病院でよく処方される内服薬(飲み薬)。内服薬には錠剤、カプセル剤、散剤などいろいろな剤形(薬の形)があります。実は、それぞれ服用するときに気をつけなければならない点があるとご存知でしたか?今回は、それぞれの特徴や注意点をご紹介します。

目次

内服薬には、様々な「剤型」があります

口から飲み込んで、胃や小腸で溶けて吸収される薬を「内服薬」といいます。 別名として「内用薬」「経口薬」「飲み薬」などという呼び方をすることもあります。飲みやすいようにというだけでなく、「いつ・どこで溶けるのが良いか」を考えて、様々な形(剤形と呼びます)の薬が作られています。

錠剤

最もよく利用される薬の一つで、薬をタブレット状に形成したものです。服用量を一定に定めることができ、持ち運びや長期保存がしやすいため、とても使いやすい形といえます。錠剤には、さらに次のような種類があります。

  • 裸錠(素錠):錠剤のうち、表面に何の加工も施されていないものです。最も基本的な錠剤です。
  • 糖衣錠:裸錠の外側を甘い素材でコーティングしたものです。苦味などを感じにくく、飲みやすいのが特徴です。
  • フィルムコート錠:水溶性の化合物の膜で裸錠の外側をコーティングしたものです。湿気などから薬の成分を守るため、保存がしやすくなります。
  • 腸溶錠:胃ではなく、腸で溶けるように作られた錠剤です。胃で溶けてしまうと胃に障害を起こすような薬や、作用時間を遅くしたい薬などに用います。噛んだり砕いたりしてしまうと腸に行くまでに溶けてしまうため、必ずそのまま飲んでください。
  • 徐放錠:薬がゆっくり溶けるように作られた錠剤です。効果が長く続くという特徴があります。噛んだり砕いたりしてしまうと薬の効果が短時間で出てしまい、思わぬ副作用を招くことがあるので要注意です。

一般的な錠剤の正しい服用方法

一般的な錠剤は、コップ1杯程度の水とともに飲むようにします。水なしで飲んだり、水の量が少なすぎたりすると、喉や食道に錠剤がひっかかってしまい思わぬ炎症を起こすことがあるので要注意です。また、寝た状態で錠剤を飲もうとすると引っかかりやすくなるため、一度身体を起こして飲むようにしましょう。

加えて注意が必要なのは、一般的な錠剤は噛んだり砕いたりしてはいけないということです。特に腸溶錠や徐放錠は、薬の表面に傷がつくことで、意図した効果を得られない場合があります。必ず、そのまま水で飲み込むようにしてください。

もう一点、意外と注意が必要なのが、「必ずPTPシート(アルミ箔)や薬包紙から取り出して服用する」ということです。何か考え事をしながら薬を服用していると、シートや袋のまま飲んでしまう場合があります。食道異物のうち27%がPTP異物だったという報告もあるようなので(兵庫区薬剤師会)、あり得ないと決めつけず、十分に気をつけてくださいね。

特殊な錠剤

以下で紹介する錠剤は、上記とは少し異なった服用方法をするものです。詳しくは、「水がなくても飲める「口腔内崩壊錠」を知っていますか」をご参照ください。

  • 舌下錠:口の粘膜から成分を吸収させる錠剤です。噛んだり飲み込んだりせず、舌の下に置いて溶かします。
  • バッカル錠:口の粘膜から成分を吸収させる錠剤です。舌下錠とは違い、歯と歯茎の間に薬を置いて溶かします。
  • 口腔内崩壊錠:唾液やほんの少しの水分で溶けるように作られた薬です。水分摂取を制限されていたり、飲み込む力が弱くなっていたりする方でも服用できるように作られています。
  • チュアブル錠:飲み込まずに噛み砕くタイプの錠剤です。

カプセル剤

カプセル剤

錠剤と同様にタブレット型ですが、薬がカプセルのケース内に収納されている剤形のものをカプセル剤といいます。中には、粉末状や顆粒状、液状の薬などが含まれます。

カプセル剤の正しい服用方法

錠剤と同様、カプセル剤も十分な量の水で服用します。カプセル剤は特に食道や胃の粘膜にくっつきやすく、潰瘍を起こすことも少なくありません。横になって飲む場合もこの危険性が増すので、十分な水で、身体を起こした状態で服用しましょう。

また、カプセル剤は溶け出す時間や部位を調節するためにカプセルに入れられています。飲みにくいからといって、カプセルを開けて中身だけを服用することは絶対にしないでください。どうしてもカプセル剤をうまく飲み込めない場合は、同成分の散剤や錠剤に変えられないか、医師や薬剤師に相談しましょう。

散剤

一般的に粉薬といわれる形です。錠剤やカプセル剤よりも早く体内に吸収されるので、即効性が期待できます。また、2種類以上を混ぜ合わせたり、体重・年齢に合わせて細かく量を調整したりといった処方も可能です。湿気を避け、保管方法に気をつける必要があります。

散剤の中にも、下記のような種類があります。

  • 顆粒剤:粒が少し大きく、コーティングがされています。苦さや匂いを抑え、飲みやすくなっています。
  • ドライシロップ:甘く味付けされた散剤や顆粒剤です。水に溶かして飲むことができるため、お子さん向けに処方されることが多いです。

散剤の正しい服用方法

基本的に、水で飲んでください。どうしても飲めないときはジュース、アイス、プリン、牛乳などで飲ませても良いですが、逆に苦みが増したり、吸収が低下したりすることがあるので、何かに混ぜて飲ませるときは医師、薬剤師に確認してください。

また、粉の状態で飲むのがつらい場合にはオブラートやカプセルに入れて飲むこともできます。薬を飲みやすくするためのゼリー飲料なども販売されているので、使用してみると良いでしょう。

液剤・シロップ剤

液体状の薬です。錠剤や散剤に比べて保存性や持ち運びやすさは劣りますが、小さなお子さんや飲み込む力の落ちている方などが服用しやすい剤形です。

液剤の正しい服用方法

シロップ剤などでは、一部の成分が沈殿していることがあります。軽く容器を振ってから、1回分を量って飲んでください。服用時は、容器に直接口をつけないように気をつけてくださいね。

まとめ

様々な形がある内服薬。好みだけでなく、効き方に応じて選ぶ必要があることが分かっていただけたでしょうか。そうは言っても、服用しづらい剤形もあると思いますので、そんなときはほかの剤形に変えてもらうことができないか、医師や薬剤師ともよく相談するようにしてください。