健康な人でも、急激な運動をすると起こる息切れ。ただし、日常において、息切れや呼吸困難といった症状がある場合は、心臓、肺、脳などに異常が起きている可能性があります。症状が重たい時は、心臓などの循環器が原因なのか、肺などの呼吸器が原因なのか、目安をつけて専門医のいる医療機関を受診しましょう。本記事では、息切れが起こる原因とメカニズムを解説していきます。

目次

呼吸困難(息切れ、息が苦しい)とは

呼吸困難は、主に肺などの呼吸器の病気や、心臓などの循環器の病気が原因で起こり、呼吸をする時の不快感、努力感、胸を締め付けられるなどの自覚症状を総じていいます。

主に息を吐くときの「呼気性」と息を吸う時の「吸気性」の二つの症状に分けられ、それぞれ原因となる病気が違います。

呼吸困難(息切れ、息が苦しい)の重症度評価

呼吸困難の症状が出た人が、同年代の健康な人と比較して重症度の度合いを測るヒュー・ジョーンズ分類という分類法が日本では広く普及しています。下記の状態に応じて5つの状態に分けられます。

分類 特徴
年齢の健康者と同様の労作ができて、
歩行、階段昇降も健康者並みにできる。
同年齢の健康者と同様に歩行できるが、
坂道・階段は健康者並みにはできない。
平地でも健康者並みに歩けない。
自分のペースなら1.6km以上歩ける。
休み休みでなければ50m以上歩けない。
会話・着替えにも息切れがする。
息切れのため外出できない。
出典:厚生労働省の資料をもとにいしゃまち編集部作成

 

呼吸困難(息切れ、息が苦しい)の主な原因

呼気性

空気を吐く時に症状があり、気管、主気管支、肺の気道の下部に原因があります。主な原因としては、下記の可能性があります。

吸気性

空気を吸う時に症状があり、鼻腔、咽頭、咽頭などの気道の上部に原因があります。主な原因として、下記の可能性があります。

  • がんや結核などによる中枢気道狭窄
  • 気道異物
  • クループ症候群
  • 急性咽頭蓋炎
  • 肥満低換気症候群

呼気、吸気混合性

上記以外の病気で、肺炎肺結核肺がん気胸心不全貧血、神経筋疾患などの場合は、気道全般に症状が起きることが多いです。また、肺がん、貧血、神経筋疾患では、慢性的に呼吸困難であることがあります。

もう一つ、呼吸困難を生じる疾患として忘れてはいけないのが肺血栓塞栓症です。

この病気は、以前はエコノミークラス症候群ともいわれていましたが、飛行機だけでなく、電車やバス、自動車での長距離移動でも生じます。
肺の血管が突然つまる、恐ろしい病気です。同じ姿勢でいたデスクワークの方でも生じます。夏は脱水が原因でも生じます。

その他、ピル内服、手術後、長期臥床、癌患者、抗リン脂質抗体症候群、先天的血液凝固疾患などでも生じます。

肺血栓塞栓症は、疑わないと診断がつかないことが難しいところです。正しく診断できなかったら、死亡率30%ともされています。さらに、肺血栓塞栓症の死亡例の40%は発症1時間以内の突然死です。

一度起こると怖い病気ですから、航空機などでの長時間の旅行中は十分な水分を摂取し、脱水を招くアルコールやコーヒーを控える、また足を上下に動かすなど適度な運動を行うといった予防策を取ることが重要です。

日常生活でできる7つの予防法

主に循環器疾患が原因での呼吸困難、息切れ、息が苦しい場合は、下記の7つの予防がおすすめです。

  1. 塩分を控える
  2. 肥満を解消する
  3. 運動不足を解消する
  4. 急激な寒暖差に気をつける
  5. お酒は適量に
  6. 喫煙を控える
  7. ストレスを溜めない

まとめ~その症状、原因は循環器?呼吸器?

呼吸困難が生じた場合、原因が循環器か呼吸器かを見極めることが大切です。心臓に原因がある場合

  1. 寝ているときの息切れ・息苦しさ
  2. 手足の冷え
  3. 体がむくむ
  4. 急に体重が増える

というのが特徴です。

一方で、肺に原因がある場合は、

  1. 座ると息が楽
  2. せきやたんが出る
  3. 息切れのときにゼーゼーという音が出る

という特徴があります。

それぞれ2つ以上当てはまれば、一刻も早く専門医のいる医療機関を受診することをおすすめします。

ただし、1つしか当てはまらない場合は異なる原因かもしれません。例えば、循環器が原因となる場合にみられる「1.寝ているときの息切れ・息苦しさ」ですが、気管支喘息でも夜寝ている時に呼吸困難となり目が覚めてしまうことがあります。

他方、肺に原因がある場合の「座ると息が楽」は心不全でもみられる現象です。

さらに、呼吸器の「3.息切れのときにゼーゼーという音が出る」は、気管支喘息・COPDに特徴的ではあるものの、稀に心不全でもみられる場合があります(心臓喘息とも呼ばれます)。

ですから、上記各項目のうち1つしか当てはまらない・または自分では判断に困るという場合は、まずはかかりつけ医に相談すると良いでしょう。