妊娠中は薬をあまり飲まない方が良いと聞いたことのある人が多いと思います。でも、風邪を引いたら辛くなってしまいますよね。また、授乳中のお母さんも、薬の使用について心配される方が多いのではないでしょうか。母乳は母体から分泌されるわけですから、薬を飲めば、母乳中にも成分が入り込んで赤ちゃんに悪影響を与えるのでは?と考えられても不思議ではありません。実際、授乳中に避けた方が良い風邪薬はあるのでしょうか?

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妊娠中は風邪薬を飲んではいけない?

カプセル薬

「妊娠中の薬の使用は、慎重に」

これは常識ですが、妊婦さんが風邪を引いたときはどうすれば良いのでしょう?

おなかに胎児を抱えているだけでもたいへんなのに、発熱、せき、激しい倦怠感などに襲われると、本当につらいことでしょう。

妊娠20週までに「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」(商品名:ロキソニン、ボルタレンなど)を飲むと流産を起こしやすい、というカナダ医師会の研究があります。実際に臨床現場では、赤ちゃんの器官形成などを考慮し、妊娠5ヶ月未満の投薬を控える傾向があります。

NSAIDsは、市販の風邪薬に多用されています。 この成分が胎児の動脈管(胎児だけが持つ血管)を閉塞させて、胎児の心臓に悪影響をおよぼすことがあります。また、胎児の尿量を減少させるなどの副作用が出ることもあります。

ただ、葛根湯小青竜湯などの漢方薬は飲んでもかまいません。また「アセトアミノフェン」(商品名:カロナール、アンヒバなど)は、妊娠中も安心して飲むことができます。

妊娠中の予防接種は?

ワクチンには、「不活化ワクチン」「生ワクチン」という種類があります。

  • 不活化ワクチン:細菌やウイルスを殺し、免疫(抵抗力)をつけるために必要な成分だけを使用しているもの。
    インフルエンザ、子宮頸がん、日本脳炎、B型肝炎など
  • 生ワクチン:生きた細菌やウイルスの毒性を弱めたものを接種するもの。
    BCG(結核)、風疹、水痘、おたふくかぜなど

このうち、インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンについては、妊娠中に使用しても問題ありません。特にインフルエンザワクチンに関しては、妊婦さんの予防接種が推奨されています(妊婦さんがインフルエンザになると、免疫力が低下しているため重症化しやすいからです)。

一方、風疹や水痘などの生ワクチンは、基本的に妊娠中には接種しません。

授乳中は風邪薬を飲んではいけない?

赤ちゃんと母親

一般的な育児書などには、「授乳中に薬を飲むと、多くの薬の成分は母乳を通して赤ちゃんに移行する。赤ちゃんへの影響はそれほどではないが、肝臓や腎臓の機能が未発達なため、薬の成分が体内に蓄積されやすい」などと書かれています。これはどのような意味でしょうか。

実際には、子供に用いられる種類の風邪薬であれば、仮に母乳から出て赤ちゃんの口から少量入ったとしてもまず問題はないと考えてよいでしょう。

どうしても薬が母乳から出る可能性が心配な場合は、薬を飲む期間だけ母乳からミルクに切り替える方法もあります。また、夜中に赤ちゃんが母乳を飲まないのであれば、就寝前に1回分の風邪薬を服用してもよいでしょう。

 

妊娠中や、授乳中のお母さんは誰でも、体調に変化が起こりやすいもの。それを、「薬は危険。胎児や乳児に影響を与えるから飲んではいけない」と頭ごなしに考えてしまっては、ただ我慢することになってしまいますよね。

飲める風邪薬もあるし、飲むための対応策もあるということを知った上で、医師と相談すると良いでしょう。

まとめ

妊娠中でも授乳中でも、飲める風邪薬もあります。どの薬なら飲めるのかなど、心配なことがあれば必ず医師に相談するようにしましょう。お母さんの体調管理が、赤ちゃんの健康にも直結するのです。