口腔内をしっかりチェックする診査や手術を経て埋め込むインプラントは、基本的に保険が利かないため高額な治療費がかかってしまいます。時間もお金も費やして入れたものなので、そのまま問題なく使えていくことを望むものです。

ただ、人工の歯だからその後にトラブルがないとは言えません。インプラントもトラブルなどによってダメになってしまう可能性があります。今回はインプラント治療後に考えられるトラブルとその解決法について紹介していきます。

目次

インプラントの構造

インプラントは下の図のような構造になっています。

インプラントのしくみ-図解

埋入後~上部構造装着後のトラブルと解決法

インプラント体埋入(まいにゅう、埋め込むこと)手術や上部構造(上物の歯)を装着した後などに間もなく起こる可能性があるトラブルと、その解決法を上げていきます。

 インプラント体の脱落

インプラント体が上手く骨とくっつかなかった場合に起こります。治療を行った歯科医院に早急に連絡しましょう。

 麻痺・痺れ

神経を傷つけたり圧迫したりしたことによります。特に下の奥歯に注意が必要です。麻痺が出てくる確率は0.13~8.5%と幅があります(厚生労働省より)。歯科医院への連絡が必要です。

インプラント体が神経を圧迫している場合は除去し、麻痺の場合は投薬(ビタミン B12 製剤)やステロイド薬、神経節ブロックなどさまざまな治療法があります。

このほか発音がしにくかったり、歯が磨きにくかったりすることがあります。
発音は次第に慣れて解消されていく場合もありますが、上部構造の形態修正が必要な場合もあるので、早めに担当歯科医師に相談しましょう。
歯磨きについても歯科医師や歯科衛生士に指導してもらうことにより改善することもありますが、上部構造の形態修正や歯ぐきの形態修正(角化粘膜増大術)が必要な場合もあるので、早めに担当歯科医師に相談しましょう。

長期使用のトラブルとその解決法

インプラントのトラブル-写真
インプラントを長期間使い続ける中で起こり得るトラブルとその解決法を見ていきます。

インプラント周囲粘膜炎・インプラント周囲炎

比較的多くみられるトラブルです。インプラント周囲の粘膜だけに限局した炎症が起こったものを「インプラント周囲粘膜炎」、粘膜の腫れだけでなく骨吸収(骨が溶けていく)など歯周病に似た症状が現れるものを「インプラント周囲炎」と言います。歯周病と同様に細菌感染が原因です。

粘膜だけが炎症を起こす場合と違って、周囲炎は歯垢除去など非外科的な感染を除去していく方法では改善しないことがあります。その場合外科的なアプローチが必要となることがあります。日ごろからしっかり口腔内を清潔に保つ、歯科での定期健診に通うなどメンテナンスに力を入れましょう

インプラントの動揺

インプラント周囲炎などによる骨吸収によってインプラント体自体が動揺する場合や、上部構造を固定するスクリュー(ネジ)の弛みにより上部構造のみが動揺する場合があります。原因はさまざまですが、上部構造のみが動揺する場合はスクリューの締め直し、インプラント周囲炎による場合はリカバリーが難しく、インプラント体の除去に至ることが多いです。

上部構造の破損

固定しているスクリューのゆるみ歯ぎしりなどで過度に力が加わる場合に起きます。

早めに対処する必要があります。放置してしまうとインプラント周囲炎など更なるトラブルに発展する可能性があります。上部構造は一度外して修理や新しく作り直します

インプラント体の破折

インプラント体への大きな負担が原因となっている場合が多いです。インプラント体を除去することが一番の選択となります。

インプラントを入れた後に不快感や気になる点が出てきた場合は、できるだけ早めに歯科医院を受診して下さい。インプラントのトラブルは対応が遅れてしまうと内容によっては状況を悪化させてしまうことも少なくありません。

まとめ

インプラントは埋め込んだ直後と長期間使っている場合とで出てくるトラブルに違いがあります。時間が経てば気にならなくなるものはありますが、放置してしまうとほかのトラブルを引き起こすものもあります。

入れたばかりなのに除去してしまう結果にならないよう、日々の口腔清掃と定期的なメンテナンスを続けていきましょう。