5月に入り、新社会人や新入生の皆さんが新しい環境に慣れてきた頃、気をつけなければいけないのが「五月病」。多くの人が悩まされた経験があると思いますが、実は五月病というのは正式な病気ではなく、医学的には「適応障害」という病気の可能性が考えられます。今回は、その適応障害について解説します。

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適応障害とは

環境が変わったり、生活に変化が起こったりすると、ストレスが生じる場合があります。ストレスには個人差があるため、ある人にとっては何でもないと感じることが、他の人にとっては非常に大きなストレスであることもあります。

適応障害とは、生活の変化やある出来事がその人にとって大きなストレスとなり、日常生活に支障をきたす病気です。就職・退職、離婚、失恋、引っ越しなど、生活の中で起きる様々な出来事がきっかけとなります。

症状は人によって様々ですが、不安・憂うつ・過敏といった精神症状や、頭痛・不眠といった身体症状がみられることがあります。加えて、遅刻・欠勤・早退、攻撃的になるなど、行動にも問題が生じることがあります。悪化すると、対人関係や仕事・学業に支障をきたします。

あなたは大丈夫!?適応障害の診断基準とは

適応障害の診断基準は、以下の通りです。

  1. はっきりとした心理社会的ストレスに対する反応で、3か月以内に発症する。
  2. ストレスに対し、正常な状態で予測されるものよりも過剰な症状がみられる。
  3. 社会的または職業(学業)に支障がみられる。
  4. 不適応反応は、ストレスが解消されれば6か月以上は持続しない
  5. 他の原因となる精神障害がない

上にもある通り、適応障害は原因となるストレス要因がはっきりしているのが特徴で、そのストレスがなくなれば回復にむかいます。例えば、職場の強いストレスが原因で適応障害になってしまった場合、人事異動により配置が変わっただけで快方に向かうのが適応障害といえます。

適応障害は、真面目でストレスを溜め込みやすい人ほどかかりやすい病気です。日頃から適度な気分転換を行い、ストレスを溜めないように工夫をすると良いでしょう。1人でくよくよ物事を考えず、相談できる相手を見つけることも大切です。

適応障害の治療って?

頭を抱える男性-写真

ストレス因の除去

適応障害の治療の一つが、ストレス因を除去する(ストレスの原因から離れられるよう環境を整える)ことです。例えば、ストレス因が職場や学校にある場合、休職・異動や転校が有効と考えられます。しかし、ストレス因が家庭内にある場合など、離れることが難しい場合には他の方法を考えます。

認知行動療法

ストレスの原因から離れるのが困難な場合に、カウンセリングなどを通じてその状況に適応する力をつけるのが認知行動療法です。

医師や臨床心理士の指導のもとで行われますが、患者さん自身が主体的に取り組む必要があります。

薬物療法

不安や不眠、うつ状態に対しては、薬を使った治療を行うこともあります。ここで注意したいのは、適応障害の薬物療法はあくまでも対症療法(症状に対して薬を使う)であり、適応障害そのものの根本的な治療ではないということです。つまり、適応障害は薬で治る病気ではなく、環境の調整や認知行動療法こそが大切なのです。

まとめ

五月病自体は病気を表すわけではなく、一時的なものであることが大半です。しかしストレスの原因が明確であり、それによって生活に支障が生じた場合は適応障害のおそれがあります。

適応障害では、ストレス因を除去したり、適応する方法を見つけたりしていくことが治療法となります。あまりにも症状が長引いたりする場合は、医療機関を受診して相談してくださいね。