全身性エリテマトーデスは皮膚や神経、腎臓などの様々な臓器に症状が現れる病気です。そのため、全身性エリテマトーデスの治療では本疾患の原因に対する治療だけでなく、こうした多彩な症状に対して治療を行う必要もあります。また、これら多彩な全身性エリテマトーデスの症状は予後に影響を与え、逆に症状を改善することで予後も改善されることも分かっています。そこで、この記事では全身性エリテマトーデスの治療方法とその予後ついて詳しく説明します。

なお、全身性エリテマトーデスの原因や症状については「風邪と区別のつきづらい「全身性エリテマトーデス」その様々な症状とは」という記事で詳しく説明していますので、こちらの記事も併せてお読みください。

目次

全身性エリテマトーデスの治療方法

全身性エリテマトーデスの治療には、ステロイドや免疫抑制剤による薬物治療、免疫グロブリン大量静注療法、血漿交換療法などの治療方法があります。ここでは、これらの治療方法を順に説明します。

1.薬物治療

ステロイド

全身性エリテマトーデスの治療の基本はこの薬物治療です。特に、ステロイドが原則的に用いられ、その重症度によって薬剤の量が調節されます。全身性エリテマトーデスは、自分の体内にいる免疫系の細胞が自分自身の細胞などを攻撃してしまうことが原因だと考えられています。ステロイドは免疫抑制効果抗炎症作用を持ち合わすため、全身性エリテマトーデスの治療に有用です。

免疫抑制剤、免疫調整剤

ステロイドが効かないケース、合併症があるケース、あるいはステロイドの副作用を軽減する必要がある場合、免疫抑制剤の内服・点滴による治療が積極的に併用されています。免疫抑制剤には、アザチオプリン、シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸 モフェチル、免疫調整剤のヒドロキシクロロキンといった薬が使用されます。

非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)

発熱、関節炎、筋痛など軽度の全身性エリテマトーデスの症状を抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)で治療することもあります。

今後の薬物治療

最近では、生物学的製剤などの分子標的薬の新薬が全身性エリテマトーデスに対して用いられ始めています。分子標的薬とは、細胞の表面にある特定のたんぱく質をターゲットとして効果を発揮する薬です。

現在、元々はがんの治療に使用されていたリツキシマブという分子標的薬が、全身性エリテマトーデス・関節リウマチに対しての効果が期待されています。リツキシマブは、免疫細胞のひとつであるB細胞に作用することで、免疫抑制の効果を持ちます。

2.免疫グロブリン大量点滴静注療法、血漿交換療法

合併症があるケースなど、何らかの理由でステロイド投与や免疫抑制剤の投与が積極的にできない場合、免疫グロブリン大量点滴静注療法が行われることがあります。

その他、ステロイドや免疫抑制剤が効かない症例や難治性の合併症がある場合には、血漿交換療法が行われることがあります。血漿交換療法とは患者さんから血液を採取して、血小板や白血球などの血液の一部を取り除いてから、残った血液を再び患者さんの体内に戻す治療のことです。腎臓病変や神経病変に合併症があるときに、血漿交換療法と薬物治療を併用することで、より効果的に病気を治療することができます。

全身性エリテマトーデスの予後

女性の横顔-写真

全身性エリテマトーデスは症状が良くなったり、悪くなったりする「寛解と再燃・増悪」を繰り返します。そして、慢性の経過をたどることが多いとされています。そんな全身性エリテマトーデスの予後を左右するのは、血液、腎臓、心臓、中枢神経系や肺における合併症の状態です。また、合併症による死因としては、従来は腎不全が多くを占めていましたが、近年では減少しています。一方で、免疫力低下に伴った感染症による死が死因の第一位を占めています。

現在、早期診断と積極的な治療によって、全身性エリテマトーデスの予後は著しく改善しました。最近の5年生存率(病気を診断されてから5年後に生存している確率のこと)は95%以上と非常に高くなっています(難病情報センターより)。このことから分かる通り、全身性エリテマトーデスは適切な治療をすれば、予後良好な病気であるということがいえます。

まとめ

全身性エリテマトーデスの予後は大きく改善されました。しかし、これは早期診断・早期治療がなされた結果であることを忘れてはいけません。早期診断をするためには、原因不明の発熱、関節痛、皮疹、脱毛、口内炎などの症状が出た場合、「自分の身に起きている症状が全身性エリテマトーデスの症状かどうか」を疑い、膠原病の専門医のいる病院を訪れる必要があります。