皆さんは「トリカブト」を聞いたことがあるでしょうか?なんだか物騒な名前だなと感じる方も多いと思います。それもそのはずトリカブトは有毒植物として有名であり、トリカブトを用いた殺人事件も起きているのです。また山菜取りなどで間違って採取し食してしまい、中毒などを生じ死亡してしまうこともあります。

これだけを聞くと恐ろしい「トリカブト」ですが、実は漢方の中にも含まれており、お薬としても使用することができるのです。そこで今回はこの「トリカブト」についてどのように使われているのかなど詳しく見ていきたいと思います。

目次

トリカブトとは?

トリカブトはキンポウゲ科アコニチウム属多年草(ひとつの固体が1年ではなく、複数年にわたって生存する植物)で、日本や世界中で繁殖しています。秋には紫色の花を咲かせ、主根(中心にある太い根)を「鳥頭(うず)」、側根(主根から生えている細い根)を「附子(ぶし)」と呼び、どちらの部分も薬に用いられています。

有名なのは「附子(ぶし)」のほうで、薬局で処方される漢方にもよく入っています。なお、トリカブトの中でも薬用として日本薬局方に記載されているのは、オクトリカブトハナトリカブトの二種類のみです。

中毒症状

薬用として用いられるトリカブトは加熱して毒を弱めたものを用いるため心配いりませんが、そのまま食してしまった場合は中毒を引き起こします。

食して10~15分ほどで発症して、口中の灼熱感・四肢末端のしびれ・動悸めまいなどを引き起こします。そのまま進行すると嘔吐・よだれ・脱力感・血圧低下などを生じ、最悪の場合には呼吸停止・心停止に至ることもあります。

効能・効果

体を温めることで冷えを治し、新陳代謝の機能を向上させる作用を持っています。関節や四肢の痛みを改善するため、関節リウマチ神経痛の治療に用いられます。そのほかにも利尿・強心作用もあります。

トリカブト(附子)が含まれる漢方薬

それでは実際にどのような漢方に含まれているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

高齢者などの体が弱い方用の風邪薬としてよく用いられます。体を温めて冷えや倦怠感を改善させます。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

体が弱った高齢者などの腎臓の機能低下に用いられます。夜中にトイレで起きてしまうなどの頻尿や尿漏れなどの尿トラブルによく用いられ、腰痛・冷え性なども改善します。

牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

上記の八味地黄丸に「牛膝(ごしつ)」「車前子(しゃぜんし)」を加えたもので、同じように高齢者などの尿トラブルによく用いられる。

真武湯(しんぶとう)

虚弱な方で冷え性・下痢などがある場合の急性胃腸炎などの胃腸症状がある場合に用いられます。

桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)

虚弱な方で、変形性膝関節症や関節リウマチ、神経痛などの痛みに対して用いられます。

トリカブト(附子)を服用する際の注意点

トリカブトと山-写真

上記で紹介した漢方では、体質虚弱や高齢者の方・冷え性の方などに用いられるようになっています。体力が比較的充実した方や暑がりでのぼせやすい方などは附子が入った漢方を服用すると、副作用が生じやすいので注意が必要です。副作用としては動悸・のぼせ・舌のしびれなどがあげられます。

また附子は上記で紹介した通り、様々な漢方に入っています。そのため、知らず知らずのうちに重複して飲んでしまうといったこともあります。重複して服用してしまうと副作用が生じやすくなっているため、お薬手帳などを活用して、自分が今どの漢方を服用しているのか明確にしておくようにしましょう。追加で漢方が処方される場合は、今飲んでいる漢方と一緒に服用して大丈夫かなど医師・薬剤師に相談できるようにしておきましょう。

まとめ

毒性の高いトリカブトがまさかお薬になっているなんてと驚かれた方も多いと思います。薬として有効である一方で、用法用量や注意点を守らないと副作用なども生じる恐れがあります。これはトリカブトに限らずすべてのお薬に言えることです。

上記でもお伝えした通り、お薬手帳を活用するなど自身が服用するお薬には関心を持って、薬名なども覚えられるようにしておくとリスクも減ってきます。とくに漢方などは漢字だらけで覚えにくいものが多いと思いますが、ツムラの医療用医薬品などであれば漢方の番号だけでも覚えておくといいでしょう。