尿漏れ、頻尿、尿失禁…年齢とともに排尿に伴う症状がある方も少なくはありません。一般的に排尿に関して悩むことは“恥ずかしい”と思う方も多く、とてもデリケートな問題です。悩みとなっても気軽に誰かに相談しにくいことも確かです。今回は、排尿の問題の中でも、尿失禁について、症状や原因になりうる疾患、どんな時に起こりやすいかなどを説明していきます。

目次

尿失禁とは

尿失禁は自分の意志とは関係なく尿が漏れてしまうことをいいます。それに対し、正常な排尿は、個人差はありますが、日中3~7回、3~4時間の間隔をおいて1回150~200ml前後の排尿を行い、必要があれば途中で排尿を止めたり、膀胱内の尿をほとんど残さず出したりと、自分で調整できるのが正常な排尿です。

次のような行動も正常な排尿に当てはまります。

  • 尿意を感じ、ある程度我慢するなどコントロールできる
  • 膀胱や尿道が正常に働き、尿を貯めたり、お腹に力を入れなくても出したりできる など

排尿―膀胱尿道の働きについて

尿失禁には、膀胱や尿道の機能が大きく関わっています。

まずは、排尿という一連の行動の中で、膀胱・尿道はどのような働きをしているかを知りましょう。尿が作られるメカニズムについては、「尿が泡立つのは糖尿病のサイン?!尿が伝える健康状態」をご参照ください。

膀胱は、腎臓で作られた尿を蓄える伸縮自在の袋です。個人差がありますが、ふだんは200~500mlの尿を溜めることができます。この膀胱内の容量が増えると信号が送られ、我々は尿意を意識することができます。その刺激が大脳まで伝わり排尿を我慢するよう指示が出ます。その間、尿道の周りにある尿道括約筋という筋肉は尿道を締めるように働いています。

このように、膀胱と尿道は広げると締めるといったように相反する働きがあります。排尿するときは、膀胱は収縮し、尿道は広がります。

尿失禁のタイプごとの症状と原因

女性

尿失禁は、腹圧性尿失禁切迫性尿失禁溢流性(いつりゅうせい)尿失禁機能性尿失禁の4つに大きく分類されます。

1.腹圧性尿失禁

やくしゃみをした時、大笑いした時、スポーツ中や重い荷物を持ち上げた時など、急に腹筋に力が入ったときに尿が漏れてしまうのが腹圧性尿失禁です。これは、尿道を締める尿道括約筋が弱いと起こります。圧倒的に女性に多いです。

女性に多い理由は、構造上の問題のためです。子宮や膀胱などの骨盤内の臓器は、骨盤の下にある靭帯や筋肉(骨盤底筋群)によって支えられて下がらないようになっています(尿道括約筋も骨盤底筋群に含まれます)。骨盤底筋群には、それとともに尿道を締めるという重要な役割があります。

しかし、加齢、出産などの影響により、骨盤底筋群が衰えてしまうと、膀胱や尿道が膣の方に下がります。そこに腹圧がかかって膀胱が押されると、締まりの悪くなった尿道から尿が漏れてしまいます。

2.切迫性尿失禁

尿意が起こると我慢しきれずに漏らしてしまうのが切迫性尿失禁です。特に多いのは、はっきりした原因がないのに膀胱が勝手に強く収縮してしまい起こるものです。

また、脳神経が影響して起こるものもあります。排尿は脳からの指示でコントロールされていますが、脳血管障害などによりコントロールがうまくいかない場合に起こります。脳卒中パーキンソン病など脳神経系の影響があります。

最近よくCMなどで知られるようになった、過活動膀胱も切迫性尿失禁をきたしてしまう要因の一つです。若い人でも起こり得ます。

3.溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

尿を出したいのに十分な量が排出できないと、排尿後に尿が膀胱に残って(残尿)しまうため、またすぐに尿が膀胱に充満し、少しずつ尿が漏れ出てしまうのが溢流性尿失禁です。溢流性尿失禁は男性に多く、前立腺肥大症が悪化するとみられます。

4.機能性尿失禁

膀胱や尿道の機能は正常にもかかわらず、運動機能の低下や認知力の低下が原因で起こる尿失禁です。例えば、尿意がはっきりわからない、歩行障害のためにトイレまで間に合わない、あるいはトイレの場所がわからない、といったことで尿が漏れてしまうケースです。

そのほか、尿意を伝える神経の伝達がうまく働かない反射性尿失禁や、利尿剤や睡眠剤、向精神薬などを使用して尿失禁が起こることもあります。

まとめ

尿失禁と一言で表しても、そのタイプは原因によって異なってきます。タイプそれぞれによって治療法や改善方法は異なりますので、尿の漏れを感じたら一人で悩まず泌尿器科を受診し、まずは泌尿器科の医師に相談してみましょう。