「色覚異常」は決して珍しいことではなく、実は案外多いということを知らない人も多いのではないでしょうか。この色覚異常はなぜ起こるのでしょうか?またどのような見え方になるのか、あまり知られていない「色覚異常」について見ていきたいと思います。

目次

色覚異常とは?

色覚異常とは、簡単にいうと正常の人と比べて色の感じ方が違うことをいいます。

色覚異常は「全く色がわからない」と思われがちですが、色の区別が困難であるだけで、色が分からないわけでも、白黒の世界をみているわけでもありません。異常の程度に応じた色の世界を持ち、多くの場合、自分の色の誤認しやすい特徴を理解し自覚することで、日常生活を不自由なく送ることができます。

以前は「色盲」「色弱」などとも呼ばれていましたが、色盲というとまるで色がわからない白黒の世界をイメージしている人も多く、差別的な用語と捉えられることもありました。そのためこれらの言葉は使われず、現在では「色覚異常」「色覚障害」と呼ばれています。

色を感じるメカニズム

私達が物を見る時は、細かい物を見分ける力の「視力」・同時に見渡せる範囲の「視野」・色を見分ける「色覚」という大事な3つの機能があります。

これら3つの機能は網膜にある「視細胞」で光を感じることによって成り立っており、この視細胞には「錐体(すいたい)細胞」「杆体(かんたい)細胞」があります。

  • 錐体細胞:光に対する感度は高くないので暗い所では反応しないが、色の識別ができる。
  • 杆体細胞:光に対する感度が高く暗い所でよく反応するが、明暗だけで色の識別はできない。

上記のように、杆体細胞は色覚には関係していないため、暗い所では色を感じられません。つまり私達が普通に色を感じているのは錐体細胞の働きによるものなのです。

色覚異常の原因

赤と緑のリボン

色覚異常には「先天性色覚異常」「後天性色覚異常」がありますが。先天性色覚異常の原因は遺伝とされており、X染色体にある遺伝子の異常で起こる伴性劣性遺伝とされています。女性よりも男性で多く発症し、日本人男性の20人に1人は色覚異常といわれています。ちなみに女性の場合は500人に1人といわれており少ないように思いますが、色覚は正常だが色覚異常の遺伝子は持っている色覚異常の「保因者」は10人に1人いるといわれています。

色覚異常の分類

色は「赤」「緑」「青」という光の三原色から作りあげられています。色を識別する錐体にも赤錐体・緑錐体・青錐体の三種類があり、色覚異常はこれらのどの錐体に異常があるかで次のように分類されます。

杆体1色型色覚

以前は全色盲と呼ばれていました。錐体が3種類とも働かず杆体のみが働いているため、色の識別ができません。同時に視力が極端に悪いなど、色覚以外の目の問題が大きいです。発生頻度はかなり低い稀な病気といえます。

錐体1色型色覚

赤・緑・青のどれか1種類の錐体だけが働いていて、働いている錐体の種類によって「赤錐体1色型」「緑錐体1色型」「青錐体1色型」に分けられます。赤と緑錐体1色型は視力が良いのですが、青錐体1色型は視力が不良で杆体1色型色覚とよく似ています。いずれも発生頻度は極めて稀です。

2色型色覚

赤・緑・青の3種類のうちのどれか1つが欠けている場合をいいます。赤が欠けている場合を「1型2色覚」、緑が欠けている場合を「2型2色覚」、青が欠けている場合を「3型2色覚」に分類します。

異常3色型色覚

赤・緑・青の3種類のうちどれか1つの機能が低下している状態をいいます。赤の感度が低下している場合を「1型3色覚」、緑の感度が低下している場合を「2型3色覚」、青の感度が低下している場合を「3型3色覚」といいます。

先天性色覚異常は細かく分類すると上記のようになりますが、色覚異常のほとんどは赤・緑の異常である「赤緑色覚異常」とされており、青の異常や1色型は非常に稀です。

実は珍しくない色覚異常

色覚異常は、決して珍しい症状ではありません。色覚異常についての認知度が低いためにあまり知られてはいませんが、日本人男性の5%・女性では0.2%といわれています。つまり男性の20人に1人・女性では500人に1が該当するということになるのです。この結果からも、色覚異常は実は思っているよりももっと身近なものだと感じていただけるのではないでしょうか。

色覚異常の見え方

団らん

色覚異常の見え方を正常の人が理解するのはとても難しいものです。色覚異常というと色が白黒に見えるなど偏った考え方をしている人が多いのですが、ほとんどは先天性の赤緑色覚異常なので、他の人と比べて色の区別がちょっと苦手なだけなのです。

先天赤緑色覚異常の方が見分けにくい色としては、次のような組み合わせがあります。

  • 赤と緑
  • オレンジと黄緑
  • 緑と茶
  • 緑と黒
  • 緑と灰色
  • 青と紫
  • ピンクと白
  • ピンクと灰色
  • ピンクと水色
  • 赤と黒

ただその程度は色覚異常の型や個人差によって大きく、程度が軽い場合は親でさえも子供の色覚異常に気付いていないということも案外多いのです。

まとめ

色覚異常はその本人にしかわからない感覚的なものなので、他の人からすると理解しがたく、以前は差別的なことも問題になりました。しかし色覚異常は決して特別なものではありません。身近な存在だということ、ごく普通の人と変わりないのだということを知ってもらうためにも、色覚異常についての知識を持っておくのは大切なことだといえます。

編集部より:この記事では、日本眼科学会にならい”色覚異常”という表記に統一しています。