口腔アレルギー症候群(OAS)は、ある食物を食べる事により口・唇・喉などの口腔粘膜やその周辺の組織にイガイガ感などのアレルギー症状を起こすことを指します。これは成人女性に多いですが、近年では学童期から発症することがあります。また花粉症との合併が多いことも特徴的です。

ここでは、近年クローズアップされている口腔アレルギー症候群に関して紹介します。

目次

食物アレルギーとは

繰り返しになりますが、食物アレルギーは「食物によって引き起こされる、免疫機序を介して生体に不利益な症状」であります。この定義にある「生体に不利益な症状」とは、細菌の毒素や自然毒による全ての人に起こりうる毒性物質の現象(貝の毒など)と、特定の人に起こる現象とに大別されます。

口腔アレルギー症候群の定義症状

米国のSampsonらは、2001年のガイドラインにおいて「咽頭喉頭に限局した接触アレルギーの1つの形態である。典型的には新鮮な果物や野菜を食べている最中に引き起こされる即時型反応である。この反応は一般的に、特定の果物や野菜に交差抗原性を示す花粉に対するアレルギー症状が出現し、主に成人で起こる」としています。

交差抗原性とは、ある食べ物(抗原)に対する抗体がほかの食べ物(抗原)と反応することをいい、花粉と野菜や果物の間によくみられます。簡単にまとめると、「花粉症の人が特定の果物・野菜を食べた時に、5分以内に口の中や唇の違和感やしびれ、顔面の腫れ、呼吸困難感が出現して、花粉症の合併が判明する状態」です。また、加熱などの調理された果物・野菜では症状は起こさないことが特徴です(ただし、セロリ・モモでは加熱していても症状が起こることがあります)。過日、ラテックスを含んだゴムでも同様の症状を起こすので「口腔アレルギー症候群・ラテックスフルーツ症候群」と呼ばれることもあります。

口腔アレルギー症候群が起きるメカニズム特徴

フルーツ-写真

花粉症をひきおこす原因となるタンパク質(アレルゲン)の構造が、果物・野菜の植物性の食物に含まれるタンパク質と似ているため、食物を摂取すると口腔内でアレルギー反応が生じてしまう結果症状を引き起こします。

症状を起こしやすい果物・野菜には

  • バラ科(リンゴ・モモ・イチゴ・ビワ・アンズ・うめ・洋ナシ
  • マタタビ科(キウイ
  • ウリ科(メロン・すいか・キュウリ・ズッキーニ
  • ナス科(じゃがいも・トマト
  • セリ科(セロリ・にんじん・ウイキョウ・コリアンダー

があります。

天然ゴムに含まれるラテックスも、同様のアレルゲンとしての共通性があります。食物のうちバナナ・アボガド・キウイ・クリの果物に反応した場合には、ラテックスのアレルギーの危険性があります。この場合、ラテックスを含んだ手袋を着けて手術を受けた場合には手袋に触られた部分の粘膜が浮腫んでしまう危険があります。

口腔アレルギー症候群は成人女性に多い傾向がありますが、近年では学童期からの発症の報告もあります。

口腔アレルギー症候群の診断

すでに花粉症と診断されている人からの問診が重要です。これに該当する果物・野菜を食べて症状が起きた場合には、臨床的に口腔アレルギーと診断されます。原因検索のため、血液中のアレルゲン、皮膚試験(プリックテスト)が行われますが、後者の方がより診断的価値・意義が高いとされております。

口腔アレルギー症候群と診断されたら…

原因食物の除去が治療です。原因と推定される食物の摂取を控えてください。食物摂取時の口腔違和感をアレルギーと気が付かず摂取を続けると症状が重篤になることがあります。

特に、症状が頻繁に出る時期には、アレルギー反応が起きるのを抑える薬(抗アレルギー薬)をしばらく定期的に服用することが必要になります。症状が出現した時には、直ちにこの抗ヒスタミン薬やステロイド薬を内服して、症状が短時間で進行してゆくのを少しでも抑えるようにします。

軽症であればこの対応で症状は1時間以内に治まりますが、治らずに進行してゆく場合、呼吸困難・意識低下・顔色不良などの激しい症状が出現した場合には、総合病院の救急外来を受診して迅速な治療を受ける必要があります。

 

一般的にアレルギー症状は、患者さんに様々な要因が重なった時に症状がより出やすい傾向があります。口腔アレルギー症候群の患者さんも、風邪をひく、寝不足・疲れ・ストレス、女性であれば生理の前後などでは注意が必要です。こうした時期では、自律神経系が不安定であり免疫系のバランスも乱れやすいです。このような時には、症状を引き起こした食物を極力摂らないようにしてください。口腔アレルギーの原因食物は、舌の先に少しだけ乗せてみて、違和感(ピリピリするなど)の場合には、それ以上は食べないようにしてください。

口腔アレルギー症候群で花粉症を合併しやすい食物

口腔アレルギー症候群と診断された場合には、花粉症の合併が高率で判明します。その例を下記に記載します。
キウイ-写真

カバノキ科

シラカンバ

  • バラ科(りんご、もも、いちご、びわ、あんず、うめ、洋ナシ)
  • セリ科(セロリ、にんじん、ウイキョウ)
  • ナス科(じゃがいも、トマト)

ハンノキ

  • マタタビ科(キウイ)
  • その他(ピーナッツ、ココナッツ)

キク科

ブタクサ

  • ウリ科(メロン、すいか、きゅうり、ズッキーニ)
  • バショウ科(バナナ)

ヨモギ

  • バラ科(りんご)
  • セリ科(セロリ、にんじん、ウイキョウ)
  • ウリ科(メロン)

イネ科

カモガヤ

  • ナス科(じゃがいも、トマト)
  • ウリ科(メロン、すいか)
  • ミカン科(オレンジ)

スギ科

スギ

  • ナス科(トマト)

まとめ

口腔アレルギー症候群は、食物アレルギーとは異なるメカニズムで起こる、口腔粘膜の接触じんましんとされているアレルギー症状の一つです。その症状は新鮮な果物・野菜の摂取中あるいは5分以内に口腔・咽頭の違和感から始まる症状であり時に重症化する事があります。診断がされた場合、体調不良時には特に摂取により症状がより悪化する可能性があるので、原因食物を生で摂取しないようにしてください。また、花粉症との合併が高率です。