ジリジリと照りつける太陽に、蒸し暑くまとわりつくような風。なかなか暑さがおさまらず、身体が悲鳴を上げていませんか?
身体がだるい・食欲がない・疲れがとれない…このような症状がある場合は、夏バテかもしれません。今回は夏バテ対策の1つとして、上手な漢方薬の使い方をご紹介します。
夏バテとは?
夏バテとは、暑さや湿度の高さ、それに伴うストレスが原因で起こる夏特有の体調不良状態です。
クーラーを使うことで屋外と屋内に大きな温度差が生まれ、体温調節を受け持つ自律神経に負担がかかることで体調不良になる冷房病や、暑さによる睡眠不足、多量の汗をかくことにより体内の水分が不足する脱水症なども原因に含まれます。
具体的な症状として疲れやすさや全身のだるさ、食欲不振や下痢などがあります。
原因が同じでも体格や体質の違いにより現れる症状が異なり、夏バテによる体力低下や脱水状態になりやすくなると、熱中症の危険も大きくなります。
漢方とは?
古代中国医学を起源とした日本特有の伝統的な医学のことです。
身体全体のバランスが崩れることにより体調不良になると考え、足りないものは補い、過剰なものは減らし、熱いものは冷まし、冷えているものは温めるというような、均等を保つことを目的とした治療をします。
薬として用いられる漢方薬の原料は人工的に合成した化学物質ではなく、一部の動物・鉱物を除いてほとんど自然の植物です。
副作用がないわけではありませんが、漢方医に処方された通りに使用している限り、重大な副作用はほとんど起こりません。
夏バテに効果的な漢方薬とは?

夏バテに効果がある代表的な漢方薬と熱中症に対する代表的な漢方薬をご紹介します。
<適応となる症状>が、漢方を選ぶときに特に参考となる特徴的な症状です。
1.清暑益気湯(せいしょえっきとう)
<適応となる症状>
- 食欲不振
- 全身がだるい
- 汗が出る
- 下痢
- 口が渇く
- やる気が出ない
- 手足が熱い など。
夏バテで最もよく使われる漢方薬です。
“うなぎ”とほぼ同程度の効果と言われており、“うなぎ”を食べる元気もない方に効果的です。また予防効果もありますので、炎天下でのスポーツや長時間屋外にいる予定のとき、事前に服用しておくと熱中症にかかりにくくなります。
予防のために処方してもらう場合は、保険適応外で自費になることがあるので注意してください。
2.補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
<適応となる症状>
- 疲れやすい
- 全身がだるい
- 微熱がある
- 寝汗をかく
- 食欲不振
- 手足がだるい など。
夏バテ限定ではなく通年に使用される漢方薬ですが、消化を助け、栄養の吸収を良くして体力をつける効果があります。
また病後回復に使用されたり、免疫機能を上げたりする作用もあります。
3.白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
<適応となる症状>
- 飲んでも喉が渇く
- 体が熱い
- 汗が出る
- 頭痛
- 尿量が多い
『金匱要略』という漢方の古典に記載されている熱中症に使用する漢方薬の一つです。
水を飲んでも飲んでも汗が出て身体が火照り、喉が渇く状態に効果的ですが、水の飲みすぎによる小児夜尿症にも効果があるとされています。
4.人参湯(にんじんとう)
<適応となる症状>
- 食欲不振
- 手足が冷える
- 胃がチャポチャポいう
- 疲れやすい
- みぞおちに痛みやつかえる感じがある など。
虚弱体質や冷たい食べ物・飲み物のために弱りきった胃の粘膜を保護したり、身体を温め消化管の動きを活発にしたりする代表的な漢方薬です。
胃の調子が良くなれば、食欲も出て食事ができるようになります。
夏バテを改善するためには、食事をして体力をつけることが大切です。
5.五苓散(ごれいさん)
<適応となる症状>
- 頭痛
- 吐き気・嘔吐
- 尿量が少ない
- 下痢
- めまい・むくみ
- 喉が渇く など。
必要な場所には水分を多く、不必要な場所には水分を少なく維持する作用があります。
熱中症で頭がのぼせ、顔や体が浮腫み、尿の出が悪く水を飲もうとしても気持ち悪い状態に効果的です。
まとめ
食欲がない、身体がだるい、疲れやすいなど、夏バテと見られる症状が出たら、体調に合わせた漢方薬を服用するのも効果的です。
夏バテと熱中症に効果的な漢方薬を挙げてみましたが、どのお薬を飲めば良いか分からない場合には漢方専門医や薬剤師などに訊いてみると良いでしょう。
早めの対処で元気に夏を乗り切れると良いですね。