前回の記事「糖尿病ってどんな病気?専門医が語る、放っておいてはいけない理由とは」では、糖尿病という病気の恐ろしさについてご紹介しました。今回は、糖尿病を疑った際に行われる検査と診断基準について、具体的な数値とともにご説明します。

目次

検査を受けるべき人は?

口渇や多飲・多尿などの糖尿病に特有な症状のある方は当然ですが、健診で空腹時の血糖値が126mg/dlを超えたけれどHbA1cが6.5%未満だった人HbA1cが6.5%を超えていたけれど空腹時血糖が正常~125mg/dlだった人は検査を受けると糖尿病の診断がつく可能性が高いです。空腹時血糖値110~125mg/dlでHbA1c6.3~6.4%の範囲にある正常でもなく糖尿病でもない境界型糖尿病の方では数年以内に糖尿病へ進行する確率が高いので、早期発見のためにも3~6ヶ月に1度の検査をお勧めします。

糖尿病かどうか診断するには?

若い医師

糖尿病かどうかは血液検査で分かります。

  1. 血糖値(空腹時正常値:70~109mg/dl)
  2. 約2ヶ月間の血糖値の変動の指標であるHbA1c(正常値:4.7~6.2%)
  3. 検査用の砂糖水を飲んで2時間後の血糖値を調べる糖負荷試験(正常:2時間後血糖値140mg/dl未満)

の3つの検査が診断に必要です。

まずは血糖値を調べ、高血糖かどうかの確認が必須です!

どのぐらい血糖が高いとダメなのか?

朝の空腹時の血糖値で126mg/dl以上、空腹であろうがなかろうが1日のある時点での血糖値(随時血糖値といいます)が200mg/dl以上あれば高血糖です。

また糖尿病が疑われる場合に行われる糖負荷試験で2時間後血糖値が200mg/dl以上を確認できれば高血糖です。

次の4つのうち、どれかに当てはまれば糖尿病の診断がつきます。

  1. 高血糖の上に糖尿病特有の症状(口喝、多飲、多尿)あるいはまた糖尿病の目の合併症である網膜症の存在を確認
  2. 高血糖が別々の日の血液検査で2回確認
  3. 高血糖が確認された上に、HbA1cの値が6.5%以上
  4. HbA1cだけが6.5%以上のときは、別の日に実施した血液検査あるいは糖負荷試験で高血糖を確認

高血糖の証明なくHbA1cだけ6.5%以上が2回確認されても糖尿病の診断にはなりません。また、尿検査で尿糖陽性であっても糖尿病の診断はできません。

1型糖尿病?2型糖尿病?

花瓶と花

糖尿病と判れば次は、膵臓からインスリンを出す機能が無くなった1型糖尿病か、遺伝と生活習慣の乱れからインスリンの分泌や作用の不足を起こしている2型糖尿病なのか知りたくなります。ここで必須の血液検査項目が、GAD(glutamic acid decarboxylase)抗体(正常値:1.5U/ml未満)です。GAD抗体は1型糖尿病で高率に陽性なります。

また、膵臓からどれくらいインスリンが出ているか確認する血液検査項目も参考になります。それが血液中のインスリンを測るIRI(immunoreactive insulin)です。

IRIは血糖値と同時に測ることで、血糖値に見合う十分なインスリン量が出ているかどうか知ることができます。2型糖尿病であれば空腹時のIRI(空腹時正常値:5~15μU/ml)で1μU/ml以上あり、1型糖尿病であれば空腹時のIRIで1μU/ml未満になります。

ですからGAD抗体が陰性で空腹時IRIが1μU/ml以上であれば、糖尿病の9割を占める2型糖尿病と考えることができます(*ここでは他の病気で起こってくる糖尿病は省いています)。

まとめ

糖尿病の診断に必要な血液検査項目は、高血糖を証明する血糖値、慢性的に高血糖だったことを証明するHbA1c(ヘモグロビンA1cです。そして疑わしい場合に追加する血液検査として糖負荷試験があります。糖尿病と判ったうえで1型糖尿病と2型糖尿病を区別するために必要な血液検査項目がGAD抗体であり、IRIの極端な低下は1型糖尿病を疑う根拠となります。