尿が出ないという症状は、腎臓や膀胱などに病気がある時に出ることがあります。

治療法は、尿が出ない原因が腎臓の前にあるか、腎臓自体にあるか腎臓の下に続く臓器にあるかで違います。

それぞれの治療法について、医師・吉田 啓先生による監修記事でわかりやすく説明していきます。

目次

尿が出ない時の原因は?

尿が出なくなる原因は、大きく分けて3つあります。

それは腎臓の前にある血管から腎臓への血流が減っていること、腎臓自体に異常が起きていること、腎臓の下に続く尿管や膀胱などの臓器で閉塞を起こしていることです。

それぞれの原因によって治療法が異なるため、病院に行くとまず原因の特定をするために尿検査や採血、超音波などの検査を行います。
原因について詳しくは「尿が出ない・出づらい!原因となる病気は?」をご覧ください。

それでは、実際にどのような治療法があるか見ていきましょう。

腎前性(腎臓の手前に原因がある)の病気の治療法は?

腎前性の病気は脱水、出血、重症の感染症などです。腎臓の前にある血管から腎臓に流れ込む血液の量が減ってしまうことにより、尿が出づらくなります。

また肝不全や心不全などの他の臓器の障害でも、腎臓へ行く血流は減少してしまうので、尿が出づらくなります。

治療法は体の中の血流量を増やす、つまり点滴や輸血を行います。

暑い夏で汗をたくさんかいたり、胃腸炎嘔吐下痢を繰り返したりする脱水症になります。
尿が出づらくなる前に、水分補給をできる限りして防ぐようにしましょう。

出血に関しては、尿が出づらくなるほどの出血量の場合は動悸立ちくらみめまいなどの症状が出ることが多いので早めに病院へ行き、点滴や、必要なら輸血を受けるべきです。
また出血がある場合はそれを止めないと、腎臓への血流を根本的に増加させることにはならないので、出血源を精密検査します。

全身に細菌やウィルスが回ってしまうことで起こる敗血症では、血圧が低下しショック状態になることがあります。
血圧があまりに低いと、全身の血液の流れも悪くなり結果的に腎臓へも流れづらくなり、尿も出なくなります。

敗血症の場合は、重症の感染症なので点滴をしつつ抗生剤をなるべく早めに投与します。

肝不全や心不全の場合は、単に点滴だけすればよいわけではなく、水分のバランスを考えなくてはいけません。

肝不全心不全は、それぞれの臓器の動きがほとんど機能しなくなっているので、いくら点滴をしても腎臓への血流が増加するわけではなく、体内の他の部分に水分が漏れてむくんでしまいます。

尿を出しやすくする薬を使ったり、なるべく点滴の効果を上げるようにする血液製剤などを同時に使用して治療します。

腎性(腎臓自体に原因がある)の病気の治療法は?

腎臓自体に原因がある病気は、腎炎や膠原病、長期にわたる高血圧糖尿病が挙げられます。

尿が出づらくなるほどの腎炎や膠原病の場合は症状が重いことが多いので、発熱や関節痛、手足のむくみなど他の自覚症状を感じるはずです。
腎炎や膠原病は、ステロイド免疫抑制剤など炎症や免疫の異常を抑える治療が行われます。

長期にわたる高血圧や糖尿病があると腎臓の機能が徐々に落ちてしまい、末期状態になると尿が出づらくなります。

残念ながら、腎臓自体を完全に治せる薬は存在しないため、末期腎不全の状態になってしまったら自分の腎臓の代わりをしてくれる腎代替療法と呼ばれる(血液透析、腹膜透析、腎移植)の治療を受けるしかありません。

そうならないように定期的に健診は受けるようにして、日ごろから塩辛いものや甘いものは摂りすぎないように、また太りすぎないように注意しましょう。

この他にも造影剤解熱鎮痛剤抗生剤の副作用で腎臓自体に障害が出ることがあります。
全員に起こるわけではないですが、事前に注意しておくと尿が出づらいという症状が出た時にすぐに気付けるはずです。

また、市販の解熱鎮痛剤を頭痛や生理痛などでたびたび内服すると、知らない間に腎臓を傷めていることがあります。

痛みが続く時には我慢しないで一度病院で相談するようにしましょう。

腎後性(腎臓の下にある臓器に原因がある)の病気の治療法は?

腎臓の下に続く臓器は、尿管、膀胱、尿道、男性であれば前立腺があります。
これらは尿の通り道にあるため、どこかが結石や腫瘍などで閉塞してしまうと尿が出づらくなります。

尿が出づらいと感じる時は、すでに大量の尿が膀胱の中に溜まっている可能性もあるためお腹の張りを感じることが多いです。

治療は閉塞を解除すればよいので、まずは尿道カテーテルを挿入して膀胱内の尿を全て出すような処置を行います。

もし膀胱より上部の尿管が閉塞している場合は、尿の行き場がなくなり腫れている腎臓に背中から管を通して、尿を体の外へ出す処置を行います。
その後に、再発しないように原因となる結石や腫瘍を取り除くための処置や手術をすることが多いです。

尿が出ない時は何科を受診すればいいの?タイミングは?

診察

健康な人の1日の尿量は平均1000-1500mlと言われております。正常な範囲は500-2000mlで、400ml以下を尿の出が悪いと医学的にも定義しています。
1回の尿量は、200-400ml(コップ1-2杯程度)と言われており、1日のトイレに行く回数は平均で4~8回くらいです。

つまりもし自分で尿が出づらいなと思ったら、トイレの回数が一番目安になります。
もっと正確に測定したい場合は、100円ショップなどで計量できるものが売っています。

病院に行くタイミングは、自分で尿が出づらいと思った時でも良いですし、実際にトイレに行く回数の減少を感じた時でも良いです。

受診する科は、内科か腎臓内科か泌尿器科です。

腎臓の前(腎前性)と腎臓自体(腎性)に原因がある場合は内科か腎臓内科が適していて、腎臓の下に続く臓器に原因がある(腎後性)場合は泌尿器科が適していますが自分での判断は難しいですし、お互いの科で紹介状を作成してくれますので心配せず近くにある科を受診しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

尿が出づらい時の治療法は、腎前性か腎性か腎後性かで違うことがわかりました。

また病院に行くタイミングは、トイレの回数が一番目安になるようです。

尿が出づらいという症状は、腎臓だけでなく体に負担がかかっている証拠ですので気づいたら早めに病院に行くようにしましょう。