透析をしていても、しっかりと自己管理を行い、日ごろからメンテナンスすることで毎日を元気に過ごすことができます。透析患者さんの生活では、自己管理がとても重要です。今回は、透析患者さんが気をつけるべき生活の注意点を説明していきます。

なお、透析のしくみについては「腎臓病の治療「人工透析」について。その仕組みとは?」の記事をご覧ください。

目次

シャントの管理をしっかりと

血液透析の場合、シャントの管理がとても大切です。シャントに閉塞狭窄などのトラブルが起きると、うまく血液を引き出せず、透析を続けることができなくなってしまいます。シャントのトラブルを防ぎ、その機能を保つためにシャントをしっかりと管理しましょう。

1.シャント運動を取り入れる

聴診器

シャント運動はとても簡単です。手のひらに収まるくらいの大きさのボール(軟らかいゴムボールなど)を握ったり放したりするだけです。目安は、毎日朝昼晩50回ずつです。この運動を取り入れることで、血管が柔軟性を増して丈夫になり、血流も良くなる可能性があります。

2.毎日しっかり観察する

毎日朝晩、必ず観察しましょう。よく見て、さわって、聞いてみましょう。

  • 見る:赤くなったり腫れたりしていないか、針を刺した部分から血や膿は出ていないか、手指が青白くないか
  • 触る:シャント部分の振動や拍動がしっかりあるか
  • 聞く:耳をあてた時に「ザーザー」「ゴーゴー」などの音が聞こえるか、「ヒュンヒュン」や「キュンキュン」などの高い音が混じっていないか、音が弱くなっていないか、不連続になっていないか
    ※聴診器があると聞きやすいです。

普段と少しでも異なる部分があれば、医療スタッフに相談しましょう。

3.体重管理をきちんと行う

シャントと並行して管理しないといけないものが体重です。

透析患者さんは、摂取した水分を尿で排泄することができないため、汗などで排泄されるもの以外は体内にたまっていきます。そのため、増えた体重がとても大事になってきます。

4時間血液透析の場合、1回の透析の除水量は体重の3~5%が理想です(例:体重60kgの場合は1.8~3.0kg)。透析前の体重と透析後の体重がこの範囲で行き来していればいいのですが、体重が増えすぎてしまって1回の透析で除水しきれなくなってしまった場合、むくみが出たり、血圧が高くなったりなどの症状が出ます。そのため、日々の体重を目安に生活していくことが必要です。

4.食事に注意する

水の入ったコップ

透析は腎機能の完全な代用にはならないので、食事制限は大切です。

ポイントは、カロリー・タンパク質・塩分・カリウム・水分・リンに注意です。

カロリー・タンパク質・塩分・カリウム・水分については「タンパク質・塩分・カリウムに注意!腎臓病の食事療法とは?」をご参考ください。

リンの制限も必要です。リンは体内のカルシウムと結合して、骨や歯の成分となる物質です。血中にリンがたまると、血管や関節などに沈着して、石灰化を起こすこともあります。また、近年の研究で高リン血症は血管平滑筋細胞を骨芽細胞へと変化させ、血管の石灰化を引き起こすことが分かってきました。この石灰化が、シャントを詰まらせる原因になることもあります。

リンは、肉や魚、卵などたんぱく質に多く含まれます。同じ肉でもリンはレバーに多く、ミノやアキレスは少ないです。加工食品に多く含まれる食品添加物のリンは腸管からの吸収率が高く、注意が必要です。

5.生活行動での注意

シャントの圧迫や感染にも注意が必要です。以下のことに気をつけましょう。

  • 透析日は入浴しない方が無難
  • 血液の流れを妨げるような腕まくりや手首のきつい服は着ない
  • シャント側の腕で採血や血圧測定をしない
  • シャント側の腕に重い物をぶらさげたりのせたりしない
  • 手枕をしたり、肘関節を長い間曲げたままにしない
  • 手の指、爪は清潔にしておく
  • 出血したら速やかに止血する。清潔なガーゼ等でしっかり押さえる

まとめ

普段の生活の中での自己管理の方法を説明しましたが、透析はチーム医療です。透析患者さんを中心に、医師、看護師、臨床工学技士、管理栄養士などで成り立ちます。水分制限やシャントの管理等、自己管理の項目は少なくはありませんが、生活の中でそのコツやリズムがつかめるように、医療従事者のサポートを受けることもとても大切です。ささいなことでもしっかりと相談して、より良い透析生活を送っていきましょう。