目次

ED(Erectile Dysfunction=勃起不全)は日本で1000万人以上の患者さんがいると言われています。
これだけ多くの患者さんがいるにも関わらず、その原因についてはあまり知られていません。
今回はEDの原因について書いていこうと思います。原因を考える上で、まずはEDを器質性心因性の2つに分類してみます。

器質性ED

動脈硬化、外傷や手術、神経障害、ホルモン異常、その他の原因で陰茎の血流が悪くなることでおきるEDです。
それでは一つずつ解説していきます。

1.動脈硬化

動脈が様々な理由で硬くなることを動脈硬化と言います。進行すると内部が細くなり血液の流れが悪くなりEDを引き起こします。
動脈硬化を引き起こす原因は加齢、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症など)、喫煙などが挙げられます。
余談ですが、実は陰茎の動脈はとても細いため、動脈硬化で最初に障害されやすいと言われています。
そのためEDは体で動脈硬化が進み始めているサインとも言われています
全身の動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こすことがあるため注意が必要です。

2.外傷や手術

交通事故などで骨盤や脊椎の損傷を受けた場合に血管や神経の損傷が起きてEDになることがあります。
また、前立腺や直腸、膀胱など骨盤内にある臓器の手術を受けた場合にも同様にEDになることがあります。

3.神経障害

勃起は副交感神経の興奮によりおきるため神経に異常がある場合は動脈硬化がなくてもEDとなります。具体的には糖尿病性神経症、パーキンソン病、脳卒中などがあります。

4.ホルモン異常

男性ホルモンであるテストステロンは筋肉を増やすだけでなく、物事に対する意欲を高めたり、血管機能を正常に保ったりする作用があります。
テストステロンは加齢によりだんだん少なくなってきますが、ストレスでも減ります。
男性ホルモンが減りすぎるとEDのみならず不安、イライラ、集中力の低下などが現れます。
これは加齢男性性腺機能低下症候群(late-onset hypogonadism : LOH症候群)と呼ばれていて男性版更年期障害のようなものです。
LOH症候群の治療はED治療薬だけでなく男性ホルモンの補充が必要になることがあります。

5.その他の原因

前立腺肥大症や多発性硬化症、ベーチェット病、人工透析中なども EDの原因となります。それぞれの病気についての詳細は省きます。

勃起不全 原因2

心因性ED

実際の診療では明らかな器質的な原因がないにも関わらずEDの症状を認める方が多いことに気づきます。
このような方はほとんどが心因性EDです。
心因性EDは深層心因タイプ現実心因タイプの2つに分類されます。

1.深層心因ED

幼少期のトラウマ、コンプレックス、抑圧された感情などが原因のものを深層心因EDといいます。
この問題はED治療薬によって根本的に解決するわけではないのでカウンセリングなども必要になります。

2.現実心因ED

パートナーとのトラブルや仕事のストレス、過労などが原因でEDになってしまうことです。ほとんどの心因性EDがこれにあたります。
なぜ、心因性EDは起きるのでしょうか?
答えは交感神経NOに関係があります。NOはエヌオーと読みNitric Oxideの略で一酸化窒素のことです。

体の機能を調整する自律神経は交感神経と副交感神経のバランスで成り立っており、ストレスや過労では交感神経が優位に働きます。交感神経は仕事などで緊張していたりするときに働く神経ですが、勃起に必要なのはリラックスしているときに働く副交感神経です。

つまり緊張状態が続くことで交感神経が強く働いてしまいEDになるわけです。

NOは非常に強力な血管拡張作用を持ちます。バイアグラなどのED治療薬も陰茎の動脈でNOを増やし血流改善により強力なED治療効果を発揮します。

この大事なNOもストレス、過労などで減少することが知られています。
そして、心因性EDで性行為がうまくいかないと今度はその失敗自体がストレスになり、さらに症状が悪化していくことがあります
過労、ストレスなどの原因を取り除ければ改善する可能性もありますが、なかなか忙しいビジネスマンにそれを求めるのは難しいと思います。
この場合ED治療薬を短期使用することで性行為への不安やストレスを減らすことで負のスパイラルから抜け出すことが可能です。

 

勃起不全 原因3

その他

器質性、心因性以外にもEDの原因はあります。

ある種の薬の副作用による薬剤性ED、うつ病などです。

男性型脱毛症治療薬であるフィナステリドやデュタステリドには数%の確率で性欲減退やEDの副作用が出ることが知られています。

それ以外にも高血圧や高脂血症などの治療薬も薬剤性EDの原因になることが知られています。(渋谷三丁目クリニック|薬剤性EDについて参照)

うつ病は社会的ストレスなどからの防御反応と考えると広い意味では心因性に分類されるべきかもしれません。

うつ病自体だけでなく治療に使う抗うつ薬も薬剤性EDの原因になるので慎重に診断する必要があります。

まとめ

器質性、心因性、薬剤性などEDにはいろいろな原因があります。実際には今回説明した原因がいくつも存在しているケースも見受けられます

原因が何にしてもほとんどの場合ED治療薬が有効です。

大本の原因を取り除く努力も大事ですが、難しいことが多いのでED治療薬を使用して精神的な悪循環から早めに抜け出すことが重要です。

一人で悩まず医師に相談してみることをお勧めします。