全身性エリテマトーデスという病気の名前を聞いたことのある方は多くはないでしょう。もともと希少な難病である全身性エリテマトーデスは、多彩な症状を呈することが知られていますが、発症初期には風邪などの他の病気と誤診され治療されてなかなか治らないこともあります。

そこで、全身性エリテマトーデスに関する知識を付けておくことが適切な診断、治療のためには重要です。この記事は全身性エリテマトーデスとは何か、その原因や症状について詳しく説明します。

目次

全身性エリテマトーデスとは

全身性エリテマトーデスは英語で「Systemic Lupus Erythematosus」と呼ばれるため、その頭文字をとってSLEと略して呼ばれます。この全身性エリテマトーデスはその名の通り、全身の様々な場所、臓器に、多彩な症状を引き起こします。

全身性エリテマトーデスの統計

全身性エリテマトーデスは国から難病指定を受けている病気の一つであり、平成27年には、62,988人の患者さんが全身性エリテマトーデスであるという申請を出しています(難病情報センターより)。しかし、全身性エリテマトーデスであっても申請をしていない方がいる可能性があり、全身性エリテマトーデスの患者さんは実際にはそれよりも多いと考えられています。

また、女性は男性よりも約10倍も高率でSLEになりやすく、20歳代で発症することが多い病気です。

全身性エリテマトーデスの原因

全身性エリテマトーデスの原因は明らかになっていませんが、その症状は自分の体内にいる免疫系の細胞が自分自身の細胞などを攻撃してしまうことで起きると考えられています。

通常免疫は、菌やウイルスなどの外敵から自分の体を守る働きをしています。しかし、全身性エリテマトーデスでは、ホルモンバランスの異常や感染、日光、外傷など、何らかの原因で自分の免疫系が自分自身を敵だと判断し攻撃してしまいます。これにより、自己免疫反応の異常が起こり様々な症状を引き起こすといわれています。

全身性エリテマトーデスの症状

熱のある女性-写真

全身性エリテマトーデスではその名の通り、全身に症状が起こる可能性があります。そのため、起こりうる症状は多く、全てを理解するのは難しいです。ここでは、主な症状をいくつか説明します。

1.全身症状

全身性エリテマトーデスで生じる全身症状は、発熱、全身倦怠感、食欲低下などです。これらの症状は他の症状よりも早い時期に現れますが、風邪などの感染症に似ているため、この症状だけで全身性エリテマトーデスだと判断することはできません。

2.皮膚症状粘膜症状

全身性エリテマトーデスでは蝶が羽を広げているような形をした、赤い発疹(蝶形紅斑)が頬にできることがあります。また、一つ一つの発疹が丸く、円盤状の発疹(ディスコイド疹)が顔面、耳介、頭部などに見られることもあります。光線過敏という日焼けなど紫外線によって誘発される皮疹や脱毛、口内炎も、全身性エリテマトーデスが疑われます。

3.貧血症状血液症状

血液障害による症状がみられることもあります。多くみられるものは慢性の炎症による貧血ですが、自己免疫の異常による貧血や血小板の減少が現れることもあります。また、血液中に血栓を作ることもあり、流産の原因となる抗リン脂質抗体症候群を合併する場合があります。

4.精神神経症状

全身性エリテマトーデスで、脳や脊髄などの中枢神経系にも及ぶものを中枢神経(CNS)ループスといいます。中枢神経(CNS)ループスではうつ状態になったり、認知機能が低下したりすることがあります。また、手足がけいれんを起こしたり、頭が痛くなることもあります。全身性エリテマトーデスの患者さんのなかでも中枢神経(CNS)ループスが見られると予後が悪いとされています。

※1 central nervous systemの略で、中枢神経系の意。中枢神経系は脳と脊髄を指す。

5.腎症状

全身性エリテマトーデスの症状は腎臓にも及びます。全身性エリテマトーデスの腎症状は蛋白尿・血尿が出たり、浮腫が起きることもあります。こういった症状をループス腎炎といいます。しっかり治療しないとループス腎炎によって腎機能が低下し、腎不全へと移行してしまうことがあります。

上述した1~4の症状以外にも、全身性エリテマトーデスでは多彩な症状が見られます。例えば、眼や肺、関節、心臓などにも症状が見られます。

まとめ

全身性エリテマトーデスの症状は非常に多彩です。また、確定的な症状がないのも事実です。そのため、全身性エリテマトーデスはその多彩な症状を総合的に判断して診断されます。診断後に治療を行いますが、全身性エリテマトーデスの治療や予後については「全身性エリテマトーデスの2つの治療法。治る病気なの?」で詳しく説明しますので、こちらの記事も併せてお読みください。