尿失禁は、社会的にも大変困る問題のため、悩んでいる人はたくさんいます。しかし、人には相談しづらく、場合によっては悩みが深刻化する場合もあります。尿失禁のタイプで多いのは女性に多い腹圧性尿失禁で、そのほとんどは治療することで改善が期待できます。今回は、女性に圧倒的に多いとされる腹圧性尿失禁の治療法や、自宅でできる改善法について詳しく説明していきます。

目次

病院での診察や検査は?

治療をするには、まずは問診どのタイプの尿失禁かを診断します。診断には、問診がとても重要で、問診だけで判断できることも多いです。いつから症状があるのか、腹圧に関係はあるか、尿意はあるか、排尿回数、1回排尿量などを聴取します。排尿日誌を記録していただくと病状の把握に有用です。(排尿の時刻とその時の排尿量)

尿失禁のタイプについては「人には相談しづらい尿失禁…なぜ起こる?どんなときに起こりやすい?」をご覧ください。

検査としては、検尿、膀胱などの超音波検査、パッドをあてて尿漏れ量を測るパッドテストなどが行われます。 ほとんどは以上の検査で診断がつき、身体に大きな負担はありません。さらに詳しく検査する場合は、造影剤を使用し、膀胱と尿道の状態を評価するチェーン膀胱造影検査などが行われます。

尿失禁の3つの治療法

症状や程度によって、治療法が選択されます。腹圧性尿失禁のほとんどは治療で改善が期待されます。今すぐに自宅でできる方法から紹介していきます。

1.骨盤底筋体操

骨盤底筋を鍛えよう-図解

骨盤底筋体操とは、自分の意思で骨盤底筋群を収縮・弛緩し、繰り返させるトレーニングです。骨盤底筋体操で尿道括約筋を含む骨盤底筋群を強くすることで治ってしまうこともあります。実際にできているか自分では分かりにくいため、医師に相談して締まっているか確認すると良いでしょう。

決まった方法は特にありませんが、以下の動きを参考に行ってみてください。

方法

  1. 仰向けに寝る
  2. 両脚を肩幅程度に開いて軽く膝をたてる
  3. 両手は自然にへその上あたりに置く
  4. この姿勢で、尿道・膣・肛門をギュッと締めたり緩めたりを繰り返す(1秒ずつ 15回)
  5. しばらく休憩したら、同じようにギュッと締めたまま3秒止め、そのあと力を抜く(5回繰り返す)
  6. 1~5を何度か繰り返す(最初は2~3回から始め徐々に増やしていきましょう)

力まずリラックスして行いましょう。腰や足やお腹には力はいれません。力を入れる時は膣をお腹に引き上げるイメージで、意識を集中させましょう。呼吸は止めずに自然に。

慣れてくると、立位でも出来るようになりますので、通勤中や勤務の休憩時間などに行うとさらに効果が期待できます。

2.薬物療法

薬-写真
骨盤底筋体操で改善しない時には薬物療法が選択されることもあります。喘息治療で用いられていて、βアドレナリン受容体刺激薬は、膀胱出口にある尿道括約筋を収縮する作用を持ちます。

3.手術療法

腹圧性尿失禁で重症な場合は手術が選択される場合もあり、特に広く行われているのはTOT手術(骨盤底再建手術)というものです。TOT手術は、ポリプロピレン製のメッシュのテープを尿道の下に通すことで骨盤底を再建しサポートするという手術です。侵襲性が低い(身体をあまり傷つけずにすむ)点も優れています。

改善方法を一つにまとめた図版はこちらです。

尿失禁の改善図版

まとめ

腹圧性尿失禁は悩む女性が多く、特に出産後から悩まれる方が多いです。多産や難産だった人は骨盤底筋群が緩みやすいため、出産後から骨盤底筋体操を始めると良いでしょう。

また、膀胱を圧迫することで尿を溜めにくくなるので、普段の生活から肥満、便秘に注意することも大切です。説明したように、尿失禁は治療することで改善が期待できますので、身体の変化に一人で悩まず、泌尿器科に受診して相談しましょう。そして、医師の指示を仰ぎながら自宅でできる骨盤底筋体操を実践しましょう。