アトピー性皮膚炎は皮膚のかゆみだけではなく、その合併症にも注意が必要な病気です。特に眼の合併症は視力にも影響を及ぼすことがあります。眼の合併症対策や治療法などについてみていきましょう。

目次

合併症の治療

アトピー性皮膚炎では、かゆみのある湿疹が全身のいたるところにできるのが特徴です。とくに目の周りにかゆみなどの症状がある場合、眼球や眼瞼へ影響を与えることがあります。

アトピー性皮膚炎の眼の合併症としては、白内障や網膜剥離などが挙げられます。それぞれの合併症の治療法についてみていきましょう。

それぞれの症状については、「アトピー性皮膚炎の症状は肌だけじゃない!目に起こる合併症4つ」をご参照ください。

アトピー性白内障

アトピー性白内障の治療は、加齢による白内障と同様です。

濁ってしまった水晶体は、元に戻すことはできません。完全に治すためには、濁った水晶体を取り出し、代わりに人工レンズを入れる手術が行われます。白内障の程度が軽い・日常生活に不自由がないという場合、白内障の進行を遅らせる点眼薬で様子をみることもあります。

アトピー性白内障では網膜剥離などを合併している場合があるため、白内障以外に眼に病気が起こっていないかしっかりと確認することも重要です。

手術と聞くと怖いと感じる方もいることでしょう。しかし、白内障が進行し過ぎてしまうと濁りがさらに強くなってしまいます。すると目の奥(眼底)の状態を把握するのが困難になってしまったり、手術自体が難しくなってしまったりします。治療については、医師としっかり相談しながら決めていきましょう。

アトピー性網膜剥離

アトピー性網膜剥離は、網膜に孔が空き、そこから水が網膜下に入り込んでしまうために網膜が剥がれて起こります(裂孔原性網膜剥離)。

目の周りにアトピー性皮膚炎の症状が出た場合、かゆみのために目をこすったり叩いたりしてしまうことがあります。すると眼球へ衝撃が伝わり、それが網膜に孔が空く原因と考えられています。

孔があいてはいるものの、まだ網膜が剥がれていない状態(網膜裂孔)では、網膜下に水が入り込まないように裂孔の周りを焼き固めてしまうレーザー光凝固などを行います。レーザーで焼き固めることで、網膜が剥がれるのを防ぐことができるのです。

一方、網膜がすでに剥がれてしまっている場合(網膜剥離を起こしている場合)は硝子体手術網膜復位術が行われます。

硝子体手術

眼球内に細い特殊な器具を入れ、剥がれた網膜を目の中から元に戻す手術法です。

眼球内にあるゲル状の硝子体を吸い取り、特殊なガスや空気を入れて網膜を押さえつけます。必要に応じて網膜下の水も抜き、網膜裂孔の周りにレーザーを照射して裂孔をふさぎます。

眼内に入れたガスなどは空気よりも軽いため、手術後は網膜を抑えつけるためにもしばらくはうつむきやうつぶせ姿勢が必要になることがあります。

網膜復位術

網膜裂孔に相当する眼球の外から、バンドのようなシリコンスポンジを当てて縫い付けることで眼球内が隆起します。その状態で外側から光凝固や冷凍凝固などを行い、網膜剥離をくっつけます。バックリング手術強膜内陥術とも呼ばれる方法です。

硝子体手術とは異なり、うつぶせ姿勢などは必要ありません。

角膜上皮障害

アトピー性皮膚炎を伴う目のアレルギーとして、アトピー性角結膜炎があります。かゆみなどの症状によって目を叩いたりこすったりすることで角膜に傷がつき悪化すると、角膜びらん角膜潰瘍角膜混濁などの角膜上皮障害を起こす可能性があります。

また、アレルギー性結膜炎が重症化した春季カタルも上記のような角膜上皮障害を引き起こすことがあるので、注意が必要です。

角膜上皮障害には、抗アレルギー薬ステロイドの点眼薬での治療が行われます。症状が重篤な場合は、上記に加えステロイド内服薬ステロイド薬局所注射免疫抑制点眼薬などが使用されることもあります。

角膜は非常に鋭い痛覚をもっているため、小さな傷でも痛みを感じます。そのため、トラブルが生じたときには気付きやすい場所ともいえます。放っておいて重症化すると視力に影響を及ぼしてしまう可能性もあるため、少しでも異常を感じた場合は眼科医の診察を受けるようにしましょう。

合併症を予防するには?

ふせんつきの本

アトピー性皮膚炎による様々な眼合併症は、目の周りをこすったり叩いたりする刺激が原因となっているといわれています。そのため、合併症を防ぐには、まずは目の周りのアトピー性皮膚炎の治療をしっかりと行い、かゆみの対策をすることが基本です。

アトピー性皮膚炎には食べ物や乾燥肌(ドライスキン)・ダニなどのアレルギー環境・ストレスなど様々な要因があります。どれにアレルギー反応を引き起こすのかは個々によって異なるため、自分のアレルギー原因をしっかりと把握することも必要です。

まとめ

アトピー性皮膚炎で特に顔の症状がひどい場合、眼合併症がおこる可能性は十分に考えられます。いくら注意していても、寝ている時など無意識のうちに目をこすったり叩いたりしてしまうこともあります。

合併症の中には、網膜剥離など、今後の視力予後に影響する重大な病気もあります。これらの病気は早期発見・早期治療がとても大切になってくるため、皮膚科医と相談しながら、目の症状がなくても定期的に眼科を受診することをおすすめします。