糖尿病の方が感染症にかかり、食事ができなくなった状態を「シックデイ(=病気の日)」と呼びます。食事を摂ることができないとなると、気になるのは「薬を飲むべきかどうか」「注射をすべきか」ということですよね。本記事では、糖尿病専門医が「シックデイ」の食事や服薬について知っておいてほしいことを解説しています。(いしゃまち編集部)

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「薬を飲まない」「注射をしない」はNG!

体調を崩して食欲がない、吐き気で食べられない、もどしてしまう、食べても下痢で出てしまう。こんな時をシックデイと呼びますが、お薬やインスリンをどうしようかと悩みませんか?辛くてお薬を飲むとか注射するどころではないかもしれませんね。

でも、飲まない注射しないは禁物です!通常、体調を崩したときは、体を治そう、不足しているエネルギーを補おうと様々なホルモンが体内から分泌されます。しかもその多くがインスリンの作用に反して血糖を上げる作用を持っています。例えば、ステロイド、アドレナリン、グルカゴン等のホルモンです。ですから食べてなくてもこれらのホルモンの作用で血糖は高めになってしまうのです!

血糖が高くなるといっても人それぞれですが、ひどいと400~600mg/dl以上の高血糖になり、脱水による高浸透圧性高血糖やケトアシドーシスを起こして意識を失うこともあります。ケトアシドーシスとは、インスリンの作用不足で血糖(血液中のブドウ糖)がエネルギー源として利用できず、脂肪が代替エネルギー源として使われるため、ケトン体という酸性の物質が作られます。それにより、ひどいと意識障害を起こす病態のことです。

水分・食事はできるだけ摂るようにしましょう

水を飲む女性
このような時にどうすればよいのか、外来時に主治医と相談しておきましょう。悩んだときには主治医に連絡を取り指示を受けることも必要です。ご自身で心掛けることは、脱水にならないようにできるだけ水分を摂ることです。また食事を摂ることができれば、おかゆやよく煮込んだうどんなど消化の良いものを摂るようにすることです。

食欲がないときはジュースやアイスクリームでも構いません。食べたいものや食べやすいものを摂るようにして、できるだけ絶食は避けましょう。そして摂れた食事や糖質の量に応じて内服やインスリン注射を行いましょう。どうしても水分を摂れない食べられない時、飲んでも食べても吐いてしまったり下痢になってしまったりする場合は、点滴での水分補給が必要ですから病院を受診しましょう。

薬とインスリンの量はどうすればいい?

さて具体的な食事量と薬やインスリンの量についてですが、食事量が半量以下の場合には内服は中止で良いです。インスリン注射は持効型インスリンだけは必ず通常量注射しましょう。半量食べられた場合は、薬も半量内服、インスリンも半量注射しましょう。半量以上摂取できた場合は薬、インスリンとも通常量で大丈夫です。

インスリン注射をされている方は普段よりも自己血糖測定を頻繁(3~4時間毎)に行い、必要に応じて超速効型インスリン注射を追加(2~4単位)しなければいけない場合もあります。主治医と事前に相談しておいてください。

お薬の中には内服を中止しなければいけない薬剤もあります。メトホルミンSGLT-2阻害剤です。これらのお薬はシックデイでは脱水による高浸透圧性高血糖やケトアシドーシスを起こし易くなるのですぐに内服を中止してください。

最後に

つらい症状に加え、食事を摂ることもままならなくなるシックデイ。できるだけ食事を摂ることが大切ではありますが、どうしても食べられないときには薬やインスリンの量の調節が必要になってきます。本記事も参考にしつつ、事前に主治医の先生ともよく相談しておくことが大切です。(いしゃまち編集部)