「ストレスで胃がやられる」「緊張でおなかを下した」「イライラして血圧が上がった」というシチュエーションはみなさん経験があるのではないでしょうか。これらのように『心』が引き金となって『身』に実際に異変が起こり、その異変によって出る症状を心身症と言います。
症状は?
「ストレスで○○になった」
この○○の部分に当てはまる症状を想像してみてください。
- 血圧があがった
- 胃が痛むようになった
- 頭痛がひどくなった
- 下痢をした
- ぜんそくがひどくなった
- アトピーが悪化した
- めまいがする
- 生理が乱れた
- 口臭がきつくなった
- 円形脱毛ができた
- などなど
ありとあらゆる症状が起こりえます。
何科にかかれば良いの?
胃腸症状があれば内科もしくは消化器内科を受診するとよいでしょう。しかし身体的治療を行っただけでは完全な回復は望めません。同じようにストレスを受ければ、同じように症状が再発してしまいます。
また、原因が心理的なものとはいえ、精神的治療だけを行っても身体症状が劇的に改善することはあまり期待が出来ません。実際の身体症状に対して身体治療が必要です。そのため、身体治療に加えて心理的な治療を行います。
この両方の治療を総合的に行う専門の科が心療内科です。
心療内科って?精神科と違うの?
心療内科は文字通り「内科」です。内科ですので身体症状の治療はもちろん専門的に行います。それでいて身体治療のみではなく、心理面での治療も専門的に行います。
一方、精神科は内科ではありません。精神面の治療を専門としていて、身体面の治療は専門分野ではありません。
心療内科と精神科はほぼ同じ、といった印象を抱いている方が多いかと思いますが、全く別物です。心身症は精神疾患ではなく、身体疾患です。心身症であれば、精神科ではなく、心療内科を受診してください。
ちなみに、クリニックなどでは心療内科、精神科と両方併記しているところが多いですが、その場合、そこで受けることが出来る治療は基本的には精神科治療だと考えたほうが良いでしょう。というのも、心療内科を専門としている医者の数は精神科を専門としている医者と比べて圧倒的に少ないからです。厚生労働省が2年ごとに集計する資料では、平成26年末の段階で心療内科を主としている医者の数は903人で、精神科を主としている医者の数は15187人(1)と、実に16倍以上もの数の違いがあります。また、日本心療内科学会が認定している心療内科専門医を検索してみると、23県には一人もいないといった状態です(2)。精神科医が心療内科的治療を出来ないわけではないですが、どうしても専門外であることは否めません。
治療はどのように行われる?
まずは身体治療です。症状に合わせて治療が行われます。身体治療に並行して心理的治療を行っていきます。
ストレス性の胃潰瘍を例に考えてみましょう。
しっかりと胃潰瘍の治療を受けましょう。しかし、胃潰瘍の治療だけを受けても、ストレスがある以上症状は長引きます。そのためストレスなど心理的な負担に対しても治療をしていく必要があります。
心理的治療とは?

ストレスの減らし方を学んでいきます。大まかにいうと、ストレス量を減らす工夫と、ストレスを受けた時にくらうダメージを減らす工夫をします。
まず、ストレス量を減らす工夫ですが、仕事関係のストレスの場合ですと、職場の上司や産業医に負担を減らすことを相談する、といったことが具体的に挙げられます。実際に相談したことで業務が見直され、ストレスが減り、それだけで身体症状が軽減することもみられます。
その一方で「ストレスなんか減らせるわけがない」という患者さんも一定数います。確かに現実的に仕事量を減らすということは難しいことだと思います。しかし、相談するなどの工夫を行ったことにより、ストレス量自体は軽減されなかったとしても、心理的負担が軽く感じられるようになる方もいます。まずは相談してみてください。
次に、ストレスを受けた時にくらうダメージを減らす工夫です。ストレスを受けた時の感じ方、自分の考え方の癖などを分析し、自分の考え方を修正することによって、ストレスに対しての耐性を作ります。カウンセリング、行動療法などの心理療法が用いられます。
その他、自律訓練法、筋弛緩法といったリラクゼーションを目的とした心理療法や、生活習慣の見直し、適度な運動も効果があると言われています。また、抗不安薬、抗うつ薬といった薬が補助的に用いられることもあります。
社会生活を送るうえでストレスは無くすことのできないものです。しかし、ストレスとの付き合い方を見直すことで、今よりもより円滑な日常を送ることが出来るようになるかもしれません。