食欲には、体を動かし本能的にお腹が空いて起こるものと、目の前に食事を出されて食べたいと起こる精神的な食欲があります。
食欲を調整しているのは血糖の量、胃腸の状態、中枢神経、自律神経、ホルモンなど多岐にわたり複雑になっています。
「食欲不振」とは食べたいという欲求が起こらない状態をいいます。
食欲不振は体重減少や筋力低下、栄養状態の低下などを引き起こし望ましくありません。
ではどうしてそのような食欲不振が起こってしまうのか、原因を探っていきましょう。
1.ストレスが原因となる場合
私たちの食欲は脳の視床下部にある食欲中枢によってコントロールされています。
視床下部では視覚や味覚、嗅覚などの情報が伝えられ、他の器官の情報と統合されて空腹感や満腹感として認識されるようになっています。
このように視床下部は食欲の調整において重要な役割をすると同時に、情緒の発現やコントロールにも関与しています。
そのため、精神的なストレスや情緒障害においても、色々なレベルの食欲不振や食行動の異常がみられるようになります。
2.不規則な生活習慣による場合
運動不足
私たちの体は運動をすることによってエネルギーを消費しています。
運動量が不足することで活動量が低下すれば食事による栄養補給が必要なくなり、本能的に食欲不振になってしまいます。
睡眠不足
睡眠不足などの不規則な生活を続けていると、体の色々な機能を調節する自律神経のバランスが乱れ、胃腸などの消化器の不調をもたらし、食欲不振へと繋がります。
3.何らかの病気が原因となる場合
食欲がない日が数日続く場合、何らかの病気である可能性が高くなります。
しかし、原因となる病気は多くあり、食欲がないという症状だけでは特定が困難です。
ここでは、食欲不振と共に表れる症状ごとに、考えられる病気を紹介します。
- みぞおちの辺りが痛い:胃炎、胃潰瘍、胃がん、心筋梗塞、膵炎、膵臓がん
- タール便と呼ばれる黒い便が出る:食道や胃・腸などの消化管が出血している
- むくみがある:心不全、尿毒症
- 頭痛がある:脳腫瘍
- 熱があり、低血圧である:敗血症、急性副腎不全
- 体重が減っている:ホルモンを調節する副腎や甲状腺機能に異常がある、結核や肺炎などの感染症
以上に挙げた通り、考えられる病気は様々です。
長引く食欲不振で医療機関を受診する場合は、その他の症状もしっかりと伝えるようにしましょう。
4.その他の原因
夏バテ
食欲不振は夏の暑い時期に多くみられるのも特徴的です。
外の気温は暑いけれど、室内でエアコンなどにより空気が冷やされているとその寒暖差によって自律神経のバランスが乱れ食欲不振を招きます。
妊娠
妊娠初期から中期にかけては多くの妊婦がつわりになります。
つわりの原因はホルモンバランスの変化や心理状況によるものだと考えられています。空腹時に具合が悪くなったり、においや味に敏感になったりします。
普段食べていたものを受け付けなくなることも多く、食欲不振がよく見られます。
アルコールの飲みすぎ
アルコールは肝臓で処理されるため、アルコールの飲みすぎによって肝機能が低下し、吐き気や全身倦怠感がみられるようになります。
胃や膵臓にも負担がかかるため、炎症を繰り返すうちに機能が低下していきます。
このような器官の機能低下から食欲不振になることがあります。
高齢化
高齢になると運動機能が低下して運動不足になることが多くなります。 また、味覚の感度の低下や咀嚼機能・嚥下機能の低下などにより食欲不振を招きます。
近年では一人暮らしのお年寄りも増えたため、孤独感などからくるうつ病などの精神疾患により食事ができなくなるケースも増えています。
まとめ
以上、食欲不振の原因についてまとめました。 食欲不振は身体的な原因や精神的な原因が色々と絡み合って起こる場合が多く、原因を明確にすることは難しいかもしれません。
健やかな心を保ち、美味しいものを食べ、健やかな体を作るということは基本的ではありますが、生きていく上でとても重要なことです。
規則正しい習慣を心掛け、健康的な心と体を作り上げていけるように意識した生活を送りましょう。