人間の赤ちゃんはお母さんのお腹の中に十月十日(37~42週間ぐらい)います。これを正産期と言います。これよりも早い時期、具体的には妊娠22週0日~妊娠36週6日までの出産を早産と呼びます。

妊娠22週目に出産になってしまうことは非常に稀ですが、誰にでも起こり得ます。妊娠22週目の赤ちゃんの大きさは500g前後と小さく、肺や心臓など体の機能も未熟なままです。

日本の周産期医療水準は他国に比べて比較的高く、未熟児の状態で生まれてきても生きていける可能性は比較的高いといえます。しかし、未熟児で生まれてくることにともなうリスクは多く、お母さんたちが心配することと思います。

そこで、この記事では「どんな要因が早産のリスクを高めるのか」「早産を避けるためにできることはなにか」ということについて、解説します。

目次

なぜ早産になるの?

早産のリスクを高める要因は大きく2つに分けられます。①母体の疾患に起因する場合赤ちゃんの状態に起因する場合です。

母体の疾患に起因する場合

子宮頸管無力症

本来、妊娠中は子宮の入り口(子宮頸管)は閉じていて、出産が近づくにつれて少しずつ開いていきます。これが妊娠中期から開いていってしまう状態のことを子宮頸管無力症といいます。子宮の入り口を糸で縛る、頸管縫縮術(けいかんほうしゅくじゅつ)という手術で早産を防ぐことができます。

子宮頸部円錐切除術後

早期の子宮頸がんの手術方法で、子宮の入り口を部分的に切除する方法です。子宮を残すことができ、妊娠する事も可能ですが、早産のリスクが高くなる場合があります。

子宮筋腫

子宮にできる良性の腫瘍です。筋腫の大きさが5cm以上あったり、位置的に赤ちゃんの成長を妨げたりする場合は早産の原因になります。

なお、子宮筋腫に関する詳しい情報は「子宮筋腫って何?原因や初期症状とは」をご覧ください。

双角子宮などの子宮形成不全

子宮の内部がハート型もしくは、完全に2つに分かれてしまっている状態を双角子宮といいます。子宮が通常より狭くなると、赤ちゃんの成長を妨げる場合があります。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とは、妊娠中に高血圧を発症し様々な致死的合併症を引き起こす病気です。妊娠37週以前でも、お母さんや赤ちゃんの命に危険が及ぶ場合は誘発分娩(人工的に陣痛を起こして出産する方法)や帝王切開が行われることがあります。

前置胎盤

胎盤は、子宮内の壁にくっついているものですが、まれに子宮口を覆う形で胎盤がくっついてしまう場合(前置胎盤)があります。

この場合、出産のときに赤ちゃんの出口が塞がれている状態なので出産できませんし、子宮口が少しでも開けば胎盤が剥がれて大出血を起こし、お母さんも赤ちゃんも危険な状態となります。

そのため、前置胎盤の場合は37週前後で帝王切開が予定されます。しかし、予定より早い段階で出血が起こったり産まれそうな兆候があったりした場合は、緊急で帝王切開となるため早産となります。

常位胎盤早期剥離

本来、出産後に子宮の壁からはがれるはずの胎盤が、分娩前にはがれてしまう状態です。前置胎盤と同じく大量出血を起こすため、緊急で帝王切開となります。

前期破水

分娩中ではなく、分娩前に破水した場合をいいます。そこから陣痛が起こればいいのですが、うまく陣痛が来ない場合は破水した箇所からの感染の危険があるため、帝王切開となる場合があります。

羊水過多症

通常の羊水量をオーバーしてしまい、お腹が張りやすく破水しやすい状態です。

赤ちゃんの状態に起因する場合

多胎(たたい)

双子や三つ子など、赤ちゃんが2人以上お腹にいる場合は、1人のときに比べてお腹も張りやすくお母さんの体への負担も大きいため、早産の原因となります。

逆子(さかご)

赤ちゃんは、下を向いて逆さまでお腹の中にいるのが通常ですが、足が下を向いている場合を逆子(骨盤位)といいます。この場合、赤ちゃんが子宮の入り口を蹴る頻度が高くなるためお腹が張りやすく、早産の原因となります。

早産にならないためには?

赤ちゃん-写真

早産にはいろいろな原因がありますが、無理はしないようにすることが非常に重要です。

何もしていない状態でも、赤ちゃんの分の酸素と栄養は容赦なくとられていきます。そして、その酸素と栄養を赤ちゃんに送るために、お母さんの心臓や肺や体の中のあらゆる臓器がフル稼働しないといけません。さらに、その負荷は赤ちゃんの成長に伴い、日に日に増していきます。

この状態が基本なので、ちょっとでも無理をすれば危険な状態になる可能性があります。特に仕事をされていたり、上のお子さんの世話をしたりと、ついつい無理をしがちな方も多いと思います。お母さん自身だけではなく、周囲の人の気遣いもとても重要です。

早産のリスクが高い場合は、無理をしないようにすることで、1日でも長くお腹の中に赤ちゃんをとどめておくことが重要です。例外として重症の妊娠高血圧症候群や前置胎盤など、人工的に早産しないといけない状態になった場合は、一刻も早く出産しないお母さんも赤ちゃんも命に関わりますので、その場合は医師の指示に従いましょう。

妊婦健診を受けましょう

そして、妊婦健診には必ず定期的に行きましょう。妊婦健診で行われる内診やエコー、問診などで、早産の傾向がないか毎回見てもらえます。その他、合併症を発症していないかなど、その兆候の確認にも妊婦健診は重要といえます。必ず、医師の指定する間隔で健診は受けるようにしましょう

まとめ

早産になる可能性は誰にでもあります。ある日突然、健診で入院を言い渡される方もいらっしゃいます。特に上記のような早産のリスクの高い人は、早めに入院準備を進めておくことをお勧めします。いつでも入院できるように備えておくと、万一のときにスムーズに対応できます