。アトピー性網膜剥離とアトピー性白内障を合併している場合も多くあります。
アトピー性網膜剥離では、網膜の周辺部だけが剥離してゆっくりと進行するタイプが多いです。そのため、網膜剥離が起こっていても初期では自覚症状がないことがあります。
まとめ
上記のように、アトピー性皮膚炎はさまざまな目の合併症を引き起こします。特に、アトピー性網膜剥離などは放置すると失明に繋がる恐れもあります。目の周りの皮膚症状が強い場合は、眼科で定期的に目の状態も診てもらうようにしましょう。