網膜剥離(もうまくはくり)」という病名はきいたことがあるという人も多いのではないでしょうか。しかしこの網膜剥離は特別な病気ではなく、誰にでも起こりうる可能性がある病気なのです。注意すべき網膜剥離の自覚症状4つをみていきましょう。なお、記事内の図解は、クリックまたはタップで拡大しながらご覧ください。

目次

網膜って何?

普段の生活では見えるのがあたり前になっているため、視力についてあまり深く考えたことはないと思いますが、ものが見える仕組みはよくカメラに例えられます。目から入ってきた光は角膜や水晶体で屈折され、網膜に当たり電気信号として視神経から脳へと伝えられ私達はものを見ています。カメラに例えると角膜・水晶体はレンズのはたらきを、網膜はフィルムのはたらきをしているのです。

フィルムカメラは最近、また密かなブームとなっていますよね。このフィルムカメラの記録媒体がフィルムです。レンズがあっても、フィルムがなければ記録できません。それと同じで目も、網膜がなければ光の情報が脳へと伝わりません。ものを見るためには、網膜はなくてはならないとても重要な役割を担っているのです。

網膜剥離とはどんな病気?

網膜はものを見るために必要な神経の膜で、光を伝える神経網膜とその土台の網膜色素上皮の二層に分かれています。通常であればピッタリとくっついているはずのこの二層が、何らかの原因で剥がれてしまった状態を「網膜剥離」といいます。

神経網膜は光を感じる視細胞からできていますが、この視細胞は網膜色素上皮を通して栄養をもらっているため、網膜剥離がおこってしまうと栄養が受け取れなくなり、光を感じる視細胞の感度が低下してしまいます。つまりフィルムとしての機能がはたらかなくなるため、視野障害や視力障害が起こってしまうという病気なのです。

網膜剥離の種類

網膜剥離の種類-図解
網膜剥離は大きく「裂孔原性網膜剥離(れっこうげんせいもうまくはくり)」と「非裂孔原性網膜剥離(ひれっこうげんせいもうまくはくり)」に分けられます。

裂孔原性網膜剥離

なんらかの原因で網膜に孔(あな)が開くと、その孔から目の中の水分(液化硝子体)が網膜の下に入り込んでしまい、最終的に網膜がペロリと剥がれてしまいます。網膜に孔が開く原因としては、強度近視後部硝子体剥離外傷などがあげられます。

強度近視があると眼球の長さが長くなるためどうしても網膜に薄い部分ができてしまい、この薄い部分が委縮して小さな孔(円孔)が開くことがあります。

また、目の中には硝子体(しょうしたい)というゲル状の物質があるのですが、加齢によってこのゲル状の硝子体がどんどん液化していきます。これによって硝子体と網膜の間に隙間ができていく後部硝子体剥離がおこります。後部硝子体剥離は加齢現象なので問題はありませんが、この後部硝子体剥離の過程で硝子体が網膜を引っ張り、孔が開いてしまう場合があるのです。

非裂孔原性網膜剥離

裂孔原性網膜剥離と違い、網膜に孔が開いていないにもかかわらず網膜が剥がれてしまいます。非裂孔原性網膜剥離はさらに「滲出性網膜剥離(しんしゅつせいもうまくはくり)」と「牽引性網膜剥離(けんいんせいもうまくはくり)」に分けられます。非裂孔性網膜剥離は、何らかの病気に続けて起こるため「続発性網膜剥離」とも呼ばれています。

滲出性網膜剥離

ぶどう膜炎などが原因で網膜内に滲出液があふれ、網膜が剥がれてしまいます。

牽引性網膜剥離

糖尿病網膜症などがあると、目の中に増殖膜が作られます。この増殖膜が網膜を引っ張ることで網膜が剥がれていってしまいます。

こんな症状は要注意!網膜剥離の4つの自覚症状

網膜剥離 4つの自覚症状-図解
網膜剥離が起こっても痛みなどは感じませんが、いくつかの自覚症状があります。

飛蚊症

虫や糸くずのようなものがふわふわと目の前を飛んで見えることを飛蚊症といいます。大きさや形などは様々で、明るい所を見たときや白い壁・障子などを見たときに気付く場合が多いです。後部硝子体剥離でもみられる症状で加齢現象のひとつともいわれていますが、網膜剥離でも飛蚊症が自覚症状として現れることがあります。黒いものが急に増えた・黒いものが大きくなったという場合は注意が必要です。

光視症

一瞬「ピカッ!」と光が走ったように見えたり、光がないのにチカチカと光が見えたりする症状を光視症といいます。後部硝子体剥離がおこっている過程で癒着が強い場合に、硝子体が網膜を引っ張るときの刺激をピカッという光として感じます。光視症があるときは網膜が引っ張られているときなので、網膜に孔が開いてしまうことがあるので注意が必要なのです。

モヤがかかったように見える

網膜に孔が開いてしまうと出血する場合もあります。出血が起こると硝子体に出血が広がりモヤがかかって見えたり、ススのようなものが見えたりすることがあります。なお、目がかすむ症状については、「覚えておきたい!目のかすみを引き起こす病気」の記事もご参照ください。

視野が欠ける

網膜剥離が進むと視野が欠けて見えるなどの視野異常を感じます。また同時に視力の低下をもたらす場合もあります。なお、視野の検査については、「視野が狭いと感じたら…眼科で行う検査とは」の記事をご覧ください。

まとめ

網膜剥離が起こると剥がれてしまった網膜へは栄養がいかなくなってしまいます。網膜は再生しないため、早期発見・早期治療がとても重要です。自覚症状を知っておくことで、網膜剥離から目を守ることにも繋がります。また、症状の原因は網膜剥離によるものだけではなく、加齢や他の病気が原因となっていることもあります。気になる症状が出た場合には、症状の原因を見極めるためにも、早めに眼科を受診しましょう。