食事療法や運動療法でも良くならない、目標とする血糖コントロールに達しない、そんな場合はどうしたら良いでしょうか?
医師はもちろん、薬の内服や、場合によってはインスリンの注射を勧めます。患者さんからすると、「体調も悪くないし、一生飲み続けなければいけないと思うとちょっと…」「注射は…」という気持ちも分からないではないですが糖コントロールが良くならない治療を続けていても、糖尿病合併症が進むだけで良いことはありません。膵臓でのインスリン産生不足、筋肉や肝臓などでのインスリンの作用不足(インスリン抵抗性)、食後グルカゴンの抑制不足など糖尿病で起きてくる“血糖調節機能の不足”を補うためにも薬が必要なのです。
糖尿病の内服治療薬
糖尿病の内服治療薬には、以下の種類があります。
1.膵臓に鞭を打ってインスリンを出させる薬
膵β細胞を刺激し不足しているインスリンを出させることで血糖を下げます。食後数時間作用して食後の血糖を下げる薬と、日中を通して作用して食前食後の血糖を下げる薬があります。
注意としては、インスリンそのものを出させる薬なので、過量や食事のタイミング(食事のときだけ効く薬では食直前に飲みますが、食30分前など内服から食事までの時間が空いたり、1日中効く薬では3食取らずに1食抜いたりすること)で低血糖の心配があります。
- 食事のときだけ効く→グリニド薬:グルファスト、ファスティック=スターシス
- 食事のときだけちょっと長く効く:シュアポスト
- 1日中効く→SU剤 :アマリール、オイグルコン=ダオニール、グリミクロン
2.肝臓で貯蔵していたブドウ糖の放出を抑える薬→ビグアナイド薬
肝臓には、食事をとらなくても低血糖にならないように、貯めておいたブドウ糖を適度に放出することで空腹時でも血糖値を70~109mg/dlに維持する機能があります。糖尿病ではこの機能が壊れて過度にブドウ糖を放出し、高血糖の一因となっています。
この薬は主に肝臓からのブドウ糖の放出を抑えることで血糖を下げます。
- メトグルコ
- グリコラン
など
3.糖を上げるグルカゴンを抑える薬→DPP-4阻害剤
この薬は食事をとると出てくるホルモン、GLP-1、GIPの分解を妨げることで効果を発揮します。糖尿病では膵臓のα細胞から血糖を上げるホルモンであるグルカゴンが過剰に出ていて、高血糖の一因になっています。グルカゴンの放出を抑えるとともに、食事摂取に応じてインスリン分泌を促すことで血糖を下げます。
- ジャヌビア=グラクティブ
- エクア
- トラゼンタ
- テネリア
- オングリザ
- スイニー
4.インスリンの効きを良くする薬→チアゾリジン薬
筋肉や脂肪・肝臓でのインスリンの働きを良くし、血液中のブドウ糖の取り込みや利用を促進することで血糖を下げます。注意としては体重増加と、女性で多いのですが足のむくみが出ることがあります。体重増加時は、当たり前ですが食事量を控えめにすることを心掛けてください。また、足のむくみが出た時は主治医に相談してください。程度により薬の中止が必要です。
- アクトス
5.腸でのブドウ糖の吸収を遅らせる薬→α-GI
食べた炭水化物(お米やパンや麺類など)は、胃に近い小腸(空腸)でブドウ糖まで分解され吸収されます。その分解を遅くすることで、ブドウ糖の吸収を遅らせ食後の血糖を下げます。
注意としては、お腹の張りや排ガスが多くなることがあります。
- ベイスン
- グルコバイ
- セイブル
6.ブドウ糖を尿で出す薬→SGLT-2阻害剤
1年ほど前に出た新しい薬です。
もともと人の腎臓は、ある程度のブドウ糖を尿中に出してまたすぐ再吸収しています。しかし血糖値が160~180mg/dlを超えると、再吸収の限界を超え、尿糖としておしっこに排泄します。正常の人では尿糖は出ませんが、糖尿病の人では食後は160mg/dlを超えることが多く尿糖がみられます。この薬は腎臓でのブドウ糖の再吸収を抑え、1日約100g(ご飯茶碗2膳分)のブドウ糖を尿糖として排泄することで、血糖(特に食後血糖)を下げます。
注意としては、尿量が増え脱水気味になるため1日500mlほどの水分が余計に必要なこと、女性では膀胱炎や性器感染症が多少ですがみられることです。
- ジャディアンス
- スーグラ
- ルセフィ
- フォシーガ
- デベルザ=アプルウェイ
まとめ
以上の糖尿病の薬は、病気の状態(病態)に応じて必要な薬が使い分けられ併用もされます。医師と相談しながら内服を決め、薬局の薬剤師さんの服薬指導のもと正しく使用すれば副作用なく治療効果が期待できます。先延ばしせずに、適切な時期に適切な内服薬の使用が望まれます。