虫歯や歯周病が歯を失う大きな原因になっていることは皆さんご存知かと思います。実はそのほかにも歯を失う大きな原因となっているあるものをご存知でしょうか?なんと日本人の8割がやっているというありふれた、アレ!そうです。歯ぎしりです。「私はしてないから大丈夫だわ~」と安心した方、歯ぎしりには音がしないタイプのものが半数以上を占めるってご存知でしたか?しかも自覚している人は1割にも満たないと言われています。今回は歯ぎしりについて解説します。
歯ぎしりが歯に及ぼす悪影響って
歯ぎしりには
- ギリギリと音をだして歯をこすりあわせるタイプ(グラインディング)
- グッとかみしめたり食いしばったりするタイプ(クレンチング)
- カチカチと上と下の歯を噛み合わせるタイプ(タッピング)
があります。
このうち一番悪影響のあるものは②番目の音のしない食いしばりタイプです。
人間は力を入れたり、ストレスがたまると無意識に食いしばりをしているものです。
どうでしょう? 心当たりはありませんか?
歯ぎしりが歯に及ぼす悪影響としては
- 歯がすり減る
- 歯が割れる
- 歯周病が加速度をつけて進む
- あごの関節を傷害する
- 知覚過敏
などが挙げられます。
特に②と③が歯の寿命を短くする原因となっています。
歯ぎしりから歯を守るために
人はリラックスしている時は上下の歯は触れていません。このポジションを下顎安静位(かがくあんせいい)と呼びます。ところが、何かに集中・没頭している時や力を入れる必要のある時やスポーツをしている時に上下の歯が接触している場合にはかみしめている傾向があると言えます。
通常、食事の時に噛んだり飲み込んだりする際に上下の歯が当たるのは一日に15分から17分程度だと言われています。ところが日常的にかみしめが癖になっている場合や、眠っている間に歯ぎしりをすると何時間も強い力(体重くらいの力がかかると言われています)が持続してかかることになります。
これではさすがに歯やそのまわりの組織を傷めてしまうことは簡単に想像がつきますね。
歯ぎしりから歯を守るためには次のようなことを試してみてください。
1.歯を合わさない
日中は食事以外の時には歯を合わせないように意識して、食いしばりの癖が出てきたらすぐにやめるようにしましょう
2.ナイトガード

出典:長野県歯科医師会
夜寝ている間の歯ぎしりを止めることはできません。
その場合、ナイトガードを夜寝ている間につけることにより、歯を歯ぎしりのダメージから守ることができます。ナイトガードは歯科医院で保険治療で作ることができます。
3.食いしばりをやめる為の訓練法自己暗示
歯ぎしりの強さは日によって違うことが研究によって明らかになっています。心配事があったり疲れている時、ストレスがたまっている時に特に強くなるようです。
眠りにつく前に、なるべくリラックスできることをして気持ちを落ちつかせたり、食いしばりをやめる為の訓練法・自己暗示が効果的なことがあります。
→クレンチングをやめる為の訓練法・自律訓練 (岐阜県歯科医師会)をご覧ください。
おわりに
以上、歯ぎしりに関する悪影響についてお話ししましたが、アメリカ睡眠障害学会では睡眠中の歯ぎしりを異常なものとはとらえていません。ストレスを発散させるためにはある程度必要である、という認識のようです。ですので、歯ぎしりが度を超えて体に悪影響を及ぼす場合の対策としては、歯ぎしりを止めさせるというよりも、いかに歯ぎしりをスムーズに、体に害を与えずにさせられるか、ということに重点をおいているようです。歯ぎしりは8割以上の人がしているというデータもありますので、身体に害のない歯ぎしりができるよう、かみ合わせ治療などによってコントロールすることが必要なのです。
スポーツにおいても、力を必要とするものは特に食いしばってこそ力がでるものですので、食いしばっても歯を傷めないよう、競技中のマウスピースの使用が義務付けられていたり、推奨されています。
皆さんも大事な歯を歯ぎしり・食いしばりからうまく守っていくようにしましょう。