「夜になると見えにくい」。これだけ聞くと、「暗い所で見えづらくなるのは当たり前」と思う方がきっと多いことでしょう。けれども、暗い場所で著しく見えにくくなという症状が病気から起こる場合もあるのです。この状態を夜盲症 (やもうしょう)と言います。今回は夜盲症やその原因について紹介します。

目次

夜盲症ってどんな病気?症状は?

明るい所から暗い所に入ったとき、最初はよく見えなくても時間が経つと目が慣れて見えるようになった経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。こうした、暗い所で網膜の感度が上がり見え方が改善するしくみを「暗順応(あんじゅんのう)」と言います。

この暗順応が上手くはたらかず、暗い所で見えにくいままの状態が続くのが「夜盲症」です。鳥類の多くは夜目がきかないところから、俗に「鳥目」とも呼ばれています。

暗順応ができない程度、見え方の不自由度については人それぞれ異なり、全ての夜盲症の患者さんが暗い所で全く見えないというわけではありません。夜盲症の原因によっては、暗順応が極端に遅い(3~4時間かかる)ものの時間の経過とともに少しずつ見えるようになるものもあります。

夜盲症の原因

夜盲症には先天性夜盲症後天性夜盲症の2種類があり、その中でも先天性夜盲症は先天性進行性夜盲症先天性停止性夜盲症に分けられます。

夜盲症の多くは先天性です。先天性夜盲症は遺伝が原因と言われているため、根本的な治療法はありません

先天性進行性夜盲症

少しずつ進行し、やがて視野が狭くなったり(視野狭窄)、視力低下がみられたりします。

先天性進行性夜盲症の代表的な疾患は、難病に指定されている網膜色素変性症です。これは光を感じる視細胞および網膜色素上皮細胞に異常が生じ、進行していく遺伝性疾患です。詳しくは「目の遺伝疾患『網膜色素変性』。症状や治療法は?」をご覧ください。

この他の原因として、杆体錐体ジストロフィ白点状網膜などが挙げられます。

先天性停止性夜盲症

幼児期から夜盲症があるものの、そのまま進行せず、暗い所以外ではほぼ普通の日常生活を送ることができます。

眼底が「剥げかかった金箔のよう」な色調をおびて観察される小口病や、眼底に小さな白点が無数にみられる白点状眼底(眼底白点症)では、視力障害・視野障害はほとんどみられません。

狭義先天性停止性夜盲症は、小児期に中等度の視力障害で眼科を受診して初めて気づかれることが多い疾患です。眼底には明らかな異常は認められないので、網膜電図(ERG)その他の検査をして診断します。

後天性夜盲症

後天性の夜盲症はビタミンA欠乏症や、腫瘍関連網膜症などが原因として考えられます。進行した緑内障や糖尿病網膜症でも夜盲症の症状が現れることがあります。

ビタミンA欠乏症は単純に栄養不足のため起こるものと、胃や肝臓などの消化器官が障害されビタミンAを吸収したり、貯えたりできにくくなって発症するものとがあります。食生活の豊かな日本では、後者が大部分です。

腫瘍関連網膜症とは、悪性腫瘍やメラノーマがあることによって免疫系の異常が起き、網膜の成分に対する自己抗体が産生されて網膜が障害される疾患です。急激に進行する夜盲や視野狭窄、視力低下で気づかれます。

ただちに網膜蛋白に対する自己抗体の有無を調べるとともに、全身的な検査を行い原因である悪性腫瘍を捜し治療する必要があります。

まとめ

夜盲症の原因には先天性と後天性とがあります。先天性の場合は残念ながら今の医療では治療することができませんが、早期に診断をつけることで対策を考えることができます。また、後天性の場合には、命にかかわるケースもありえます。いずれにしても、「暗い所で不自由を感じるようになった」「他の人と比べて暗い場所では見えていないようだ」あるいは、「うちの子は夜道で歩きづらそうだ、よくつまずく」などの違和感を覚えたら、病院を受診しましょう。