気胸は何らかの原因によって肺に穴が開き、胸腔内に空気が入り、肺が正常に膨らむことができなくなる病気です。

中でも突発性自然気胸は、細身の若い男性に発症しやすく、ブラやブレブ(肺内の異常な空気を含んだ空間、のう胞とほぼ意味は同じです)の破裂によって空気が胸腔内に漏れ出てしまうものです。

肺が充分に拡張できなくなると、呼吸困難や胸痛などの症状が起こり、気胸の範囲によっては専門的な処置が必要となります。

このような気胸の治療と予防について詳しく解説します。
なお、気胸のメカニズムや症状、気胸の種類について、詳しくは記事「痩せている男性は要注意!気胸って一体どんな病気?」をご参照ください。

目次

気胸の重症度分類

気胸は胸部レントゲン検査によって、どの程度肺が縮んでいるかを確認し、重症度を分類します。

  • 軽度気胸:肺尖部(肺の一番上の部分)が鎖骨の高さよりも上にある状態
  • 中等度気胸:軽度と高度の中間程度
  • 高度気胸:肺が完全にしぼんでしまっている、あるいはそれに近い状態

気胸の治療法

1.軽度気胸の場合

肺の縮んでいる範囲が狭い場合は、穴が自然に塞がり自然治癒に向かうため、手術などの処置の必要はなく、外来で経過観察されます。

「自宅で安静に」と指示される場合は、食事や入浴などの日常生活の制限は基本的にはありませんが、通勤や通学については、医師の指示を確認しましょう。

運動や旅行も控えてください。特に、飛行機への搭乗は気胸の場合は症状を悪化させるため控えましょう。

2.中等度~高度気胸の場合

中等度~高度気胸の場合は、入院が必要となり胸腔ドレナージによる治療が行われます。

胸腔ドレナージ

胸腔ドレナージは胸に直径6~7mm程度の管を挿入し、胸腔内にたまった空気を排出する方法です。
管はチェストドレーンバックと呼ばれる装置に接続し、陰圧に保たれ、排出される空気が気泡となって確認できる構造となっています。

管の挿入は局所麻酔下で行われ、挿入中も身体を動かすことは可能です。
しかし、管の屈曲や誤って抜けてしまうなどの事故、挿入部からの感染などのリスクもあるため、医療スタッフによる入念な観察と管理が行われます。

管からの脱気が確認できなくなることで治癒状態を確認し、管が抜去されます。

治療の期間については病状により個人差があり、胸腔ドレナージで改善しない場合は、手術が検討されます。

手術

胸腔ドレナージで改善しない場合や、大量の出血が伴っている気胸の場合は手術が行われます。
代表的な手術は、気胸の原因となっているブラまたはブレブと呼ばれるのう胞を切除する手術です。

現在では、開胸手術に比べて傷も小さく回復も早いとされる胸腔鏡手術で行われます。

また、胸腔ドレナージで穴が塞がり治癒したケースでも、気胸の原因となった破れやすいブラやブレブはそのまま存在しています。
そのため、これを取り除く再発を予防する目的で手術が行われる場合もあります

癒着術

持病などで全身麻酔がかけられないなど、肺の手術が困難な場合には癒着術が選択される場合があります。

癒着術は肺とあばらの壁を人為的に癒着させ、ブラが破裂しても肺が縮むことを防ぐ治療法です。
癒着術を受けると、再発した場合にほかの手術が困難になるため、最初の治療手段として癒着術が選択されることは稀です

気胸の再発は予防できる?日常生活の注意点は?

禁煙マーク

手術をしなかった場合、特発性自然気胸の再発率は高く、初回発症後再発率は23~50%、2回以上発症した後の再発率は60%と報告されています。

手術により現存するブラを切除し発症を予防することはできますが、ブラの発生原因が不明のため、完全に再発を予防することは難しいとされています。
胸腔鏡手術後の再発率は3~7%と報告されています。

治療後は運動や日常生活に特に制限はありませんが、再発しやすい病気であり、その兆候がある場合は、特に気圧の変化の影響の大きいスキューバーダイビングや飛行機への搭乗には注意が必要です。

また、喫煙は肺に与える悪影響は大きく、回復不能な障害をもたらします。特に喫煙と関連のある肺気腫は難治性の続発性気胸(肺の病気が原因となって起こる気胸)を起こしやすい病気です。

そのため、気胸の再発防止には禁煙が必要です。続発性気胸での再発率も約50%と高率です。

まとめ

自然気胸はその重症度によって経過観察から手術まで、いくつかの治療法がありますが、病気の発生原因が不明な部分もあり、完全に再発を予防することは難しいとされています。

しかし完全に治癒した状態であれば、仕事や運動、日常生活上も通常通り可能です。再発を不安に思い、過剰に制限を加えることでストレスとならないように注意しましょう。