注射による糖尿病治療を勧めると、“それだけは絶対いや!”とか“怖くて打てないよ”とよく言われます。多種類の糖尿病内服薬を組み合わせて使っても目標とする血糖コントロールが得られない場合にインスリン治療を勧めますが、スムーズにインスリン治療に入れないのが現状です。

注射での治療の良い点は、治療効果が高いことと、保険で自己血糖測定ができ自宅にいて血糖を確認できることです。一方、嫌だなと思われる点は、注射手技を覚え1日に1~4回の自己注射をする必要があることと治療費が高くなることとでしょうか。とはいっても、1型糖尿病・進行した2型糖尿病や重症の高血糖(空腹時250mg/dl以上、随時血糖350mg/dl以上)では必須の治療法です。

目次

インスリン製剤の種類とは

薬

人の膵臓からのインスリンの分泌には基礎インスリン分泌追加インスリン分泌とがあります。基礎インスリン分泌は24時間通してインスリンを出すことで、空腹時の血糖値である70~109mg/dlを保つために働いています。追加インスリン分泌では食べ物を摂取すると短時間だけインスリンが出され、食事で上昇する血糖を肝臓や筋肉などに取り込み血糖値の上昇を140mg/dlまでに抑えるために働きます。このような人の生理機能にできるだけ近づけるようにインスリン製剤は作られ、進化しています。

  • 基礎インスリン分泌に相当する、24時間持続して効く持効型インスリンランタストレシーバなど
  • 追加インスリン分泌に相当する、食事開始から約2時間効果の出る超速効型インスリンヒューマログノボラピッドアビドラ

が現在インスリン製剤の主流になっています。

持効型インスリンでは、他のインスリンメーカーの作るジェネリックインスリンも安い価格で出てきています。また、超即効型インスリンと以前の基礎インスリン分泌補充の主流であった中間型インスリン(持続時間18時間ほど)を混ぜ合わせた混合型インスリンも作られています。

インスリン治療法の種類って?

実際の治療法としてはインスリンの注射回数で見ていくと分かりやすいです。

1回注射法

内服薬で不十分な場合に、内服に加え少量から持効型インスリンを朝か寝る前に注射します。基礎インスリン分泌の補充が目的です。2型糖尿病のインスリン治療の導入といえます。

2回注射法

1回注射法から糖尿病の内服薬を止めて切り替える場合が多いです。混合型インスリンであるヒューマログMix25(25%が超速効型で残りが中間型)やノボラピッド30Mix(30%が超速効型で残りが中間型)を朝食直前と夕食直前に注射します。

3回注射法

毎食前に超速効型インスリンを注射して追加インスリン分泌のみを補充したり、混合型のヒューマログMix50やノボラピッド50Mixを毎食前に注射して基礎インスリン分泌と追加インスリン分泌両方を同時に補ったりします。

4回注射法

強化療法といいます。毎食直前に追加インスリン分泌に相当する超速効型インスリンを注射し、寝る前に基礎インスリン分泌相当の持効型インスリンを注射します。

これが最も人の生理機能に近い注射法です。1型糖尿病ではこの注射法で治療します。2型糖尿病でも2回注射法や3回注射法とともに選ばれる注射法です。

医療者側からみれば、注射回数が増えるほど厳密な血糖コントロールが可能になると考えています。

最後に

注射針も以前と比べ細くなり痛みがほとんどありません。実際、私も試しにお臍の下に刺したことがありますが、ほとんど痛みを感じませんでした。

医療者がインスリン治療を勧める場合には、それなりの理由があります。よく主治医と相談して適切な時期に始められるよう、恐れずに考えてみてください。1型糖尿病では残念ながら選択の余地はありませんが、2型糖尿病でも治療方法の1つの選択肢として頭に入れておいてください。